最古の記憶を辿ると、いつも独りだった気がする。 孤独の中で、欠けたピースを探していた。 でも、何が足りなかったのかは、結局わからないままだ。 回想してみると、不思議なことに僕は独りではなかった。...
Keisuke.H
I was a bocchi.70 仰げば尊し、サッカーフィールド
オイクボがサッカー部の練習に顔を出したことは、一度もなかった。 職員室の隅で眉間にしわを寄せ、黙々と書類に向き合うばかりだった。 「顧問なのに、なんで見に来ないんだよ?」 僕たちはそんな不満をぶつけ...
Keisuke.H
I was a bocchi.69 先生ごめん、僕は止まれない!
両親、先生、塾講師。 僕の周りの大人たちは全員「敵軍」だった。 口を揃えて「勉強しろ!」と言うだけで、やる気を削ぐ才能に満ちていた。 そんな中、僕は謎の反抗心を燃やし、 部屋に隔離されようが居残りさ...
Keisuke.H
頭がキレる人を学年委員長や生徒会長にしてはいけない。 これが僕の学年の結論だった。 努力家のイシザキは生徒会副会長になり、 学年トップの才女オトキタさんが生徒会長に選ばれた。 僕は学年やクラスで好き...
Keisuke.H
僕は熱しやすく冷めやすい性格で、記憶にも同じ特徴があった。 短期記憶には自信があるが、長期記憶はからっきしだ。 特に日本史ではその傾向が顕著で、 テスト前の休憩時間が僕の「記憶のゴールデンタイム」だ...
Keisuke.H
読書が苦手だった。 同じ本をローテーションするだけで、 夏休みの読書感想文は毎回締切間際に仕上げる。 国語の問題文すら読むのが面倒で、 普段の読書習慣のなさが如実に表れていた。 母は何度も読書を...
Keisuke.H
学習塾では不貞寝が日常だった僕だが、 数学の授業で記憶に残っている「平行線の証明」というテーマがある。 その日は珍しく起きていたし、学校の授業での出来事が関係していたからだ。 学校の授業は塾より...
Keisuke.H
僕は中学生の頃、保健室に行くことが多かった。 保健室登校ではなく、怪我や体調不良でお世話になっていた。 素直になれない時期だったけれど、保健室だけは特別な場所だった。 保健室の先生はいつも「よく...
Keisuke.H
僕のような運動音痴がベンチ入りするほどの人材不足。 そんなサッカー部が強いわけがない。 夏休みも、塾の講習を理由に練習を休んだ僕にとって、 中学生最後の大会への熱意など皆無だった。 だが、大会当...
Keisuke.H
僕は泳げない。 何度かスイミングスクールに通ったものの、 水への恐怖心は克服できなかった。 そもそも浮き方がわからないのだ。 「力を抜けば浮くよ」とコーチは言うが、 その通りにしても沈む。 たった水...
Keisuke.H
授業中、眠気に負けることが多かった僕だが、 実技科目だけはそうはいかなかった。 移動教室があるおかげで、居眠りし続けるわけにはいかなかったのだ。 美術では未完成の作品を残し、 音楽では楽譜が読め...
Keisuke.H
母が「教育ママ」という名のラスボスだったせいで、 我が家のゲーム環境はファミコン1台のみ。 「時代に取り残される」という状態異常を喰らい、 ポケモンやたまごっちが流行している中、 僕はそれらに触れる...
Keisuke.H
模試でチバ君と再会し、連絡先を交換した。 成績は僕とチバ君で雲泥の差だったため、 一緒に塾の授業を受けるなんてことは一度もなかった。 話は進むうちにチバ君が転校前の知り合いについて語りだした。 ...
Keisuke.H
「どうしてそんなに不真面目なんだ!」 親が言うたびに僕は思った。 実業高校出身の父に真面目がどうこう言う資格はない。 学校なんて給食さえ食べられれば十分で、 授業中は机に突っ伏して夢の中。 テス...
Keisuke.H
冬の楽しみと言えば雪合戦だ。 僕たち男子は、雪を見ると犬のようにテンションが上がり、 挨拶代わりに雪玉を投げ合った。 防寒のダッフルコートも何のその、雪玉の命中率だけはプロ級だった。 そんな冬、...
Keisuke.H
あれは、秋の陽射しがやわらかく田舎道を照らしていた頃のことだ。 僕、オックン、ショウゴ、アンチャンの4人は、 ママチャリにまたがり、まだ見ぬ冒険の香りに誘われて出発した。 片道25km、キャンプ場で...
Keisuke.H
僕の学校生活は「勉強」よりも「昼寝」だったようだ。 後ろの席から見えるのは、先生の顔ではなく窓からの景色。 前で必死に教える先生を横目に、 僕は頭をそっと机に預け、視界を曇らせ、 スゥと夢の世界へと...
Keisuke.H
『赤い実はじけた』ほどドラマチックではなかったけれど、 あの頃、僕にも突然のモテ期が訪れていた。 意を決して手紙で告白すると、思いがけず「いいよ」という返事が届いた。 直接伝えられない自分が少し情け...
Keisuke.H
サッカー部にいた僕は、当初から部のやり方には疑問を感じていた。 練習試合も地区大会も、いつも結果は惨敗で、 それを改善しようとする雰囲気もない。 ただひたすら、同じメニューを毎日繰り返すだけ。 部員...
Keisuke.H
中学時代、僕は前期だけ学年委員長をやっていた。 後期は他の誰かに委員長を任せるルールがあったので、 後期は目立たずのんびり過ごそうと決めていた。 ところが、文化祭の大道具係での働きを見た技術の先生が...
Keisuke.H
僕の通っていた中学校では、毎年秋になると文化祭が開かれていた。 展示用の絵画は提出が義務だったんだけど、 絵の仕上がりが遅れていた僕は締切に間に合わず、 半分しか描けていないスカスカのキャンバスを展...
Keisuke.H
中学生になって、初めて同じクラスになる人がたくさんいて、 僕にはそれがどこか不思議な感覚だった。 小学校では2年に1度しかクラス替えがなかったから、 なんとなく新鮮で、少しだけ胸が高鳴った。 でも、...
Keisuke.H
1学年80人、2クラスの小さな中学校。 先輩後輩の関わりは生徒会や部活に限られていたので、 恋愛対象はほぼ同級生オンリー。 中学生にとって、恋愛の倍率はかなり高かった。 さらに、誰が誰を好きかは目ま...
Keisuke.H
中学生になって一番の驚きは、科目ごとに先生が違うことだった。 職員室に行けば、理科専門、音楽専門、保健体育専門と、各担当が並んでいる。 教科に応じて理科室に移動するのも日常の一環になった。 その...
Keisuke.H
中学生になって初めてのテストで、80人中6位だった。 悔しさなんて感じることもなく、 「ああ、自分はこんなもんだな」と早々に割り切っていた。 国語の漢字問題で絵画を「えが」と書いて出した時点で、 ト...
Keisuke.H
中学に入ってすぐのクラス会で、学級委員を決めることになった。 その場では、面倒ごとには関わらないぞと決めて、 ひたすら存在を消していたつもりだったが、 気づけば「学級委員長に推薦します!」という声が...
Keisuke.H
小学生だった僕に、カオリねえちゃんはよく言った。 「中学校は男子全員ボウズだからね」 何度も繰り返されるうちに、それは恐怖になっていった。 僕の記憶が確かなら、カオリねえちゃんはオカッパだった気がす...
Keisuke.H
中学校の体験入学があった。 体験入学と言ってもテスト受けただけ。 2人が転校するだけで、 1学年の80人はエスカレーター式に繰り上がるだけだった。 進学というより進級という感覚だった。 「またこ...
Keisuke.H
転校してきた頃はスケートをやったことがなかった。 ホッケー靴の靴紐も結べないレベルだった。 手袋を脱ぐと寒くて指が上手く動かなくなる。 スケート大会の前に父は僕に靴紐の結び方を教えた。 初めてのリン...
Keisuke.H
夏休みいえば大量の宿題。 僕は毎日努力をしないから日記に苦戦した。 夏休みが一ヶ月近くあるから、 終了三日前に毎日分を書かなければいけない。 一ヶ月前の天気も内容も覚えているわけがない。 仕方なく新...
Keisuke.H