「昨日やったばっかりやのに,もう忘れたの?」
子どもが前に習った問題で止まっていると,
ついそう言いたくなることがあります。
でも,伸びる子の家庭を見ていると,
「忘れたこと」そのものを,あまり問題にしていない
ことがあります。
むしろ,
「何やったっけ?」
「ちょっと思い出してみる?」
と,
もう一度自分の頭から取り出すきっかけを作っています。
実は,復習では,
忘れないことより,忘れかけた時に戻れること
の方が大切なのかもしれません。
■ 勉強した直後は,「できて当たり前」のこともある
授業が終わった直後は,
まだ先生の説明を覚えています。
途中式も覚えています。
答えまで,
何となく頭に残っていることもあります。
その状態で同じ問題を解けば,
「できた!」
となりやすいです。
もちろん,
それも大切です。
ただ,
本当に自分の力でできるようになったか
を確かめるには,
少し時間を空けてみる必要があります。
次の日。
数日後。
もう一度同じことを聞かれた時に,
「えーっと……」
と考えて,
そこから自分で思い出せるか。
そこに,
復習の大切な意味があります。
■ 私は,トイレで復習していました
私自身,学生の頃,
トイレに入った時などに,
「今日習ったことを言えるかな」
と,
その日の授業内容を頭の中で再現していました。
誰かに言われて始めたわけではありません。
ノートを見るわけでもなく,
教科書を開くわけでもありません。
「今日は何を習った?」
「先生は,どんな説明をしていた?」
「この公式は,なぜこうなる?」
そんなふうに,
自分の頭の中から取り出していました。
ちゃんと分かったつもりでも,
何も見ずに説明しようとすると,
「あれ?」
となることがあります。
逆に,
自分の言葉で説明できれば,
「ここは頭に入ってるな」
と分かります。
今振り返ると,
これはかなりよい復習だったと思います。
■ 今なら「想起学習」だったと分かります
当時の私は,
もちろん専門的な名前など知りませんでした。
でも今なら分かります。
何も見ずに,
自分の頭から学んだことを取り出す方法は,
「想起学習」
と呼ばれています。
以前のコラム,
「できる子が無意識にやっている,本当に効果のある5つの学習法」
でも紹介しました。
ノートを読み返す。
教科書をもう一度見る。
それも復習です。
でも,
「何が書いてあったかな」
「自分で説明できるかな」
と,
いったん何も見ずに思い出してみる。
その一手間が,
学んだことを自分のものにしていきます。
私がトイレでやっていたのは,
まさにそれでした。
誰かに言われたわけでもなく,
「今日習ったことを言えるかな」
と試していた。
結果的に,
後になって「効果がある」と知った学習法
を自然にやっていたことになります。
■ 少し忘れかけた時が,復習のチャンス
例えば,
数学の授業で一次方程式を習ったとします。
授業直後なら,
「移項して,符号を変えて……」
と,
先生の説明を思い出しながら解けるでしょう。
ところが,
2日ほどたつと,
「あれ?どうするんだったっけ」
となることがあります。
でも,
ここでがっかりする必要はありません。
むしろ,
ここが復習のチャンスです。
すぐ答えを見るのではなく,
「たしか,まず……」
と少し考えてみます。
そして,
自分の力で思い出して解けたなら,
その知識は,
前より強くなっています。
復習とは,
ただ同じものを何度も見ることではありません。
少し薄れかけた記憶を,自分の力でもう一度取り出すこと
でもあります。
■ 翌日,1週間後,1か月後と戻る
このように,
時間を空けて学習する方法は,
「分散学習」
と呼ばれています。
これも,
以前の「本当に効果のある5つの学習法」で紹介しました。
つまり,
何も見ずに思い出す「想起学習」
と,
時間を空けて戻る「分散学習」
を組み合わせるわけです。
例えば,
翌日 → 1週間後 → 1か月後
と戻ってみる。
もちろん,
これは一つの目安です。
毎回,
全部やり直す必要もありません。
前に間違えた問題。
少し迷った問題。
先生に説明してもらって,
ようやく分かった問題。
そういう問題を,
1問か2問やってみるだけでも十分です。
■ ここで,「伸びる子の親あるある」
子どもが,
「これ,忘れた」
と言った時。
そこで,
「昨日やったでしょ」
「ちゃんと覚えないとだめでしょ」
と言うと,
子どもの意識は,
問題ではなく,
「忘れた自分はダメなんだ」
という方へ向いてしまうことがあります。
でも,
「忘れたか。どこまでなら思い出せる?」
「答え見る前に,ちょっと考えてみようか」
と声をかければ,
意識は,
「どうやったら思い出せるかな」
という方向へ向きます。
この違いは,
小さいようで大きいと思います。
伸びる子の親は,
すぐに答えを教えるわけでもなく,
ずっと横について勉強を見るわけでもありません。
子どもが思い出そうとしている時間を,奪わない。
そんな関わり方をしていることがあります。
■ 「もう習ったでしょ」ではなく,「戻ればいい」
勉強は,
一直線に進むものではありません。
前に習ったことを忘れたら,
戻ればいい。
また忘れたら,
また戻ればいい。
数学では特に,
前に習ったことを使って,
次の内容を学んでいきます。
分数があやふやなら,
分数へ戻る。
一次方程式が不安なら,
一次方程式へ戻る。
それは,
後退ではありません。
戻ることで,次へ進めるようになります。
だから,
「もう習ったでしょ」
ではなく,
「必要なら戻ればいい」
と思えることも,
伸びる子の親あるあるの一つではないでしょうか。
■ 「覚えてる?」より,「言えるかな?」
家庭でできることは,
それほど難しくありません。
今日,学校から帰ってきた子に,
「ちゃんと覚えてる?」
と聞く代わりに,
「今日習ったこと,何か言えるかな」
と聞いてみる。
数日後なら,
「この前やったやつ,まだできるかな」
と,
1問だけやってみる。
全部言えなくても構いません。
忘れていても構いません。
むしろ,
「あれ?」
となった時こそ,
思い出すチャンスです。
忘れない子が伸びるのではありません。
忘れかけた時に,自分で戻ってこられる子が伸びていきます。
机に向かわなくても構いません。
トイレの中でも,
お風呂の中でも,
移動中でもできます。
「今日,何を習ったかな」
と,
自分の頭に問いかける。
そして親は,
「忘れたの?」
ではなく,
「どこまで思い出せるかな?」
と,
少しだけ背中を押す。
忘れたことを責めるより,
思い出そうとする時間を大切にする。
これも,
伸びる子を支える親の関わり方だと思います。
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