今に目を向ける

Machika

「コロナ禍で先の見通しが全く立たない上に、計画してもそうなるかどうかもわからない。」

日本人は「行動する前によく考え、計画し実行する」ことが好ましいという傾向がありますが、中国人は「思い立ったらやってみる、失敗したらあきらめる」というやり方を好む方が多いよう感じます。
もう何年も前ですが、中国人の友人と暮らすと決まった際に、私はいつ引っ越しをするか前もって決め、大体の必要人数を考えて前もって友人に声をかけ、荷物も前もって梱包し運びやすいように準備しておく、という方法をとりましたが、中国人の友人は引っ越しの日取りをなかなか決定せず、ぎりぎりになって突然「明日引っ越しする」と決め、夜に多数の友達に「明日手伝って」とメッセージを送り、その日になって引っ越しの車を探し、ということがありました。
その後も、「前もって」が習慣の私と、「思い立ったら」が習慣の彼女との間では当然いろんな問題が起き、その度にお互いがお互いのやり方の利点を主張しあったものです。

例えば中国のある大学の話ですが、夏休みや冬休みに入る際、いつから新学期なのか前もって知らされず(〇月上旬頃という感じでわかってはいるのですが)、突然ある週末に「月曜日から新学期なので授業に出るように」という通知がきて、新学期が始まった日にやっと使う教科書が決まり授業で生徒に知らされます。他にも、祝日の数日前になって「休講しないので授業に出るように」とか、昼食中に突然「今日午後に生活指導の講義があるので必ず全員出席するように」という通知が来たりします。しかも「突然は無理です」と断ることも基本的にありません。そういう、彼女が育った状況を考えてみると、確かに前もって計画や計算をすると、狂わされてストレスだろうな、と思いました。彼女と一緒に暮らすうちに少しずつ行き当たりばったりにも慣れてきて、過度に考えすぎることがある私にいい影響を与えてくれたと思います。

日本人からすると、もしかしたらもうすぐ新学期が始まるかもしれない状況で、来週友人と会う約束をしていいものかと考えるところですが、中国の方はためらいなくOKします。その時点でOKなのでOK。「もしかしたら~かもしれないので、その時はまた連絡します」と日本人なら前もって伝えるかもしれませんが、中国ではもしダメだったらその時にそういえばそれでいいのです。ですので実際にドタキャンされることもすることもよくありますが、誰も気にしません。「急な予定変更はよくあることで、しょうがないことだ」と思うからです。

前置きが長くなりましたが、今、もしかするとそういう考え方が必要なのかもしれません。
最近ある方と話をしていて、「コロナ禍で先の見通しが全く立たない上に、計画してもそうなるかどうかもわからない。だからあまり考えないことだ」とおっしゃってた言葉がとても印象的でした。ある程度の方向性は決めておく、でも今まだ扉の前まで来ていないのなら、扉の前まで来た時に開けるかどうかを考える。開けると決めて、実際に開いたらその時に、進むのかどうかを考える。そういうお話でした。「今は扉が一つだと予測していても、その時になって違う扉が見えるかもしれないし、予想していなかった事態が起こって先へ進めなくなる可能性もある。今は今まで以上に、この先何がどうなるかわからないのだから、とりあえずはわからないことを考えすぎるよりも今できることを全力でやるほうがいい。」
確かにそうだなと思います。先のことを考えて今できる備えをしておくことは大事ですが、もし「もう疲れたな」と感じた時は、一旦考えるのはやめてみてもいいのかもしれません。もし先のことを考えるあまり、「今」調子を崩してしまったら、それは自分の未来にプラスになる行動とは言えません。現在の自分の心身の健康を保つことは、未来の自分のために備えることよりも重要なのです。

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本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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