オックンから「彼女、バスターミナルにいるよ」と言われても、
「そうなんだ。偉いなあ」と相槌を打つくらいで、僕から会いに行くことはなかった。
僕は新しい日常の中に生きていて、彼女もまた違う道を進んでいる。
もう、交わることはないのだろう。
それでいいと思っていた。
彼女の訃報を知ったのは、去年の冬だった。
その知らせは、不意に僕の日常を飲み込んだ。
頭がぼんやりとして、何を考えればいいのかわからなかった。
彼女がいない世界が、あまりにも現実味を帯びていなかったのだ。
一週間くらいは、仕事をしていてもどこか放心状態だった。
誰とも話したくない、けれど手を止めるわけにはいかない。
それでも日常のリズムが少しずつ僕を引き戻してくれた。
何よりも、暗い顔をしていると、
「なに湿気た顔してるんだ、ケイスケ!」
と、背中を叩きながら彼女に笑われそうな気がした。
きっと、そこにはいなくても彼女ならそう言うだろう。
思い出の中で彼女はいつも前を向いていた。
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