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【大学入試漢文】一語多義の漢字対策と見分け方

AZUKI

 

「漢文は句法さえ覚えればなんとかなる」 そう思って対策を進めている受験生は多いはずです。しかし、実際の入試や共通テストで「句法はわかるのに、選択肢が絞りきれない」「現代語訳問題で、あてずっぽうに訳して失点する」という事態が頻発しています。

その最大の原因は、**「一語多義の漢字(重要語彙)」**の対策不足にあります。

漢文において、一つの漢字が文脈によって全く異なる意味を持つことは珍しくありません。例えば「過」という字を見て、「すぎる」とだけ覚えていては、合格点は取れません。ある時は「あやまち」と読み、ある時は「よぎる(立ち寄る)」と訳す。この使い分けができるかどうかが、読解スピードと正答率の境界線になります。

この記事では、入試で狙われやすい「一語多義の漢字」を整理し、それらを文脈から鮮やかに見分けるための「思考のプロセス」を伝授します。


1. なぜ「一語多義」が合否を分けるのか

漢文の文章は、現代の日本語に比べて圧倒的に文字数が少ないのが特徴です。そのため、一文字一文字に込められた情報の密度が非常に高く、一つの漢字の意味を読み違えるだけで、ストーリーの因果関係が崩壊してしまいます。

特に、以下の3つのパターンで狙われます。

  1. 動詞と名詞の使い分け: (例:「王」を「おう(名詞)」と読むか、「おうたらしむ(動詞:王として君臨する)」と読むか)

  2. プラスの意味とマイナスの意味: (例:「事」を「つかえる(奉仕する)」と訳すか、「こと(事件・災い)」と訳すか)

  3. 読み方(送り仮名)による判別: (例:「説」を「とく」と読むか、「よろこぶ」と読むか)

これらを「なんとなく」で処理しているうちは、漢文の成績は安定しません。論理的な「見分け方」を身につける必要があります。


2. 入試頻出!要注意の一語多義漢字リスト

まずは、入試で最も狙われる「一字で複数の顔を持つ漢字」の代表格を見ていきましょう。

① 「過」

  • 過(す)ぐ: 通り過ぎる、度を越す。

  • 過(よぎ)る: 立ち寄る(※入試で非常によく狙われます)。

  • 過(あやま)ち: 失敗、過失。

  • 過(あやま)つ: 間違う。

② 「説」

  • 説(と)く: 説明する、説得する。

  • 説(よろこ)ぶ: 喜ぶ(※「悦」と同じ意味)。

  • 説(ぜい)す: 自分の意見を売り込む(遊説)。

③ 「私」

  • 私(わたくし): 自分、個人の。

  • 私(ひそ)かに: こっそりと(※「密かに」と同じ意味。文脈の隠密性を表す重要語)。

④ 「事」

  • 事(こと): 出来事、事件。

  • 事(つか)ふ: 仕える、奉仕する(※目上の人に対する動作として頻出)。

  • 事(こと)とす: 専念する、仕事にする。

⑤ 「見」

  • 見(み)る: 見る、会う。

  • 見(まみ)ゆ: お目にかかる(※「見」の謙譲表現)。

  • 見(あら)はる: 現れる。

  • 見(る/らる): 〜される(※受身の助動詞)。


3. 文脈から意味を特定する「3つのステップ」

複数の意味を持つ漢字に出会ったとき、どのように正解を絞り込めばよいのでしょうか。

ステップ1:語順(SVO)から品詞を特定する

漢文は英語と同じ「S(主語)+ V(動詞)+ O(目的語)」の構造を持っています。 例えば、「過」という字の後に「其の家(その家)」という目的語が来ていれば、それは名詞の「あやまち」ではなく、動詞としての「よぎる(立ち寄る)」や「すぐ(通り過ぎる)」の意味であることが確定します。

ステップ2:主語の「身分」や「属性」を確認する

「事」という字が出てきたとき、主語が「臣(家臣)」で、目的語が「王」であれば、それは「出来事」ではなく「仕える(奉仕する)」という意味になります。漢字の意味を単体で考えるのではなく、「誰が誰に何をしているのか」という人間関係のベクトルを見ることが不可欠です。

ステップ3:対比構造を探す

漢文は対句(ペアになる文章)を多用します。 前の文で「悪(あし)」という字が使われていれば、対応する後ろの文の「説」は、対比として「よろこぶ(プラスの意味)」である可能性が高まります。文章の左右のバランスを見ることで、未知の意味も自動的に導き出せます。


4. 共通テスト・二次試験での実戦的立ち回り

試験本番で迷ったとき、これだけは意識してください。

  • 「送り仮名」をヒントにする: 共通テストの書き下し文の問題では、送り仮名が最大のヒントです。「説(よろこ)ぶ」とあれば、それは「説明する」ではないことが一瞬でわかります。

  • 「再読文字」や「句法」との兼ね合い: 一語多義の漢字が、実は句法の一部(例:「為」が「〜となる」ではなく「〜のために」や受身で使われるなど)である場合があります。句法の型に当てはまるか、まず疑ってみましょう。


5. 保護者の方へ:漢文は「パズル」の習得と同じ

漢文の学習は、英単語の暗記とは少し性質が異なります。英語が「100の単語を覚える」作業だとしたら、漢文は「20の漢字の、3つの側面(顔)を知る」作業に近いと言えます。

保護者の方にできるサポートは、お子様が漢文の問題を解いている際、**「この漢字、別の読み方や意味はある?」**とクイズのように聞いてあげることです。 「『説く』以外に『喜ぶ』って意味もあるんだよ」という知識の広がりを一緒に楽しむ姿勢が、お子様の「単なる暗記」を「深い理解」へと変えるきっかけになります。漢文は覚えれば覚えるほど、パズルのように答えがピタリと決まる、非常に努力が報われやすい科目です。


6. まとめ:一字の背後にある「複数の顔」を掴む

漢文の読解スピードと精度を上げるためには、句法の暗記と並行して、一語多義の漢字を整理することが最短の近道です。

  1. 「過・説・事・見」など、特に出やすい漢字を優先的に押さえる。

  2. 語順(SVO)と主語の属性から、適切な意味を論理的に選ぶ。

  3. 対比構造や注釈をヒントに、文脈の中での役割を特定する。

漢字の持つ多様な意味を理解することは、当時の中国の人々の思考の深さに触れることでもあります。文字の向こう側にある情景や論理を正しく読み解けるようになったとき、漢文はあなたにとって最強の「得点源」に変わるはずです。

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This column was published by the author in their personal capacity.
The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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