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「【大学入試漢文】重要な再読文字10選と使い分け

AZUKI

【大学入試漢文】重要な再読文字10選と使い分け

漢文を学ぶ上で必ず避けて通れないのが「再読文字」です。

「再読文字をマスターすることが漢文攻略の第一歩」と言われるほど、大学入試漢文では頻出です。文法問題として直接問われるだけでなく、読解問題の正確さにも大きく関わります。

ところが、多くの高校生が再読文字を「丸暗記」で済ませてしまいがちです。確かに暗記は必要ですが、それだけでは入試レベルの問題に対応できません。なぜなら、再読文字は文脈によって訳し方やニュアンスが変化するからです。

この記事では、大学入試で特に重要な再読文字を10個取り上げ、それぞれの意味・用法・使い分けのポイントを整理します。最後まで読めば、再読文字を「知識」から「使える武器」に変えることができるはずです。


1. 再読文字とは?

再読文字とは、「一度目は読まず、返り点に従って二度目に読む漢字」のことです。
一般的な読み方は「まず訓読しない → 返ってから読み下す → その後に返ってくる」という流れになります。

たとえば「未だ〜ず」の「未」や、「将に〜せんとす」の「将」などが代表例です。


2. 入試頻出の再読文字10選

ここからは、大学入試で特に重要な再読文字を10個厳選して解説します。


① 未(いまダ〜ず)

  • 意味:まだ〜していない

  • 特徴:事実の否定。単純に「まだ〜ない」と訳せばOK。

  • 例文
     未だ学ばず。
    (まだ学んでいない。)

  • ポイント:「未だ〜ず」は最頻出。絶対に落とせない。


② 将(まさニ〜セントす)

  • 意味:今にも〜しようとする

  • 特徴:未来志向。これから起こる行為を表す。

  • 例文
     将に行かんとす。
    (今にも行こうとする。)

  • ポイント:訳し方は「〜するつもりだ」としても良い。


③ 且(まさニ〜セントす/かツ〜す)

  • 意味:①今にも〜しようとする(将と同じ)/②その上〜だ

  • 特徴:文脈で判断。「将」との区別に注意。

  • 例文
     且に死せんとす。
    (今にも死にそうだ。)

  • ポイント:副詞的な「かつ〜す(その上〜する)」にもなるので要注意。


④ 当(まさニ〜すベシ)

  • 意味:当然〜すべきだ

  • 特徴:義務や当然性を表す。

  • 例文
     人は当に信ずべし。
    (人は当然信じるべきだ。)

  • ポイント:「すべし」というニュアンスを意識すること。


⑤ 応(まさニ〜すベシ)

  • 意味:きっと〜だろう(推量)/〜すべきだ(当と同じ)

  • 特徴:推量か当然かは文脈判断。

  • 例文
     賢者は応に用いらるべし。
    (賢者はきっと用いられるだろう/用いられるべきだ。)

  • ポイント:「当」と似ているが、応は「推量寄り」と覚えると区別しやすい。


⑥ 宜(よろシク〜スベシ)

  • 意味:〜するのがよい(適当)

  • 特徴:アドバイスや勧めのニュアンス。

  • 例文
     子は宜しく学ぶべし。
    (子どもは学ぶのがよい。)

  • ポイント:当・応と混同しやすいが、「望ましい」という含みが強い。


⑦ 須(すべかラク〜スベシ)

  • 意味:ぜひ〜する必要がある

  • 特徴:強い必要性。

  • 例文
     人は須らく礼を守るべし。
    (人は必ず礼を守らねばならない。)

  • ポイント:「must」に近い。入試では強制力を表すことを理解しておく。


⑧ 猶(なホ〜ノごとシ)

  • 意味:ちょうど〜のようだ/なお〜と同じ

  • 特徴:比況表現。「〜のようだ」と訳す。

  • 例文
     猶水の下るがごとし。
    (ちょうど水が下るようだ。)

  • ポイント:漢文特有の比喩表現に多い。詩文で頻出。


⑨ 盍(なんゾ〜ざル)

  • 意味:どうして〜しないのか(すればよいのに)

  • 特徴:疑問・勧め。現代語でも「盍む=おおう」に似て「不足を補う」イメージ。

  • 例文
     盍学ばざる。
    (どうして学ばないのか、学べばよいのに。)

  • ポイント:訳すとき「〜したらよいではないか」と勧めにすることが多い。


⑩ 蓋(なんゾ〜ざル)

  • 意味:どうして〜しないのか(盍と同じ)

  • 特徴:盍とセットで覚える。

  • 例文
     蓋帰らざる。
    (どうして帰らないのか、帰ればよいのに。)

  • ポイント:「盍」と「蓋」の区別は不要。どちらも勧めの表現。


3. 再読文字を正しく使い分けるコツ

再読文字は種類ごとに「グループ分け」すると理解しやすくなります。

  • 否定 … 未

  • 未来・予定 … 将、且

  • 当然・推量・適当 … 当、応、宜、須

  • 比況 … 猶

  • 勧め … 盍、蓋

このように分類すれば、文脈で迷ったときも判断がスムーズになります。


4. 効果的なトレーニング方法

① 音読してリズムで覚える

「未だ〜ず」「将に〜せんとす」のように、フレーズごとに声に出して覚えると忘れにくい。

② 例文ごと暗記する

単語カードのように「未=まだ〜ない」だけ覚えるのは危険。例文ごと覚えることで実戦で使える力がつく。

③ 過去問で確認する

実際の入試問題でどの再読文字が使われているか分析すると、使用頻度や文脈での使われ方が分かる。


まとめ

再読文字は大学入試漢文の基礎中の基礎ですが、単なる暗記ではなく「文脈の中で使い分ける力」が求められます。

  • 未 … 「まだ〜ない」

  • 将・且 … 「今にも〜しようとする」

  • 当・応・宜・須 … 「当然・推量・適当・必要」

  • 猶 … 「〜のようだ」

  • 盍・蓋 … 「どうして〜しないのか(すればよい)」

これら10個をグループごとに整理し、例文とともに音読・演習を繰り返すことで、確実に得点源にすることができます。

入試本番で「この再読文字、訳せる!」という瞬間は大きな武器になります。今日から少しずつ、声に出しながら練習していきましょう。

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The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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