より重要な事柄を見極める②|緊急なことほど重要に見えてしまう
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■ 前回の続きです前回のコラムでは,「より重要な事柄を見極める」という言葉について書きました。見極めるのは,「重要なもの」と「重要ではないもの」ではありません。「重要なもの」と,「より重要なもの」です。どちらも大切に見えるからこそ,見極めることが必要になります。では,なぜ私たちは,本当に重要なことよりも,目の前の緊急なことを先に選んでしまうのでしょうか。■ 緊急なことは,重要に見えやすい緊急なことには,私たちを動かす力があります。今日中に返さないといけない連絡。明日までに出す書類。急に入った予定。締切が近い宿題や提出物。こうしたものは,今すぐ対応しないといけないように感じます。実際,対応が必要なことも多いです。問題は,「緊急だから重要」と思い込んでしまうことです。締切が近いものは,重要に見えやすくなります。でも,急いでいることと,本当に大切なことは,いつも同じとは限りません。■ 重要なことほど,締切が遠い一方で,本当に重要なことは,たいてい締切がかなり先にあります。健康を整えること。家族と話すこと。信頼関係を育てること。基礎を固めること。考え方を見直すこと。知識や技術を磨くこと。これらは,今日やらなかったからといって,明日すぐに大きな問題になるとは限りません。だから,後回しにしやすいのです。車でいえば,ガソリンが少なくなれば,すぐに給油しようと思います。ガソリンがなければ,車は動かなくなるからです。では,オイル交換はどうでしょうか。今日しなかったからといって,すぐに車が止まるわけではありません。だから,つい後回しにしやすいものです。でも,放っておくと,少しずつ車に負担がかかります。緊急ではないように見えても,長い目で見ると,とても重要なことがあります。仕事でいえば,納期もたいてい少し先にあります。「まだ時間がある」と思って後回しにしているうちに,気がつけば締切が迫り,本来は計画的に進められたはずの仕事が,「緊急の仕事」になってしまうことがあります。■ 勉強でも同じ勉強でも,同じことが起こります。テスト直前のワーク提出は緊急です。宿題を終わらせることも大切です。でも,本当に点数につながるのは,どこが分かっていないのか。なぜ同じミスをくり返すのか。問題文をどう読み違えているのか。公式の意味を説明できるのか。そうした部分を見直すことです。ところが,こうした学習は,すぐに提出物として見えるわけではありません。だから,後回しにされやすいのです。■ そもそも,なぜ緊急になったのかもう一つ,考えておきたいことがあります。それは,「そもそも,なぜそれは緊急なことになったのか」ということです。もちろん,自分ではどうにもできない急用や,突然起きる出来事もあります。病気,事故,災害,急な連絡など,本当に急いで対応しなければならないこともあります。でも,すべてがそうとは限りません。本当はもっと早く取りかかれたこと。少しずつ進めておけばよかったこと。後回しにしているうちに,締切が近づいてしまったこと。そういうものもあります。その場合,それは本当の意味での緊急事態というより,自分が先延ばしにしてきたことの結果かもしれません。少し耳の痛い言い方をすれば,先延ばしにしてきたことの“つけ”が,回ってきただけ,という場合もあります。だからこそ,できるだけ「緊急」にならないように,前もって予定を立てることが大切です。少し早めに始める。小さく分けて進める。締切の前に,自分の締切を作る。少しずつ見直す時間を取る。そうすれば,本当に重要なことに使える時間も,心の余裕も残しやすくなります。■ 「終わった」と「分かった」は違う勉強でよくあるのは,「ワークは終わった」「宿題は出した」「テスト範囲は一通りやった」という状態です。もちろん,それも大切です。でも,終わったことと,分かったことは同じではありません。解いたことと,説明できることも同じではありません。丸がついたことと,次もできることも同じではありません。緊急なことは,「終わったかどうか」で判断しやすいものです。でも,より重要なことは,「分かっているか」「次につながるか」「自分の力になっているか」を見なければ分かりません。だからこそ,見極める必要があります。■ レッスンで見ていること私のレッスンでは,問題を解いた後に,なぜその式にしたのか。どこで迷ったのか。別の考え方はあるか。次に同じタイプの問題が出たら,何に気をつけるか。そうしたことを確認することがあります。これは,少し時間がかかります。ただ答え合わせをするだけなら,もっと早く進むかもしれません。でも,早く進むことが,いつも一番重要とは限りません。一見,遠回りに見える確認が,あとで大きな力になることがあります。だから私は,「どれだけ進んだか」だけでなく,「どれだけ分かる形になったか」を大切にしています。■ だからこそ,見極めたい緊急なことを無視すればよい,ということではありません。緊急なことにも,もちろん対応が必要です。そして,緊急なことは,必ずしも自分一人で全部背負わなければならない,というものでもありません。家族に相談する。先生に早めに聞く。職場で状況を共有する。助けを借りる。予定を調整する。そうすることで,本当に大切なことを見失わずに済む場合もあります。ただ,緊急なことばかりに反応していると,より重要な事柄が後回しになってしまいます。さらに言えば,本当はもっと早く始めていれば,緊急にならなかったこともあるかもしれません。だからこそ,「これは本当に緊急なことなのか」「なぜ緊急になってしまったのか」「緊急になる前に,何を少しずつ進めておくべきか」と考える時間を持ちたいと思っています。勉強でも,生活でも,仕事でも,目の前のことに追われる日があります。それでも,何を優先するかを少し立ち止まって考えること。それが,「より重要な事柄を見極める」ということにつながるのだと思います。私自身は,まだまだ簡単にできているわけではありません。でも,迷った時ほど,「今,より重要な事柄は何か」と考えられる人でありたいと思っています。
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