「知恵を使い、こころざしを捨てず、ひたむきに汗を流せば、道は開ける。ひとが力を貸してくれる・・・・・」
山本一力さんの小説、「だいこん」に出てくる主人公つばきが言う言葉です。
以前の仕事場で、職人肌の師匠に付いて仕事をする機会がありました。とても厳しい方で、「先を見て仕事をしろ」「頭を使え」といつも口癖のように言っていました。私は怒鳴られて泣きながら仕事をすることもよくありましたが、本当は私のことを考えてくれている方であることもよくわかっていました。その師匠が貸してくれた本がこの「だいこん」です。
どれだけがんばっていてもすべての人に認められるわけではないし、全てが順調にいくわけではありません。うまくいったと思えば妬まれ、認めてくれる人が出れば恨まれ、正しいことをしていても批判され、ありもしない噂で非難される。そんなことは今の世の中では日常茶飯事なのかもしれません。けれど、「どれだけ辛く大変でも、一生懸命であれば必ず人が見ている、必ずお前の味方がいる」。師匠はそうやって、私に大事なことを教えてくださいました。そして実際にその職場ではたくさんの人達に支えられ、たくさんの味方が私を助けれくれました。その感謝は今でも忘れません。
最近自分で感じたことは、きちんと人の尊厳を大事にし、どんな時でも腐らず前に進もうとするなら、あきらめないその姿勢は見えない「キラキラ」をまとい、知らず知らず人を引きつけて味方を作っているのだ、ということ。
人間ですから、嫌になることもあります。もうたくさんだ、と投げ出したくなることもあります。どうして自分がこんな目に、とくよくよと嘆くこともあります。誰だって弱くなることがあるはずです。不安や愚痴、弱音や不平不満がドッと出てきて心を埋め尽くすように感じる日もあるかもしれません。それでもあきらめなければ、必ず差し伸べてくれる手や道が探し出せます。
大変な人生を乗り越え、人々に笑顔を届けたチャップリンが、こんなことを言ったそうです。
「いつも身をかがめていたら、何も拾い上げられないんだよ」
躓いても転んでも倒れても、また起き上がればよいのです。
七転び八起き。
起き上がりましょう。何度でも。