先日、スタニスラフ・ブーニンのコンサートへ行ってまいりました。約20年ぶりです。
クラシックファンはご存知の方も多いかと思いますが、ブーニンは、病気やケガで約9年間活動を休止していました。2022年に復帰しましたが、現在でも左手が思うように動かず、左足は手術をした為、左右に長さの違いがあります。そのため、底の分厚い靴を左足に履いていて、ピアノのペダルは特注のものを取り付けて演奏しています。そして杖をついて歩いています。
今回、生で拝見したブーニンは、それでも長身のスッとした背筋と品のある雰囲気で、優しい空気を纏っていました。
そして、始まったコンサート。。。
コンサート中は、指が思うように動かないことによるミスもたくさんあったし、いつ演奏が止まるのかヒヤヒヤした場面もありましたが、こちら側もそれに慣れてきた頃、ふと思ったのです。
ブーニンはそれでも弾き続けられるんだなと。きっと彼の頭の中では完璧な音楽が鳴っているのでしょう。そして、演奏からは彼の生き様を感じ、彼が伝えたい音楽に耳を傾けることに注力できることは、聴衆として、とても尊い感覚でした。
一つの曲をブーニン自身が音楽的にこう弾きたい!という明確なメッセージがあるのは今も昔と変わらないし、特にプログラムの最後のメンデルスゾーンや、アンコールの最後のバッハは、内声の響きが優しく美しすぎて、とても感動して、涙が出ました。
そして、プログラムの中に、私自身が好きでよく弾いているワルツの9番があったのですが、自分がよく知る曲だからこそ、ブーニンがそれを演奏した時、上手く指が動かない場面で誤魔化そうとせず、音楽の流れや和声のバランスを大切にしていることがとてもよく分かりました。
若手のピアニストが完璧な技術と表現力で聴衆を沸かせ、感動させるものとは、全く質が異なるというか、次元の異なるもの。。。というのでしょうか。
ブーニンは、人としてもピアニストとしても、とても偉大だと感じました。
コンサート終了後は、「ブラボー!」という歓声と拍手が鳴り止みませんでした。
そして、ブーニンはアンコールを3曲弾いて、胸に手をあて、何度もお辞儀をしていました。
彼の生き方と演奏は、これからも多くの人の心を動かすのではないでしょうか。
おまけ:
ブーニンは奥様が日本人ということもあり、とても親日家で、これからも日本でコンサートすることがたくさんあると思います。興味のある方は、ぜひ、コンサートへ足を運んでみてください⭐︎
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