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【大学入試小論文】誤解されがちな「共感」の意味をどう書くか:浅い同意から脱却する論理的定義

AZUKI

大学入試の小論文や志望理由書において、「共感(エンパシー)」は非常に頻繁に登場する重要なキーワードです。福祉、教育、医療、国際関係、文学など、人文社会科学系のほとんどの学部・学科で、このテーマは避けて通れません。

しかし、「共感」という言葉は日常会話でも使われる分、その意味が曖昧になりがちです。多くの受験生が「私もそう思います」「気持ちがわかる」という浅い「同意」や「同情」の意味で使ってしまい、結果として、採点官に「議論の深みがない」「表層的な理解に留まっている」という印象を与えてしまいます。

小論文で求められる「共感」とは、感情的な同意ではなく、「他者の状況や思考を、論理的・知的に理解し、自身の行動に結びつける能力」を指します。

この記事では、小論文で高い評価を得るために、誤解されがちな「共感」の概念を明確に定義し、「共感」を軸とした議論に深みを持たせるための具体的な論述方法を徹底的に解説します。


?? 1. 小論文における「共感」の3つの誤解

まずは、小論文で陥りがちな「共感」に関する一般的な誤解を解消しましょう。

誤解①:「共感」=「同意」ではない

多くの受験生は、「課題文の筆者の意見に共感しました」と書きますが、これは「私もあなたと同じ意見です」という同意(Agree)に過ぎません。共感は、意見の一致を意味するのではなく、相手の立場や考え方のメカニズムを理解することを指します。たとえ相手の意見に反対であっても、その背景にある論理や感情に共感することは可能です。

誤解②:「共感」=「同情」ではない

「かわいそう」「大変だね」といった感情的な憐れみは同情(Pity)です。同情は、自分と相手を切り離し、「自分は安全な立場から相手を見る」行為です。共感は、一時的に「相手の靴を履いてみる」ように、相手の状況を自分事として捉えようとする知的努力です。

誤解③:「共感」=「感情移入」ではない

小説を読むときのように、登場人物と一体化して泣いたり怒ったりするのは感情移入(Identification)です。感情移入は自分の感情を失いますが、共感は「自分と相手の境界線」を保ちながら理解する、冷静で論理的な営みです。


?? 2. 小論文で使うべき「共感」の定義と類型

小論文において「共感」を使う際は、「認知的共感」と「感情的共感」の2つの側面があることを理解し、主に認知的共感を中心に議論を展開すべきです。

定義A:認知的共感(Cognitive Empathy)

  • 意味: 他者が何を考え、なぜそのような行動をとったのかを、理性的・論理的に分析し、理解する能力

  • 小論文での役割: 客観的な分析力を示す。「相手の立場から考えると、この選択が合理的である理由が理解できる」という議論の土台になる。

  • キーワード: 他者理解、視点取得(Perspective-taking)、論理的把握

定義B:感情的共感(Emotional Empathy)

  • 意味: 他者の感情を、あたかも自分のものであるかのように感じ取ること。

  • 小論文での役割: 倫理的、対話的側面を示す。主に、福祉やケアの分野で重要になる。ただし、これだけでは議論が浅くなるため、認知的共感とセットで使うべき。

小論文では、「認知的共感」を軸に、「感情的共感」を裏付けとして使うことで、最も説得力のある議論が構成できます。


?? 3. 「共感」を軸にした議論に深みを持たせる論述術

自分の小論文で「共感」を効果的に使うための、具体的な議論の展開方法を紹介します。

論述術①:「視点取得」のプロセスを記述する

単に「共感が大切だ」と述べるのではなく、「どういうプロセスで共感を試みたか」を具体的に論じます。

  • 悪い例: 「私は貧困で苦しむ人々に共感し、支援が必要だと考える。」(同情・感情論

  • 良い例: 「この問題(貧困)の本質を理解するためには、単なる同情ではなく、認知的共感に基づいた視点取得が不可欠だ。例えば、彼らが『努力しても報われない』という構造的要因を、データや制度設計の視点から理解することで、初めて真の他者理解が可能になる。」(論理的分析

論述術②:「共感の限界」と「倫理的課題」を論じる

高度な議論は、キーワードの重要性を主張するだけでなく、その限界にも言及します。「共感」が常にポジティブな結果をもたらすとは限らないという視点を持ち込みます。

  • 共感の限界の例:

    1. 「共感疲労」(感情的共感が深すぎると、支援者が精神的に疲弊する)。

    2. 「内集団バイアス」(共感は身近な人や自分と似た人に向けられやすく、遠い他者や異文化への共感が疎かになる)。

  • 展開方法:

    「真の共感の実現には、内集団バイアスという限界を乗り越える必要がある。そのためには、認知的共感を用いて、論理的に遠い他者の困難を自分事として捉え直す訓練が必要だ。」

論述術③:「共感」と「行動(実践)」を結びつける

共感を、単なる「理解」で終わらせず、具体的な行動や提案に繋げます。小論文の主張は、「共感に基づいた具体的な解決策」で締めくくられるべきです。

  • 接続のパターン: 問題提起 共感的理解(認知) 共感の限界指摘 行動への転換

  • 例: 「私たちは、共感によって他者の苦しみを理解した上で、その苦しみを構造的に解決するための具体的かつ客観的な政策(例:ベーシックインカム、教育制度改革など)を責任を持って提言し、実行に移さなければならない。」


✅ 4. まとめ:「共感」は知的な「対話の能力」である

小論文において、「共感」は情緒的な言葉ではなく、他者との違いを認めつつ、その背景にある論理や感情を分析し、より良い行動へと結びつける「知的な対話能力」を示すキーワードです。

今日から、小論文の練習をする際は、「共感」という言葉を使ったら、必ず「それは同意ではなく、認知的共感である」という意識を持ち、その直後に「私はなぜ、そのように考えるのか(視点取得の根拠)」を論理的に記述する習慣をつけてください。

この深い理解と論理的な展開こそが、採点官にあなたの思考力の高さを印象づけ、合格へと導くための鍵となります。

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The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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