高校入試や大学入試で「小論文」が課されると聞くと、漠然と「難しそう」「何を書けばいいのか分からない」という不安の声が多く聞かれます。
実際、小論文は“自由に書いてよい文章”ではなく、明確なルールと目的を持った形式であり、その性質を誤解してしまうと、本来評価されるはずの力を正しく伝えることができなくなります。

特に「作文」や「志望理由書」と混同してしまうと、小論文としての体裁を保てず、評価を大きく下げることにもなりかねません。

本記事では、小論文とは何か、そして「作文」「志望理由書」との違いを明確にしながら、小論文としての完成度を高めるためのポイントや書き方のコツについて詳しく解説していきます。

1. 小論文とは何か？

小論文とは、「ある問いやテーマに対して、自分の意見を論理的に展開していく文章」です。
試験においては、知識・論理的思考・構成力・表現力を総合的に見る評価基準のもとで出題されます。

小論文の目的は「説得」

小論文では、自分の主張を一方的に述べるのではなく、読み手に「なるほど」と納得させる“説得力”が求められます。そのためには、根拠や事例を示しながら、筋道立てて論じることが必要です。

たとえばテーマが「日本における少子化問題について、あなたの意見を述べなさい」であれば、以下のような構成が期待されます。

• 現状の説明（問題提起）

• 少子化の原因分析

• 自分の意見や提案

• その根拠と補足

• 結論（再主張）

このように、論理の流れに沿って展開されるのが「小論文」です。

2. 作文との違いとは？

作文は「感想や経験の共有」が中心

作文では、自分の体験・感情・思いを素直に表現することが評価の対象になります。
たとえば、「家族との思い出」「部活動での成長」「感動した出来事」などを通して、どう感じたか、どのように考えたかを書いていきます。

作文においては「主観」「感情表現」が重要な要素になりますが、小論文ではこれが逆にマイナス評価になることがあります。

例：

• 作文：「お年寄りと接して、やさしく接することの大切さを学びました。」

• 小論文：「高齢化社会において、若者と高齢者の相互理解を深める取り組みは、地域社会の活性化に繋がる。たとえば…」

このように、小論文では「体験をもとにした感情」ではなく、「社会的な視点からの論理展開」が求められます。

3. 志望理由書との違いとは？

志望理由書は「志望の動機や将来像を説明する」書類

志望理由書も、自分の考えを書くという点で小論文と似ていますが、目的が全く異なります。

志望理由書は、「なぜこの学校・学部を志望するのか」「将来どのような進路を考えているのか」などを述べるもので、自分の経歴や学習意欲を伝える“自己PR”の要素が強い文章です。

また、志望理由書では「その大学・学部の教育方針」と「自分の学びたいこと」が一致していることを強調する必要があります。

例：

• 志望理由書：「私は中学生のころから医療に関心があり、人の命を支える仕事に魅力を感じていました。貴学の看護学科では…」

• 小論文：「高齢化社会において地域医療の重要性は増している。医師や看護師の負担を軽減するために、制度的な改革が必要である…」

志望理由書では「主観と経験の正直な表現」が許される一方、小論文では「客観性」と「論理性」が求められる点が大きな違いです。

4. 小論文を書くために押さえておくべき構成パターン

小論文では、「何を書くか」よりも「どのように構成するか」が非常に重要です。以下は、基本となる構成パターンです。

【基本構成】「序論 → 本論 → 結論」

この構成を守ることで、読み手にとって分かりやすく、筋の通った論文になります。

注意点：

• 書き出しでダラダラと背景説明をしすぎない

• 主張と事例が一致しているかを常に意識する

• 結論で新しい主張を持ち込まない（あくまでまとめ）

5. 小論文を引き立てるコツ5選

コツ①：「問いに対する答え」から逆算する

テーマが与えられたら、まず「結論（＝自分の立場）」を先に決めましょう。そこから「なぜそう考えるのか」を遡って根拠を探すことで、論理が崩れにくくなります。

コツ②：一貫した論理構成を守る

途中で意見を変えたり、論点がズレたりすると、読み手にとって混乱の元になります。文のつなぎ目に「しかし」「たとえば」「つまり」などの接続詞を適切に使うと、論理が滑らかになります。

コツ③：具体例を必ず入れる

抽象的な主張ばかりでは説得力が弱くなります。実際のニュースや身近な出来事など、客観的な例を1つ入れるだけで、ぐっと内容が引き締まります。

コツ④：結論を曖昧にしない

「〜と思います」「〜な気がします」など曖昧な表現は避けましょう。小論文では、自分の意見を“断定的に言い切る”ことが大切です。

コツ⑤：練習では「添削」を受ける

自己流では気づきにくい論理の飛躍や表現ミスは、第三者に見てもらうことで格段に改善されます。学校の先生や家庭教師、オンラインの添削サービスなどを活用しましょう。

6. 保護者の方にできるサポート

小論文の力は一朝一夕で身につくものではありません。保護者の皆様には、次のような形でのサポートが効果的です。

• 興味関心を広げる会話（時事問題、社会の話題など）

• 書いた小論文の読者になってあげる（「読んだよ」と声をかけるだけでもOK）

• 論理的な考え方を育てる質問をしてみる（「なぜそう思うの？」など）

小論文の力は、社会に出てからも必要とされる“考える力”です。高校生のうちから、このような力を育てる土台づくりを、家庭でも少しずつ意識していくとよいでしょう。

まとめ：小論文は「論理＋構成＋説得」の技術

小論文とは、ただ文章を書くのではなく、「相手を納得させる技術」を磨く場でもあります。
作文や志望理由書と混同せず、それぞれの役割と目的を理解したうえで練習を重ねることが合格への第一歩です。

ポイントは以下の通りです：

• 小論文は感情ではなく、論理で書く

• 作文は「感想」、志望理由書は「動機」、小論文は「主張と根拠」

• 説得力を引き立てるには、構成・具体例・論理の一貫性がカギ

初めは難しく感じるかもしれませんが、基本的な型を理解し、実践を繰り返せば、誰でも必ず書けるようになります。

「何を書けばいいか分からない」から、「こう書けば伝わる」へ。
一歩ずつ、小論文力を育てていきましょう。