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「教えること」と「待つこと」

Maki..S

先日、小学3年生のクラスである子が算数を教えている場面がありました。
A子ちゃんは算数が得意でいつもクラスで一番最初に問題を解き終わります。
退屈そうにしている彼女は、困っている友だちを助けてあげるよう伝えられると意気揚々とある男の子の隣へ。

その男の子のBくんは算数が苦手です。
苦手なうえに自分の力に自信が持てず、なかなか問題を解き始めることができずにいるタイプです。
わたしが見ている限りでは、理解するために丁寧な説明が必要で習ったことを応用することが少し苦手なのかなという印象です。
しっかりやり方を伝えてそれを理解すると、一生懸命がんばる子です。

そんなBくんにA子ちゃんは
「早く。これやってみて。早く式書いてよ」
「何やってんの?ちがうよ。3×5だよ」
「そんなことも分かんないの?早く答え書いてよ・・・ねぇまだ分かんないの?15でしょ。」
「早く15って書いてよ。書くの遅いよ。そしたら次は・・・・」
次々に言われることに焦るばかりのBくんはますます混乱している様子。
しかしながらおとなしい性格のBくんは「待って」とも言えないままです。
そんな子ども同士のやりとりを少しの間見守っていました。

しばらくするとBくんを見てA子ちゃんは
「遅いからイライラする」
と一言。

3年生の子どもにはまだ難しいかもしれませんが、わたしはA子ちゃんに

「誰かに何かを教えるときは、相手のやり方やスピードに合わせて教えることが大切だよ」
と伝えました。

できる人が何かを教えたり伝えたりする時、相手のスピード(理解度)に合わせるということは
すなわち「待つ」ということだと思います。

幼児教室の講師をしていた頃、待つことは教えることよりも大切だと感じる時がたくさんありました。
子どもが問題に取り組んで試行錯誤を繰り返しているとき。
思わず手や口を出したくなる時がありますが、子どもが必要なことを教えて、理解してもらった後は見守って待ちます。
子どもが「もうやりたくない。もう嫌だ」と感じる手前のところまで、グッとこらえて待ちます。

最初は待つことの大切さに気が付かず、子どもたちと一緒になってアクティビティを行っていました。
子どもたちは楽しかったと思いますが、これでは思考力は育ちません。

ある日のレッスンで、ひとりの生徒さん(5歳の男の子)が一生懸命に図形パズルに挑戦していました。
何度もやり直していましたが、もう少しで必ずできると確信していた私は待ちました。
彼は自分で最後までやり遂げて、とてもうれしそうに
「先生、一人で全部できた!!」と言いました。
見学にいらしていたお父さんが
「なぜ先生は息子に教えてやらないのかと、見ていて腹が立っていました。
僕はこの子がこんなことを一人でやれる子だとは知りませんでした。驚きました」
とおっしゃっていました。

かわいいわが子が「できない」と困っていると助けてあげたくなる気持ちはとても分かります。
しかしながら、それでは自分で考える力が育ちにくいのです。
必要な知識ややり方を丁寧に伝えて、それでも「できない」と言ってきたときはまず
「じゃぁどうしたらできると思う?」「できなかったのはどうしてだと思う?」
と尋ねます。
最初は「そんなことはいいから早く教えて!」
と怒り心頭になっていた子も
「どうせ先生はどうやったらできると思う?って言うよねー」と言うようになってきます。

こういった言葉は自分で考える思考回路ができつつある合図です。

「待つ」とひとくちに言っても、ただひたすら黙って待つわけではありません。
その場面に応じた言葉かけもとても大切です。
その子それぞれの性格、置かれている場面に応じた声かけには気遣いも必要です。
レッスンではそういった言葉についてもお伝えしています。
子どもたちとより良い関係を築き、その中で自分で考えて動ける力を育んでいってほしいと願っています。





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