先日は朝から、町田の版画美術館で「両対戦間のモダニズム」展をみて、午後はお世話になった大学時代の先生のコンサートに伺いました。
町田駅は大学時代に住んでいた立川にも似た雰囲気で活気がありました。美術館での展示は時間の都合で半分くらいしか見られませんでしたが、主に1920年、30年代の版画作品が展示されていて、版画なので雑誌に使われた挿絵なども多く、そういった一般に広く普及する商業的な素材だからこそ、より一層その時代のリアルなムードが伝わってくるように感じました。
展示はフランス、ドイツ、ロシア、アメリカと国別に展示されていて、フランスのコーナーにはサティが付曲した「スポーツと気晴らし」の初版に使われた版画が展示されていたり、ヴェルレーヌの「艶なる宴」の詩集に使われた挿絵などを見ることができました。「艶なる宴」の挿絵からは18世紀の貴族文化に対する憧憬が感じられ、第一次大戦後はとくに、そういった”古き良き時代"に対する懐かしみや憧れみたいなものがあったのだろうなあ、といったことをしみじみと思いました。
ドイツの作品はやはり敗戦直後とあって、殊更少し暗いムードのものが多くありました。人間そのものに対する不信や皮肉などを盛り込んだ作品が特に印象的でした。戦争に勝ったか負けたか、国が経済的に豊かかどうかということが、人々の価値観や作品の主題や創作のスタイルにどれほど影響を与えているということが、もちろんキュレーションの如何によるところは大いにあるにせよ、ありありと伝わってくるように感じました。
そういった時代や国に固有の価値観、イデオロギーの変遷が芸術のスタイルに強く影響しているということは、僕自身が大学で熱心に学んだことの一つでもあり、また、これからも深めていきたいことの一つでもあります。 ともあれ、町田の版画美術館は、緑豊かな公園の中にある美術館で、すごく良かったからまた行きたいと思いました。
後日先生とお会いする機会があり、コンサートの感想や、僕自身のこの1年間の取り組みなどを共有し、アドバイスもいただきました。お会いするのは約1年ぶりだったのですが、お話の端々から、学生のときに見ていたのと変わらない、音楽に対する真摯な姿勢や絶え間ない探求心が垣間見え、また細やかな思いやりにあふれた人柄に、改めて信頼と尊敬の念を強めました。信頼できる専門家であり、生徒の成長を暖かく成長を見守る良き指導者であり、また人としての細やかな気遣いに満ちた教師としてのあり方には頭が下がる思いがするとともに、僕自身がそのような指導者であらねば、との思いを強めました。
2024年の締めくくりに、改めて芸術と教育の深い結びつきについて考える機会を得ました。恩師との再会を通じて、教育者として大切にすべきことを再確認できたことは、来る2025年への大きな糧となりました。これからも生徒一人一人の可能性を信じ、音楽を通じた豊かな学びの場を創っていけるよう、自身も学び続けていきたいと思います。
などと語ってみたものの、まだ2024年のレッスンはまだ終わっていません(笑)。
2024年も最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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