看護系大学や医療系学部の小論文で頻出のテーマのひとつが、「チーム医療」です。
出題の定番であるにもかかわらず、「チーム医療とは何か」を明確に説明できる受験生は意外と少ないものです。
また、表面的な定義だけを覚えていても、実際の小論文では“自分の言葉で論じる力”が求められます。
この記事では、チーム医療の正確な理解から、看護小論文での効果的な書き方までをステップ形式で解説します。
「知っている」から「書ける」へ。看護小論文で評価される考え方を身につけましょう。
1. チーム医療とは何か?
まずは基本的な定義を整理しましょう。
チーム医療とは、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・栄養士など、さまざまな専門職が互いに連携し、患者の治療や回復、生活支援を行う医療のあり方です。
つまり、チーム医療の本質は「多職種協働」にあります。
それぞれの専門職が持つ知識と技術を活かしながら、患者を中心に支え合うことが目的です。
近年は医療の高度化や高齢化社会の進展により、ひとりの医師だけではすべての患者のニーズに応えられなくなっています。
そこで、チームとして多角的に支える体制が重視されるようになりました。
2. チーム医療が重視される背景
なぜ今、「チーム医療」が看護小論文で頻出なのか。
それは、現代の医療が“個人プレー”では成り立たないからです。
(1)医療の専門分化と高度化
医療技術が進歩するにつれて、専門職の役割が細分化しています。
医師は診断と治療の専門家、看護師はケアと観察の専門家、薬剤師は薬の安全管理の専門家——。
それぞれが独立していては、患者の全体像を見失ってしまいます。
(2)患者の多様化
高齢患者、慢性疾患、在宅医療など、患者の状況は多様化しています。
病気だけでなく、生活・家族・心理的支援まで含めたケアが必要になっているのです。
(3)医療事故の防止
情報共有が不十分だと、ミスや誤解が生じやすくなります。
チーム医療では、多職種間で報告・連絡・相談を徹底することで、安全で質の高い医療を実現します。
3. 看護師に求められる役割
チーム医療の中で、看護師は単に「医師の補助者」ではありません。
むしろ、チームの潤滑油としてのコミュニケーション力が最も重要な役割です。
(1)情報共有の中心的存在
看護師は患者に最も長く接する存在です。
患者の小さな変化を観察し、医師や他職種に適切に伝えることで、医療の方向性が正しく維持されます。
(2)患者と医療者の橋渡し
患者の思いを医療チームに伝えたり、治療方針をわかりやすく説明したりするのも看護師の大切な役割です。
チーム医療の中で、患者の「声」を形にするのが看護の力です。
(3)他職種との信頼関係づくり
チーム医療は「上下関係」ではなく「協働関係」で成り立ちます。
そのため、看護師自身も主体的に意見を出し、他職種を尊重しながら協力する姿勢が求められます。
4. 小論文で問われる「チーム医療」テーマのパターン
看護系小論文で「チーム医療」が出題される場合、大きく分けて3つのパターンがあります。
設問文を見た瞬間に、この3タイプのどれかを判断できると、文章構成が立てやすくなります。
5. 論理的な構成の立て方(PREP法)
小論文で評価される文章には、必ず「筋道」があります。
チーム医療をテーマに書く場合も、以下のようにPREP法(結論→理由→具体例→結論)で構成するとわかりやすくなります。
例:テーマ「チーム医療における看護師の役割」
P(結論):看護師は、チーム医療の中で情報共有の中心として重要な役割を担う。
R(理由):なぜなら、看護師は患者に最も近い立場にあり、変化をいち早く察知できるからである。
E(具体例):たとえば、患者が発する小さな不安の言葉を捉え、医師やリハビリスタッフに伝えることで、ケア方針を早期に調整できる。
P(再結論):このように、看護師が積極的に情報共有を行うことで、チーム全体の医療の質を高めることができる。
この流れを意識すると、どのテーマにも応用できる文章力が身につきます。
6. 論点を深めるためのキーワード集
小論文で「チーム医療」を論じる際に使える、汎用性の高いキーワードを紹介します。
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多職種連携(たしょくしゅれんけい):チーム医療の根幹となる考え方。
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患者中心の医療:医療従事者ではなく、患者の意思を尊重する。
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コミュニケーション能力:報告・連絡・相談・傾聴の姿勢。
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情報共有:電子カルテやカンファレンスなどでの協働。
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インフォームド・コンセント:説明と同意。患者の理解を促す。
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専門性の尊重:各職種の専門性を活かしながら協力する。
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リーダーシップと協調性:看護師がチーム内調整を担う力。
これらの語句を的確に使うと、内容に説得力が生まれます。
7. 書き方のNG例と改善例
【NG例】
「チーム医療は大切だと思います。いろいろな人が協力することで、より良い医療ができると思います。」
→ 問題点:抽象的で、なぜそう言えるのかの理由がない。
【改善例】
「チーム医療が大切なのは、患者の生活全体を支えるためには一つの専門職では限界があるからである。
看護師が中心となって多職種間の情報を共有することで、医療の安全性と効率が向上する。」
→ 改善ポイント:理由+看護師の役割が明確になり、説得力が増している。
8. 面接にもつながる「チーム医療」への意識
チーム医療は、小論文だけでなく面接でも頻繁に問われるテーマです。
たとえば、
「あなたが考えるチーム医療とは何ですか?」
「チーム医療の中で、どんな看護師になりたいですか?」
といった質問が定番です。
小論文対策の段階で、自分の考えを言語化しておくことで、面接にも応用できます。
回答のヒント
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「患者中心の医療」を軸に語る
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自分の経験(部活・ボランティアなど)を絡める
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「自分ならどう行動するか」を具体的に述べる
9. まとめ:チーム医療を「理念」から「行動」へ
チーム医療は、単なる医療体制のことではありません。
それは、患者を中心に置くという理念を、具体的な行動として実践する仕組みです。
看護師を志す皆さんは、医療の中で最も患者に寄り添い、最も多職種と関わる立場に立ちます。
だからこそ、小論文でチーム医療を論じるときには、「協働」「連携」「支える姿勢」というキーワードを軸に、自分なりの看護観を表現することが大切です。
最後に:書けるようになるための練習法
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定義を自分の言葉で説明できるようにする
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チーム医療に関する新聞記事や看護協会の資料を読む
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PREP法で1テーマ400字程度の練習を毎週行う
小論文は「一度理解したら終わり」ではありません。
何度も書いて、言葉にすることで初めて“自分の考え”になります。
「チーム医療とは何か」と聞かれたときに、すぐに自分の言葉で答えられる——
その状態こそ、合格答案を書く力がついた証です。
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