大学入試の小論文で、看護学部志望者が最もよく直面するテーマの一つが「看護師として必要な資質」を問う設問です。
このテーマは毎年全国の看護系入試で頻出であり、言葉こそシンプルですが、実は“ありきたりな答案”と“合格答案”の差が最も大きく出る分野でもあります。
単に「やさしさが大切」「コミュニケーション能力が必要」のような抽象的な答えでは、他の受験生と差がつきません。
合格レベルの答案にするためには、
-
看護師という職業の特徴
-
医療現場の具体的な状況
-
大学が求める資質
を踏まえた「論理的」かつ「具体的」な説明が必要です。
この記事では、看護学部の小論文で頻出のこのテーマに対して、どのように考え、どのような構成で書けば“合格答案”になるのかを徹底解説します。
■ 1.なぜ「看護師として必要な資質」が頻出なのか
看護学部のアドミッションポリシーを見れば分かるように、多くの大学は以下の点を重視します。
-
人間に対する理解
-
多角的な思考力
-
コミュニケーション能力
-
課題発見と判断
-
倫理観・責任感
-
チーム医療の理解と協働姿勢
これらは全て「看護師に必要な資質」と直結しています。
大学は小論文を通して、
「受験生が看護職の本質を理解しているか」
「学ぶ姿勢・価値観が看護職に適しているか」
を見極めています。
したがって、ありきたりな抽象論では評価されません。
医療現場の具体性を含んだ文章こそが評価されるのです。
■ 2.最初に知っておくべき「看護師の仕事の本質」
看護師の業務は、表面的には「患者のケア」と言われがちですが、本質はもっと広く深いものです。
以下の3点を押さえておくと、小論文に“深み”が加わります。
●(1)患者の“生活”を支える専門職
病気は患者の「生き方」全てに影響します。
看護師は医療処置だけでなく、
-
食事
-
睡眠
-
移動
-
清潔
-
精神的安定
など、生活全般に関わります。
この視点を持つだけで、答案の質が一段上がります。
●(2)多職種と連携して患者を支える
看護師は医師の指示に従うだけの職業ではありません。
栄養士・リハビリ職・ソーシャルワーカーなど多職種と連携し、情報共有しながら患者の生活と回復を支えます。
“チーム医療”の中心となる役割があることを押さえましょう。
●(3)患者の権利を守る“代弁者”
患者は専門的知識が不足し、不安や誤解を抱えています。
看護師は患者の意思を尊重し、必要な説明を補い、医師との橋渡しを行う「権利擁護」の役割があります。
これらを理解している受験生は、小論文で評価されます。
■ 3.看護師として必要な資質:頻出の3本柱
大学入試の看護学部で高評価を得られる資質は、大きく3つに分類できます。
① コミュニケーション力
単なる「話す力」ではありません。
-
患者の言葉にならない不安を察する力
-
相手のペースに合わせる配慮
-
医師や多職種への正確な情報共有
-
家族の思いを汲み取り調整する力
医療現場では一つの言い間違いが大きな事故につながるため、“正確さ”と“傾聴姿勢”が評価されます。
② 観察力と判断力
看護師の観察とは、単なる“見た目のチェック”ではありません。
-
表情・しぐさ・呼吸
-
食欲の変化
-
ちょっとした動作の違い
-
訴えの裏側にある症状
これらから危険の兆候を予測し、医師への報告や処置を判断する力が求められます。
医療事故を防ぐための基礎となる能力です。
③ 倫理観と責任感
看護師は患者の命と生活を預かる専門職です。
したがって、
-
守秘義務
-
プライバシー尊重
-
医療倫理
-
説明と同意(インフォームド・コンセント)の理解
-
患者の意思を尊重する姿勢
これらの理解と実践が不可欠です。
「責任感があります」だけでは弱く、具体的な場面を示せるかどうかが合否を分けます。
■ 4.合格答案を作るための文章構成テンプレート
ここからは、誰でも使える“高得点構成”を紹介します。
これを使えば文章が論理的になり、説得力が格段に上がります。
■【小論文の黄金構成】
(1)問題提示
「看護師には様々な資質が求められる。その中でも〜が重要である。」
(2)理由(論理)
「なぜなら、看護師は〇〇という業務を担い、△△の場面が多いからである。」
(3)具体例(医療現場の場面を提示)
「例えば、入院患者の□□の場面では、〜という判断が必要である。」
※“医療現場の臨場感”を入れるほど評価されます。
(4)まとめ(志望理由につなげるとさらに高評価)
「以上から、看護師には〜の資質が不可欠であり、私も学びの中で□□を伸ばしたい。」
この型は自由度が高く、あらゆる大学の設問に対応できます。
■ 5.よくあるNG答案とその改善方法
看護系小論文の添削をすると、以下のようなミスがよく見られます。
●(NG1)抽象語だけで終わる
「優しさが必要です」
→ これでは評価されません。
【改善】
「患者の不安を取り除くため、相手の速度に合わせて話す“傾聴の姿勢”が必要である。」
と具体化する。
●(NG2)“患者目線”がない
医師側の視点ばかりで書くとズレが生じます。
【改善】
-
患者の気持ち
-
家族の戸惑い
-
痛みへの恐怖
などを理解しようとする視点を入れる。
●(NG3)「自分の体験」に寄りすぎる
「祖母の介護をしたので看護師に向いていると思う」
→ 評価されない典型例。
【改善】
体験は“根拠”の一部にとどめ、
「その経験から何を学び、それを看護にどう生かすのか」
を書くこと。
■ 6.高評価につながる「深みのある視点」
他の受験生との差が最も出るのはここです。
●(1)「生活の視点」を入れる
病気は生活全体に影響する。
看護師は身体的・精神的・社会的側面を含めた「生活支援の専門職」としての視点を書く。
●(2)「多職種連携」の視点
看護師だけで患者を支えるのではなく、
医師・リハ職・ソーシャルワーカーなどと協働する姿勢を示す。
●(3)「安全管理」の視点
医療現場で最も大切なものは“安全”。
-
ヒヤリハット
-
リスク予測
-
早期発見
などを踏まえ、観察力や判断力の重要性を書く。
■ 7.まとめ:看護小論文は「抽象 × 具体」のバランスが命
以上を踏まえると、看護学部の小論文で最も大切なのは、
-
抽象的な資質 → 理由 → 具体的な場面
の“流れ”で書くことです。
看護師に必要な資質は多くありますが、大学が特に評価するのは、
**「医療現場のリアルを想像しながら、論理的に説明できる受験生」**です。
以下を押さえていれば合格答案は書けます。
■ 合格答案のチェックリスト
-
看護師の業務の本質(生活支援・多職種連携・権利擁護)を理解している
-
抽象語で終わらず、具体場面で説明できる
-
患者・家族の視点がある
-
価値観と志望理由が一貫している
-
倫理観・責任感の高さを示せる
Comments (0)