第21回:伸びる子の親は,「速さ」より「始める力」を見る
じゅんじ / John
2026 年 9 月 3 日
「宿題,もう終わった?」家庭では,よく出てくる言葉だと思います。もちろん,宿題を終わらせることは大切です。でも,子どもたちを見ていると,宿題で差がつくのは,終わる速さより,始める力だと感じることがあります。早く終わらせる子より,面倒でも,ちゃんと始められる子。そんな子の方が,あとから伸びていくことがあります。■ 「あとでやる」が,一番長い学校から帰ってきて,少し休む。おやつを食べる。スマホを見る。そして,「あとで宿題やる」となります。ところが,その「あとで」が,なかなか来ません。そこで親も,「早くやりなさい」と言いたくなります。でも,本人も分かっています。やらないといけない。分かっているけれど,始められない。ここで困っている子は,案外多いと思います。■ 「まだやらないの?」が,逆効果になることもある子どもがなかなか始めないと,「まだやらないの?」と言いたくなることがあります。でも,その一言が,かえってやる気を下げてしまうこともあります。この点については,第14回:「まだやらないの?」|やる気を消してしまう声かけでも取り上げました。急かすより,「最初の1問だけやってみたら?」くらいの方が,始めやすいことがあります。今回は,その先の,「どうしたら始められるか」を考えてみます。■ 伸びる子は,「やる気が出てから」始めていない勉強を始められる子を見ていると,いつもやる気満々というわけではありません。むしろ,やる気がなくても,とりあえず始めることができます。数学のワークを開く。英単語を5個だけ見る。プリントを机の上に出す。それだけです。この点については,「やる気が出たら勉強する」は逆?|勉強が動き出す小さな順番というコラムでも書きました。やる気が出るのを待つのではなく,小さく動き始めることで,あとから気持ちがついてくることがあります。だから私は,やる気より,開始の方が大切だと思っています。■ 「全部やりなさい」より,「まず開いてみたら?」ここで,伸びる子の親あるあるです。子どもがなかなか宿題を始めない時,「全部終わらせなさい」と言うより,「とりあえず開いてみたら?」と言う。あるいは,「最初の1問だけやってみたら?」「5分だけやってみたら?」と,始めるハードルを下げます。「数学のワークを10ページやる」と思うと重たい。でも,「ワークを開く」ならできます。大きな課題も,最初の一歩まで小さくすると,動きやすくなります。■ 早く終わらせることばかり考えるともう一つ,気をつけたいことがあります。宿題を,「とにかく早く終わらせるもの」と考え過ぎると,途中式を省いたり,字が雑になったり,答えだけを書いたりして,あまり効果のないやり方になっていることがあります。早く終わること自体が悪いわけではありません。でも,速さのために,考える過程まで省いてしまうのは,もったいない。宿題は,終わらせるためだけにあるのではなく,できるようになるためにある。だから,「何分で終わったか」だけではなく,「どんなやり方で取り組んだか」にも目を向けたいところです。■ 「早く終わったね」より,「すぐ始められたね」子どもが宿題を早く終わらせた時,「早かったね」と褒めることがあります。もちろん,それもいいと思います。でも私は,始められたことにも目を向けてほしいと思います。例えば,「今日は帰ってから,すぐ始められたね」「面倒そうだったけど,ちゃんと机に向かったね」そんな声かけです。早く終わるかどうかは,問題の難しさによって変わります。でも,始めることは,自分で選べます。■ 終わる時刻より,始める時刻「いつやる?」と毎日考えるのも,意外と疲れます。ですから,始める時刻やきっかけを,ある程度決めておくのも一つの方法です。例えば,「18時から勉強する」ではなく,「18時になったら,数学のワークを開く」と決める。大切なのは,「何時までに全部終わらせるか」だけではありません。むしろ,「いつ,最初の一歩を踏み出すか」を決めておく。終わる時刻より,始める時刻。これだけで,家庭学習が安定することがあります。■ 親が毎日エンジンをかけなくてもいいように小さいうちは,「宿題やった?」「そろそろ始めようか」という声かけが必要なこともあります。でも,ずっと親がエンジンをかけ続けるわけにはいきません。いつかは,自分で始められる人になっていく必要があります。だから家庭では,宿題を全部見張るより,「どうしたら始めやすくなるかな」を一緒に考える。教材を出しておく。机の上を整える。始める時刻を決める。最初の1問だけやる。そうやって,始めるための仕組みを作っていく。それも,伸びる子を支える親の関わり方だと思います。■ 宿題で大切なのは,「速さ」より「開始」宿題を30分で終わらせる子。1時間かかる子。時間だけを比べても,あまり意味はありません。大切なのは,自分で始められたか。そして,丁寧に取り組めたか。そこだと思います。親ができるのは,「早く終わらせなさい」と急かすことより,「まず,始めてみようか」と,最初の一歩を小さくしてあげること。そして,終わった速さだけでなく,どう取り組んだかを見ること。伸びる子の親は,始められた瞬間も,取り組んでいる過程も,ちゃんと見ています。
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