大学入試の古文で得点を伸ばすために欠かせないのが「古文常識」です。文法や単語をしっかり覚えていても、古典の世界における背景知識が不足していると、人物の行動や心情の意味を正しく読み取れず、設問の正答率が下がってしまいます。

たとえば、「直衣（のうし）」と「狩衣（かりぎぬ）」の違いを知らなければ、登場人物がどの身分なのか判断できないことがありますし、「大納言が殿上に昇る」といった描写も、当時の官位制度を知らないと正しく理解できません。つまり古文常識とは、古文世界を理解するための背景地図のようなものなのです。

しかし一方で、「範囲が広すぎて何から覚えたらいいのか分からない」「一度覚えてもすぐに忘れてしまう」という声もよく聞きます。この記事では、受験に必要な古文常識を効率よく学ぶための資料や動画の活用法を整理し、学習の流れを提案します。

1. 古文常識が必要な理由

まずはなぜ古文常識が受験に不可欠なのかを確認しておきましょう。

1. 登場人物の立場や行動の意味を理解できる
   　貴族社会の上下関係や、恋愛における男女のしきたりなどを知らないと、場面描写の背景を読み取れません。

2. 設問で直接問われることがある
   　共通テストや難関大の問題では、「当時の習慣に照らして正しいものを選べ」といった設問が出題されることがあります。

3. 文章全体の読解スピードが上がる
   　常識を知っていれば、いちいち脚注に頼らなくても流れるように読めるため、時間短縮につながります。

つまり古文常識の理解は、点数の底上げと安定化に直結します。

2. 古文常識の主要分野

効率よく学ぶには、まず出題頻度が高い分野から優先的に押さえることが重要です。

• 身分制度・官職名（大納言・少将・殿上人など）

• 衣服・調度（狩衣・直衣・袴・几帳など）

• 住居と暮らし（寝殿造・牛車・年中行事）

• 恋愛の作法（文を交わす・垣間見・夜這いなど）

• 宗教・思想（出家・仏道修行・陰陽道）

• 教育・文学（和歌の贈答・漢詩の素養）

これらを体系的に整理して覚えることで、入試に必要な基礎知識を効率よく身につけられます。

3. 資料を使った学習法

（1）図解入り参考書

古文常識をまとめた参考書は多数ありますが、イラストや図解が豊富なものがおすすめです。衣服や建物は文字だけで覚えようとすると混乱しやすく、視覚情報を活用することで記憶が定着しやすくなります。

特に「高校生向け古文常識の図説本」や「マンガでわかる古典常識シリーズ」は入門編として最適です。

（2）年表や系図

歴史的背景を理解するために、天皇の系譜や貴族社会の官職序列を図で押さえておくと有効です。特に『大鏡』や『栄花物語』など史書系の古文では必須知識になります。

（3）入試問題集の脚注

過去問や模試の解説に載っている脚注は、まさに「入試で問われる可能性が高い常識」です。専用参考書を買う前に、まず手元の問題集の脚注を整理し、自分用の常識ノートを作っていく方法もおすすめです。

4. 動画を使った学習法

近年はYouTubeなどで無料で学べる古文常識動画が充実しています。文章だけでは分かりにくい点も、映像で見ると理解しやすくなります。

（1）衣服・住居の紹介動画

実際に再現した衣装や平安貴族の邸宅模型を紹介している動画があります。直衣と狩衣の違い、几帳や御簾の使い方などを視覚的に理解できるため、暗記効率が飛躍的に上がります。

（2）行事解説動画

正月行事や賀茂祭、月見や歌会など、古文に頻出する年中行事を解説した動画は非常に有用です。単に言葉を覚えるのではなく、その行事がどんな意味を持っていたかを理解できる点が強みです。

（3）大学受験対策チャンネル

受験専門の教育系YouTuberが、古文常識を試験に出やすい形で整理して解説しているものもあります。10〜20分程度の短い動画でテーマごとにまとまっているので、スキマ時間の学習にぴったりです。

5. 効率的な学習ステップ

「資料と動画をどう使い分ければよいか分からない」という声もあるので、具体的な学習ステップを提案します。

1. 参考書やノートで基礎整理
   　まずは衣服・官職・住居などの主要分野を図解で押さえる。

2. 動画でイメージを補強
   　参考書で学んだ知識を、動画で「動くイメージ」として理解する。

3. 自分用の常識ノート作成
   　問題集の脚注や気になった情報をまとめて、自分専用の常識辞典を作る。

4. 演習で確認
   　実際に古文の本文を読み、「この衣服の描写はどんな意味か」と考えながら理解を定着させる。

6. 学習のコツ

古文常識は一度に完璧に覚えようとせず、「繰り返し思い出す」ことが大切です。

• スキマ時間に復習
  　5分の動画やイラストページを繰り返し見る。

• 友達や家族に説明する
  　「直衣と狩衣の違い」を人に説明できれば、自分の理解も深まります。

• 古典作品を読むときに必ず確認
  　『枕草子』『伊勢物語』などの本文を読む際、常識を意識しながら読み進める。

知識を「知っている」だけでなく「使える」ようにすることが、得点力アップのポイントです。

まとめ

古文常識は受験古文の土台を支える知識であり、単語・文法と同じくらい重要です。しかし、範囲が広く抽象的に感じやすいため、効率よく整理して覚えることが求められます。

• 図解資料で基礎を押さえる

• 動画でイメージを補強する

• 過去問脚注をノート化する

• 繰り返し活用して知識を定着させる

この流れで学習を進めれば、古文常識がぐっと身近になり、読解力も大幅に向上します。

古文常識を押さえることは、単なる暗記にとどまらず、「古文世界を生き生きと感じながら読む力」を育てることでもあります。楽しみながら知識を積み重ね、入試本番で確実に得点できる力をつけていきましょう。