大学入試の古文で多くの受験生がつまずくポイントの一つに、「主語の補足」があります。現代文では主語が明示されることが多いですが、古文では主語が省略されることが頻繁にあり、文章の意味を正確に把握するには「誰が何をしているのか」を補う力が不可欠です。
主語の補足ができないと、文章全体の流れをつかめず、長文読解で時間がかかったり、記述問題で誤った解釈をしてしまったりします。逆に、主語補足の感覚を身につけることができれば、読解スピードと理解度は飛躍的に上がります。
今回は、大学入試古文で必須となる「主語補足の感覚」を身につけるための練習法を詳しく解説します。
1.なぜ古文では主語が省略されるのか?
古文では、文章を簡潔に表現するため、主語が省略されることが多くあります。特に物語文や随筆文では、次のような理由があります。
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文脈で判断できる場合は省略する文化
古文は文の流れや登場人物の役割を読み手が理解している前提で書かれることが多く、わざわざ「誰が〜」と明示しません。 -
人物の心理描写を重視する表現
感情や心の動きを描く際、主語を省略することで文章が柔らかく、流れるようになります。 -
文体の簡潔さ・リズム
短い表現で深い意味を伝えることが古文の美しさの一つであり、主語を省略するのはその手法の一部です。
このため、古文読解では「主語を意識して補う力」が不可欠になります。
2.主語補足ができないとどうなるか?
主語補足が苦手な受験生は、次のような失敗をしがちです。
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誰が動作をしているのかわからず、文章全体の意味があいまいになる
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記述問題で「何をしたのか」を正確に書けない
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感情描写や和歌の意図を取り違える
例えば『源氏物語』の文章に、
かれこれ思ひ悩みけり。
という一文があった場合、主語を補えないと「誰が悩んだのか」が不明のまま読み進めることになります。しかし文脈から「光源氏が悩んでいる」と補えるかどうかが理解のカギです。
3.主語補足の基本ルール
主語補足の感覚を身につけるには、まず基本ルールを知っておくことが大切です。
ルール1:前後の文脈から人物を推測する
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一文だけで判断せず、前後の文章を読む
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行動や感情の描写が連続している場合、同じ人物が主語であることが多い
ルール2:動詞の活用や助動詞から判断する
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「思ふ」「聞く」「見る」「言ふ」などの動詞は、誰が主体なのか文脈を頼りに補う
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助動詞(けり、けむ、らむなど)も主語を判断する手がかりになる
ルール3:登場人物の役割に注目する
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物語文では、前後に出てきた人物が主語になりやすい
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作品によって登場人物の特徴や立場を覚えておくと補足しやすくなる
4.主語補足の感覚を身につける練習法
ここからは具体的な練習法を紹介します。
(1)「誰が〜」を意識しながら音読する
まず文章を声に出して読みながら、「誰が〜しているのか」を意識します。
例えば、
夜もすがら物思ひつつ寝ぬれば、明け方に夢にいと美しき人現れけり。
音読の際に「私(主人公)が夜もすがら物思いをして寝た」と主語を補う練習をします。
音読+主語補足は、読解スピードと理解度を同時に高める最も簡単で効果的な方法です。
(2)文章を分解して主語をチェックする
長文を読んだら、段落ごとに次の表を作って主語を確認します。
この作業を繰り返すと、「文の流れから主語を自然に補う感覚」が身につきます。
(3)登場人物ごとに色分けして読む
物語文で登場人物が多い場合、色ペンやマーカーで人物ごとに印をつけます。
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光源氏 → 赤
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紫の上 → 青
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藤壺 → 緑
色分けすると、どの行動が誰のものか視覚的に整理でき、主語補足が簡単になります。
(4)短文→段落→全文の順にステップアップ
初めは短文で主語補足の練習をし、慣れたら段落、最終的には全文読解で補う練習に進みます。
短文で正確に補えることが、長文読解での速読力につながります。
(5)過去問・問題集で実践
大学入試の過去問や問題集を使い、記述問題を解くときに必ず主語補足を意識します。
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「誰が何をしたのか」
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「感情や意図は誰のものか」
を文章ごとにチェックするだけでも、正答率が大きく上がります。
5.保護者ができるサポート
古文の主語補足は、家庭でのサポートでも効果が上がります。
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読んだ文章の内容を子どもに口頭で説明させる
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「この動作は誰がしているの?」と問いかける
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登場人物の関係図を一緒に作って整理する
専門的な知識がなくても、こうした会話を通して論理的に文章を理解する力を伸ばせます。
6.まとめ
大学入試古文における主語補足は、文章の意味を正確に理解するために不可欠な力です。
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古文では主語が省略されることが多く、文脈や動詞、助動詞を頼りに補う必要がある
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主語補足ができると、長文読解・記述問題の精度が向上する
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音読、表作成、色分け、段階的読解、過去問実践の順でトレーニングする
これらを習慣化すれば、主語補足の感覚は自然に身につき、入試本番でも迷わず読み進められるようになります。
古文の読解力は、主語補足の力が土台です。この感覚を身につけ、得点力を確実に伸ばしましょう。
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