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Cafetalk Tutor's Column

Tutor kuro 's Column

古文の主語を決めるヒント

Jan 11, 2019

古文で難しいのは、主語が分からないことですよね。たとえば、次の文章「今鏡」の最初の文を読んでみましょう。これは俊敏な行動が有名な藤原成通(なりみち)についての話です。

宮内卿有賢と聞こえられし人のもとなりける女房に、しのびてよるよる様をやつして通ひ給ひけるを、さぶらひど も「いかなるもののふの、局へ入るにか」と思て、「うかがひて、あしたに出でむを打ち伏せむ」といひ、したくしあへりければ、女房いみじく思ひ嘆きて、例の日暮れにければおはしたりけるに、泣く泣くこの次第を語りければ、「いといと苦しかるまじきことなり。きと帰り来む」とて、出で給ひにけり。

よく、
  • 「〜て、」があると主語は変わらない
  • 「〜を、」「〜に、」があると主語が変わるサイン
ということが語られます。これらはどれくらい信用できるでしょうか?一文目を見てみましょう。「女房に、」とありますね。「よるよる様」ともありますね。ここで主語が変わっているのでしょうか?まず、これはちょっと前提知識があったほうがいいかもしれません。
☆古文の世界では基本的に、「男」が、こっそり「女」の家にやってきて、一夜を過ごします。そして明け方に出ていくわけです。
これを前提として考えてみましょう。成通がこっそり女房のもとを訪ねたわけです。で、女房の屋敷の家来たちが、「夜になってこっそりやってくる怪しいやつはだれだ!?」と思った、と考えることができます。
 じゃあ、「に」「を」は主語の転換のサインではない!?
また、「に」「を」があるからといって、必ず主語が変わるわけではありません。
「女房に、」や「よるよる様」の「を」「に」は、目的格を表す助詞で、いわゆる「主語が変わるサインとなる接続助詞」ではないのです。「通ひ給ひける」の「を」は接続助詞です。
接続助詞「を」「に」は、
  • 連体形+「を」
  • 連体形+「に」
という形をとります。「給ひける」は連体形ですね。
だから「を」「に」があるから主語転換するわけではありません。しかも、たとえ接続助詞「を」「に」だったとしても、主語が必ず変わるとは限らないのです!だから、この知識は信用しすぎると危険です。
第一文の冒頭の主語の結論です
最初から、「通ひ給ひけるを」まで、大まかに見れば主語はずっと成通です。それ以降は「(女房の)さぶらひども」です。
もちろん、細かく見れば、たとえば青のところの「もとなりける」の主語は女房ですけどね。ざっくり、大まかに読んで文脈をつかめるかどうかが大切です。
最後に
主語を考える上で大事なのは、
  • 物語のシチュエーション→古文は基本的に大して難しい話はしません。主な登場人物も2,3人程度。今回もマジでしょうもない話ですよね^O^。楽に構えましょう。
  • 敬語の使い方
などです。「に」「を」はその補助知識くらいの位置づけがいいかもしれません。
「て」だと主語が変わらない、というのはかなり確率が高いですけどね。

This column was published by the author in their personal capacity.
The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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