漢文を学ぶ上で避けて通れないのが「返り点」です。
「レ点と一二点の違いが曖昧…」「読む順番がわかりにくい…」といった声は非常に多く、特に高校1〜2年生にとって返り点は“最初の壁”になりがちです。
けれども、返り点のルールをしっかり押さえ、訓練を積むことで、どんな漢文でも正確に読み下せるようになります。実際、共通テストや中堅大学レベルの入試であれば、返り点と基本句法の理解だけで合格点を狙える問題が大半です。
今回は、「返り点を確実に理解し、得点力に変えるための練習法」について、基礎から丁寧に解説していきます。
1. 返り点って何?まずは仕組みを理解しよう
漢文は中国語の文法に基づいて書かれています。そのままでは日本語の語順と大きく異なるため、日本語として意味が通るように語順を入れ替える「読み下し文」を作る必要があります。
このとき、日本語として正しい順番で読むための目印になるのが、「返り点」です。
主な返り点とその役割
たとえば、「不レ知一有レ之者」という文を見てみましょう。
これを読み下すと、「之(これ)有る者を知らず」となります。
返り点の指示にしたがって語順を整えることで、日本語として自然に意味が通る文に変わります。
2. よくあるつまずきポイントとその原因
返り点がなかなか覚えられない、使いこなせない…と悩む高校生は少なくありません。その背景には、以下のような勘違いや習慣の問題があります。
誤解①:返り点は丸暗記すればOK
確かにルールとして知識は必要ですが、ただの記号として暗記しても実戦では通用しません。語順と意味をセットで考える練習が大切です。
誤解②:文法用語が難しいから理解できない
「再読文字」「置き字」などの文法用語に苦手意識を持つ生徒も多いですが、まずは文構造に注目して返り点を追い、あとから文法を整理する方が効果的です。
誤解③:「返り点があると文が複雑になる」
実はその逆です。返り点があるからこそ、文の読み方が明示されており、むしろ読みやすくなっているのです。
3. 確実に身につけるためのステップ別学習法
返り点を本当に理解し、自在に読み下せるようになるには、段階を踏んで取り組むことが重要です。以下の3ステップを意識して練習しましょう。
ステップ①:図を使って基本のルールを整理
まずは、レ点・一二点・複合返り点の使い方を、図や表を活用して視覚的に理解します。教材にある図解をそのまま模写しながら、読み順を矢印で表すのがおすすめです。
このとき、「なぜこの順番になるのか?」という理由を自分の言葉で説明できるようにすると、理解がぐっと深まります。
ステップ②:簡単な例文で返り点の読み方を練習
次に、実際の短文を使って返り点を意識した読み下しをしてみましょう。
例:
原文:人不レ学不レ知義
訓読:人 学ばざれば 義を知らず
このように、一文ずつ丁寧に読み下し、どこにレ点や一二点があるかを確認することが、実践力につながります。
ステップ③:白文→訓読文の書き換えを習慣に
漢文をスムーズに読みこなせるようになるためには、白文(返り点なし)を訓読文に直す練習を日常的に行うことが最も効果的です。
おすすめのやり方:
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白文のみの例文を用意する(市販の問題集や教科書を活用)
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自分で返り点を入れ、読み下し文を作成
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正解と照らし合わせて、間違いを確認&修正
この作業を毎日1題でも続ければ、返り点のルールは自然と身についてきます。
4. 練習に使える教材・おすすめリソース
効率よく学ぶには、自分に合った教材選びも重要です。返り点の学習に役立つツールを紹介します。
学校教材・基礎参考書
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『漢文ヤマのヤマ』(数研出版):文法や返り点がコンパクトにまとまっていて、図解も豊富。
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『漢文句形ドリル』シリーズ:書き込み式で定着しやすく、短時間での復習にも◎。
アプリ・デジタル教材
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スタディサプリ(高校古文漢文):プロ講師の丁寧な説明で、返り点の使い方を視覚的に理解。
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漢文道場(アプリ):返り点をつけて読む練習がアプリ上で手軽にできる。
5. 毎日の勉強に組み込む工夫
漢文は短時間でもコツコツ継続することで得意分野に変えられます。日々の勉強で次の3つを意識しましょう。
① 書く・読む・訳すをセットに
返り点の知識は「書いて使って初めて身につく」ものです。ノートに例文を書き、返り点を入れて読み下し、現代語訳するという流れを1セットで取り組みましょう。
② 声に出して読む
音読には、語順の感覚を体にしみ込ませる効果があります。毎日声に出して読み下す習慣をつけましょう。
③ 短くても毎日続ける
たとえ1日1文でも、継続することがカギです。返り点のルールが無意識レベルで使えるようになるまで、繰り返しが重要です。
まとめ:「返り点」は漢文理解の道しるべ
返り点は、漢文という“外国語の文章”を日本語として読み解くための案内標識です。最初はとっつきにくく感じるかもしれませんが、一度ルールを覚えてしまえば、どんな文にも応用がきく非常に便利な仕組みです。
この機会に、返り点を「意味不明な記号」ではなく「読み方を教えてくれるガイド」として捉え直してみてください。日々のちょっとした練習の積み重ねが、漢文を得点源に変えてくれるはずです。
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