サムネイル

・小さな観察メモ|テントが必要な日もある

Nao705

レッスンで、定型フレーズをいくつか渡した日があります。
 
来週、どうしても英語を使う場面がある。今週を、まず乗り切りたい。そういう方に、すぐ使えるフレーズを、いくつもお渡しする。そんな日が、私にはしょっちゅうあります。
 
「英語脳」「瞬間英作文」「フレーズ暗記」。英語の学び方について、よく見かける言葉です。
 
そして時々、私は、そういう学習法に否定的な人だと思われることがあります。
 
でも、実はそうではありません。
 
むしろ私は、テントが必要な日もある、と思っています。
 
たとえば、雨が降っている。風も強い。今夜を、どうにかしなければいけない。
 
そんなときに、「いつか、立派な家を建てましょう」と言われても、困りますよね。
 
もちろん、家は大事です。土台からしっかり建てた家があれば、雨も風もしのげるし、安心して暮らせる。
 
でも、いま、びしょ濡れになっている人に必要なのは、まず、テントかもしれません。今夜を越えるための、場所です。
 
英語も、少し似ている気がします。
 
来週、海外出張がある。お客様が来る。子どもの学校で、英語を使う場面がある。
 
そんなとき、「まずは、英語の世界の見方を理解しましょう」と言われても、正直、それどころではない。
 
まず、使いたい。まず、伝えたい。まず、困らないようにしたい。
 
そういうとき、定型フレーズや瞬間英作文は、とても役に立ちます。だから私は、それを否定したいわけではないのです。むしろ、必要な日には、自分から渡します。
 
ただ、一つだけ、思うことがあります。
 
テントは、家ではない、ということです。
 
テントは、とても便利です。でも、ずっと住み続けるために作られたものではありません。
 
フレーズを増やし、定型文を覚え、よく使う表現をストックしておく。それで助かる場面は、本当にたくさんあります。
 
でも、どこかで、限界もやってきます。
 
相手が、予想外のことを言う。話題が、少し変わる。気持ちが、動く。そうすると、用意していたテントだけでは、足りなくなることがあります。
 
もう一つ、こんなこともあります。
 
覚えたフレーズが、その場にちゃんと合っているはずなのに、なぜか、しっくりこない。間違ってはいない。でも、なんだか少し、借りものの感じが残る。
 
テントの中にいるあいだは、安心できる。でも、ふと外を見たときに、ここは自分の家ではないな、と気づく瞬間がある。
 
英語も、そういうところがあるのかもしれません。
 
だから私は、できれば、テントも選びたいと思っています。
 
ただ雨をしのぐだけのテントではなく、少しだけ、家につながるテントを。
 
たとえば、フレーズを覚えるなら、その奥にある英語の感覚も、少しだけのぞいてみる。
 
発音を練習するなら、音だけでなく、日本語と何が違うのかも、少し観察してみる。
 
表現を覚えるなら、なぜ英語では、その順番になるのかも、少し感じてみる。
 
家は、一日では建ちません。だから、テントが必要な日もあります。
 
私もレッスンで、テントを渡します。むしろ、しょっちゅう渡しています。
 
でも、もし、そのテントが、いつか家を建てるためのヒントを、少しだけ含んでいたら。
 
もし、そのテントの中で、少しずつ、家の使い方を練習できていたら。
 
それは、とても良いテントなのではないか、と思うのです。
 
テントか、家か。そういう話を、したいわけではありません。
 
テントは、大事です。
 
でも、できることなら、家につながるテントを。そして、いつか、自分で住める家を持てるように。
 
そんなことを考えながら、今日も、レッスンをしています。
 
レッスンでお渡しするものの中に、この「家につながるテント」も、少しずつ混ぜていけたらと思っています。急ぎの一語でも、その奥にある感覚を、ほんの少しだけ一緒にのぞきながら。
 
英語の「感じ方」については、noteにもう少しゆっくり書いています。よければ、そちらものぞいてみてください。

保存リストに追加済み

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

コメント (0)

ログインして、コメント投稿 ログイン »
Premium ribbon

出身国:

居住国:

教えるカテゴリ

講師の言語

日本語   ネイティブ
英語   ネイティブ級

Nao705講師の人気コラム

« 全講師コラム一覧へ戻る
お気軽にご質問ください!