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【大学入試古文】文脈から意味を推測する練習法

AZUKI

 

古文の学習で最も多い悩みの一つが「単語や文法を覚えているのに、文章が読めない」というものです。参考書で古文単語帳を繰り返し暗記し、助動詞や敬語の活用も理解しているのに、模試や入試問題になると途端に文章がつかめなくなる……。そんな経験をした人は少なくないでしょう。

その原因の一つが「文脈から意味を推測する力の不足」です。古文は現代語とは大きく異なる表現や語彙が使われており、辞書や単語帳にない表現に必ず出会います。そのたびに止まってしまうのでは、読みが進みません。そこで必要になるのが「文脈を手がかりに意味を推測する力」です。この記事では、その具体的な練習方法を紹介していきます。


1. 文脈推測力が必要な理由

古文の文章は千年前の言葉で書かれており、現代の私たちにとっては「外国語」に近い存在です。単語帳に載っている語彙は多くても1000語程度。しかし実際に入試問題で使われる古語はそれ以上に多く、必ず未知の語に出会います。

このとき、

  • 単語そのものを知らなくても、前後の文脈から意味を推測する

  • 語のニュアンスを大まかに捉えて読み進める
    といった力があれば、理解を止めずに済むのです。

逆に言えば、文脈推測ができないと「知らない単語=詰む」状態になり、時間も理解も大きく失われてしまいます。


2. 文脈推測の基本的な考え方

文脈から意味を推測するときは、次の3つの手がかりを意識しましょう。

  1. 前後関係の把握
     登場人物の行動や心情がどう流れているのかを確認します。例えば「泣く」「袖を濡らす」と続けば、直前の未知語は「悲しむ」に関係している可能性が高いです。

  2. 対比や接続の助詞
     「しかし」「されど」「また」などの古語に注目します。逆接なら前後の意味は反対方向に、順接なら補足関係にあることがわかります。未知語がその流れにどう位置づけられているかを考えます。

  3. 敬語や人物関係
     尊敬語や謙譲語が使われていれば、人物の身分や立場が見えてきます。その立場を踏まえれば、未知語のおおよその意味も推測可能です。


3. 実践的な練習法

では、具体的にどう練習すれば文脈推測力が鍛えられるのでしょうか。いくつか段階を追って紹介します。

(1) 単語帳に頼りすぎない精読練習

単語を調べずに本文を読み進めてみましょう。意味がわからない語が出てきたら、すぐには辞書を引かず、まずは「自分なりの仮説」を立てることが大切です。その上で辞書を確認し、合っているかどうかを検証する。この「仮説 → 検証」の流れを繰り返すことで推測力が育ちます。

(2) 短文単位での要約練習

1文ごとに「要するに何を言いたいのか」を現代語で短くまとめます。この要約を通して、未知語があっても全体の意味を捉える練習になります。

(3) 主語の把握を意識する

古文は主語が省略されることが多いため、誰の行動・心情なのかを意識しながら読む必要があります。主語を補いながら読む習慣をつけると、文脈の筋道が見えやすくなり、未知語も推測しやすくなります。

(4) 同義表現や比喩を探す

古文では同じ内容を繰り返して説明することが多いです。例えば「涙落としつつ、袖を濡らす」のように、未知語が比喩や言い換えの形で現れる場合があります。この関連語を見つけることで意味が浮かび上がります。


4. 実例を使った解説

例文

「春は曙。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。」

この文章で「やうやう」を知らないとします。

  • 文全体の流れは「春の朝の情景描写」。

  • 「白くなりゆく」という変化を表す表現が続く。

ここから「やうやう」は「だんだん」「次第に」といった意味だろうと推測できます。実際その通りです。

このように「場面描写の流れ」「変化の表現」といった文脈のヒントを活用することが大切です。


5. 模試や入試問題での応用

模試や入試では、辞書を使えません。そのため、未知語が出ても焦らず「文脈で推測」する姿勢が必要です。

  • 問題文の設問は必ず「前後の内容理解」を問うものが多いため、未知語そのものを正確に覚えていなくても解答できることが多いです。

  • 推測が外れても「大きな方向性」が合っていれば正答できる場合も多いです。

つまり、完璧主義ではなく、大枠で理解する力が得点に直結するのです。


6. 推測力を鍛える日常的トレーニング

文脈推測の力は、日々の学習習慣の中で自然と身につきます。

  • 現代文や新聞記事の要約:要点をつかむ訓練は古文読解にも直結します。

  • わざと辞書を封印して読む時間を作る:あえて制限を設けることで推測の習慣がつきます。

  • 本文を声に出して読む:音読によって文章の流れやリズムがつかみやすくなり、文脈理解もスムーズになります。


まとめ

古文を読むうえで「単語暗記」と「文法理解」は必要不可欠ですが、それだけでは不十分です。未知の表現に出会ったときに「立ち止まらずに意味を推測して読み進める力」こそ、入試での得点力を左右するのです。

文脈推測の力は一朝一夕では身につきませんが、仮説を立て、検証し、要約する習慣を積み重ねることで確実に向上していきます。古文に苦手意識がある人こそ、この方法を取り入れることで「読める実感」を得やすくなるはずです。

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本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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