読者のあなたは、外国語を勉強していて、外国の人の名前や地名などの固有名詞を 同発音するか、迷ったことはありませんか?
「原語の発音通りじゃないの?」と思う人が多いかもしれませんね。
ただ、中には言語間で発音が存在しなかったり、またはしにくい場合もあります。
そんなときは、原語の発音と大きく異なったり、奇妙に感じる表記の変化も存在するのです。
1970年代までの日本はどうだったでしょうか?
1973年に日本で韓国の故・金大中氏が拉致された事件は、韓国語のWikipediaでは「김대중납치사건'.(キム・デジュン拉致事件)」となっています。
しかし、日本語では「金大中」を日本語の漢字読みにのっとって、
「金大中事件(きんだいちゅうじけん)」との呼称が用いられています。
このように、日本語での韓国・朝鮮語の人名・地名などの固有名詞は、
日本語の漢字の読みに準じて発音されていました。
そのため、 「김(金)」は「きん」、「이(李)」は「り」、
「박(朴)」は「ぼく」という次第だったのです。
このような流れに変化が起きたのは1984年。
フリーアナウンサーの梶原しげる氏によれば、
1984年に故・全斗喚前大統領の訪日をきっかけに、
このような日本式の発音から、
原語の発音による表記と読み方となったそうです。
それから「ゼントカン」が「チョン・ドゥファン」、
「キンニッセイ(金日成)」が「キム・イルソン」となり、
韓流スターの名前も原語による表記となったのです。
出典:梶原 しげる『そんな言い方ないだろう』新潮新書・2005年
反対に、日本語の固有名詞が韓国語ではどうでしょうか?
筆者が知っている限りでは、
アニメ「金田一少年の事件簿」が「소년탐정김전일(少年探偵・金田一)」となっていた以外は発音が日本語の発音に従ったものとなっていましたね。
一方、中国・台湾の固有名詞の呼称はどうでしょう?
例えば、「習近平」は漢字の日本語の発音で「シュウ キンペイ」、
「蔡英文」も同じく「サイ エイブン」となっていますね。
一方で新聞などでは原語のルビを振る場合が多く、
料理名なども「麻婆豆腐」「青椒肉絲」など、原語発音に基づいた呼称が大多数です。
そのため、中国や台湾の留学生が来日した際は、日本語での自分の名前を覚えることが第一歩となると思われます。
(機関・所属先の学校や職場にもよると思いますが)
ちなみに韓国でも外国語の固有名詞の発音は基本的に原語に基づいたものとなっています。
ただ、高齢層では韓国式の発音で「東京」を「동경(トンギョン)」、
「大阪」を「대반(テーバン)」というふうに、
韓国語の漢字の発音で読む場合もあるとか。
出典: 豊田 有恒『韓国が漢字を復活できない理由』祥伝社新書・2012年
なお、筆者が韓国留学していた際、
中国や台湾の留学生仲間も多かったのですが、
授業やクラスの仲間で過ごしている時間の限りでは、中国語の漢字表記を韓国語の漢字の読み方で発音していました。
ただ、同じ国の仲間同士やバイト先、または現在の韓国での就職先では原語に基づいた発音かもしれませんが。
このように、ある国では自分の名前がどのように発音されるのか、
調べてみたら、完全に異なるものかもしれませんね。
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