小論文を書くとき、多くの高校生が悩むのが「説得力がない」と言われることです。「ちゃんと主張したつもりなのに、伝わらない」「なぜか減点されてしまう」──そんな声をよく耳にします。
では、小論文における「説得力」とは一体なんでしょうか? これは単なる言い回しや難しい語彙ではなく、「主張の裏付けが論理的で、具体的であること」が鍵になります。
つまり、構成と論理の筋を整えれば、誰でも説得力のある小論文が書けるようになるということです。
この記事では、小論文の説得力を高めるために必要な基本構成と考え方、そして実践的なトレーニング方法を紹介します。高校生自身はもちろん、日々受験を支える保護者の方にとっても、お子さんの学習をサポートする上で役立つ内容です。
■ 説得力のある小論文に必要な3つの要素
小論文において「説得力」を生む要素は、次の3つに集約されます。
-
論理性
主張に一貫性があり、飛躍がないこと -
具体性
主張を支える事例やデータが示されていること -
客観性
感情や一方的な視点だけでなく、相手を納得させる視座があること
この3つを押さえて構成を組み立てることで、読み手に「なるほど」と思わせる文章を書くことができます。
■ 説得力を高めるための構成テンプレート
説得力のある小論文を書くには、構成(型)を事前に持っておくことが極めて重要です。書くたびに一から考えるよりも、使い慣れたテンプレートを応用する方が、思考の軸がぶれず、論理的に文章を展開できます。
以下は、説得力を高めるための鉄板構成です。
【序論】問題提起と自分の立場の明示
まず最初に、与えられたテーマについて、どのような問題があるのかを提示し、それに対して自分がどう考えるのか、立場をはっきり表明します。
例:「近年、SNS上での誹謗中傷が社会問題となっている。私は、個人の表現の自由は守られるべきだが、一定の制限も必要であると考える。」
ここでは、「問題提起 → 立場の明示」の流れを意識することがポイントです。
【本論】理由(根拠)と具体例をセットで提示
本論では、立場を支える理由を2つ程度挙げ、それぞれに具体的な事例を添えて説明します。
-
理由①:なぜそう考えるのかという論理的な説明
-
具体例①:それを裏づける経験、データ、ニュースなど
-
理由②:別の視点からの補強
-
具体例②:異なる角度からの証拠
例:「第一に、SNSでの無責任な発言は、人の心に深い傷を残すからである。実際、誹謗中傷を受けた著名人が精神的に追い込まれた例もある。第二に、発信者に責任を持たせることで、表現の質が高まり、ネット上の議論も成熟する可能性がある。」
このように、抽象的な主張→具体的な例という順序で書くことで、説得力が格段に上がります。
【結論】主張の再確認と今後への提案
結論では、自分の立場をもう一度簡潔に示した上で、「これからどうあるべきか」「どのような視点を持つべきか」といった未来志向の視点で締めくくります。
例:「以上の理由から、SNSでの誹謗中傷に対しては、一定の規制が必要だと考える。表現の自由を守りながら、誰もが安心して発信できる環境作りが求められている。」
ここでは、「結論をただ繰り返すだけ」で終わらず、次のステップへの示唆や提案を含めることで、読者に余韻を与える文章になります。
■ 説得力を増すための3つのトレーニング法
文章の構成を理解したら、実際に「説得力」を鍛えるための練習が必要です。以下の3つのトレーニングは、誰でも日常の学習に取り入れやすい内容です。
①「理由→具体例」のセット練習をする
テーマを一つ決めて、「なぜそう思うか」と「それを示す具体例」をノートにまとめてみましょう。
テーマ:「制服は必要か?」
理由:個人の自由が制限される
具体例:髪型や服装の細かな校則に違和感を覚えた経験がある
このように理由と具体例をセットで考える練習を繰り返すことで、書くときに“中身のある主張”を瞬時に作れるようになります。
②「反論を想定」して再構成する
主張に説得力を持たせるには、反対意見を理解した上で、それに反論する視点を入れることが有効です。
例:「制服によって規律が保たれるという意見もある。しかし、自主性を育てる教育の観点からは、一律の服装が必ずしも良いとは言えない。」
反論を想定しながら書くと、相手を納得させる力が自然と高まります。
③「書いた文章を音読・添削する」
自分の書いた小論文を声に出して読んでみましょう。論理の飛躍や表現の曖昧さに気づきやすくなります。
さらに、第三者──学校の先生やオンライン家庭教師などに添削してもらうと、客観的な視点でのフィードバックが得られ、改善点が明確になります。
■ よくあるNGパターンとその修正例
説得力を損なう文章には、いくつかの典型的なミスがあります。
たとえば、「いじめは絶対に許せない」という主張だけではなく、「なぜそう思うのか」「それを防ぐにはどうすればいいのか」といった展開を入れることで、読者の納得感は大きく変わります。
■ 保護者の方へ:小論文は“考える力”を育てる科目です
小論文は、受験科目というだけでなく、「自分の考えを構造化し、他者に伝える力」を育てる教育ツールです。社会に出てからも役立つスキルであり、大学入試がその第一歩にすぎません。
お子さんが書いた小論文を読んであげたり、「なぜそう考えたのか?」と問いかけてみることで、家庭でも思考力のトレーニングができます。
また、「書き出せない」「時間内に終わらない」といった悩みを抱えている場合は、無理に書かせるのではなく、まずは構成メモを書く練習から始めるのがおすすめです。
■ まとめ:説得力は技術であり、習得可能な力
説得力のある小論文は、特別なセンスや天才的なひらめきで書かれるものではありません。構成と論理の「型」を身につけ、理由と具体例を丁寧に積み重ねることで、誰でも「読ませる文章」が書けるようになります。
ポイントをおさらいしましょう。
-
構成は「序論→本論→結論」の三段構え
-
理由と具体例はセットで書くこと
-
反論にも目を向け、視野の広さを示す
小論文は「文章力」というよりも「思考力の表現力」です。練習すれば必ず伸びる分野ですので、ぜひ地道に取り組んでみてください。
回应 (0)