前回のコラムでは、小中学生が中国語の検定試験を受けるメリットについてご紹介しました。
今回は、保護者の方からよくいただく、
「YCTとHSK、どちらを受ければいい?」
「何級から受験できる?」
「どのくらい勉強してから受ければいい?」
という疑問について、私なりの考えをご紹介します。
YCTとHSK、何が違う?
まず大きな違いは、YCTは小中学生を主な対象としていることです。
YCT(中小学生漢語試験)は、中国語を母語としない小中学生を対象とした試験で、筆記試験は1級~4級まであります。
一方、HSK(漢語水平考試)は、年齢を問わず幅広い中国語学習者を対象とした試験です。
そのため、小さいお子さんが中国語の検定に初めて挑戦する場合は、YCTのほうが取り組みやすいことが多いです。
一番大きな違いは「必要な語彙量」
YCTとHSKを比べると、初級レベルでも必要な語彙量に違いがあります。
YCTの場合、
- YCT1級:約80語
- YCT2級:約150語
が一つの目安です。公式のYCTでは、1級は約80語、2級は約150語を学習した中小学生が対象とされています。
一方、HSKは2026年からHSK3.0の試行が始まり、大きな変更が進められています。
新HSKでは、これまでのHSKとは語彙量だけでなく、試験の内容や問題形式なども変わっていきます。
簡単に言えば、必要となる語彙量が増え、試験内容もより難しくなっていく方向です。
そのため、これからHSKを受験する場合は、「以前のHSK1級」のイメージだけで考えないほうがいいでしょう。
HSK3.0では、語彙・文法・漢字だけでなく、「どのような場面で、何ができるか」というコミュニケーション能力も重視されています。
※HSK3.0は現在段階的に試行されています。受験する際は、その時点での試験形式を公式サイトや受験する試験会場で確認することをおすすめします。
私がまずおすすめしたいのは「ピンイン」
では、どのくらい中国語を勉強したら、検定試験を考えてもいいのでしょうか?
私が生徒さんにまずおすすめしているのは、ピンインをしっかり勉強することです。
中国語のピンインは、
声母23個+韻母24個+整体認読音節16個=63個
という基本的な体系があります。
b p m f d t n l ɡ k h j q x zh ch sh r z c s
a o e i u ü
ai ei ui ao ou iu ie üe er
an en in un ün
anɡ enɡ inɡ onɡ
zhi chi shi ri zi ci si yi wu yu ye yue yuan yin yun ying
もちろん、ピンインを「見たことがある」というだけでは十分ではありません。
私は、
ピンインを見て、正しく発音できる。
そして、できれば声調も意識して読める。
というところまで身につけてから、検定試験を考えることをおすすめしています。
特に中国語を始めたばかりの子どもの場合、漢字を覚えることに先に目が向きやすいのですが、中国語の音を読めることは、その後の学習にとても大切です。
もう一つの目安は「50語以上」
ピンインに慣れてきたら、もう一つの目安として、50語以上の中国語を身につけているかを見てみます。
例えば、
「こんにちは」你好 nǐ hǎo
「ありがとう」谢谢 xiè xie
「好き」喜欢 xǐ huan
「食べる」吃 chiī
「学校」学校 xué xiào
「家族」 家人 jiā rén
など、基本的な単語を覚えていて、それらを聞いたり、読んだり、簡単な文の中で使ったりできます。
もちろん、50語覚えたら必ず受験できるという意味ではありません。
これはあくまで、私が生徒さんを見るときの一つの目安です。
ピンインを読める+基本的な単語が50語以上ある
このくらいになってくると、「そろそろYCTやHSKを目標にしてみようかな」と考えてもよいと思います。
YCTとHSK、どちらが子どもに向いている?
ここは、年齢だけではなく、その子の学習段階で考えることが大切です。
YCTがおすすめなのはこんな生徒さん
- 小学校低~中学年くらいの子
- 中国語を始めてまだそれほど長くない
- 初めて中国語の検定を受ける
- 楽しく、無理なく検定に挑戦したい
- 身近な単語や表現から少しずつ学びたい
YCTは、小中学生向けに作られているため、内容も比較的シンプルで、子どもが取り組みやすく、楽しみながら学びやすいという特徴があります。
「初めて検定を受ける」という経験を作るには、とても良い試験だと思います。
HSKがおすすめなのはこんな生徒さん
一方で、
- 小学校高学年以上
- ある程度中国語の学習経験がある
- 中国語を長く続けたい
- より実用的な中国語を学びたい
- 将来的にHSKを継続して受験したい
という生徒さんには、HSKも選択肢になります。
HSKは、日常生活だけではなく、学校生活や学習、仕事など、より幅広い場面で使う中国語が扱われます。
また、YCTと比べると、語彙や文法の内容も難しくなってきます。
特に小学校低学年の子にとっては、試験問題の内容そのものが少し難しく感じられることがあります。
そのため、私は小学校高学年以上の生徒さんで、ある程度中国語の基礎ができている場合にはHSKも検討する、という考え方をしています。
「何級から受ければいい?」
これもよく聞かれる質問です。
私は、必ず一番下の級から受ける必要はないと思っています。
例えば、これまでに中国語をしっかり勉強してきた生徒さんなら、初めての受験でもYCT2級や3級を目標にすることができます。
逆に、2年間中国語を勉強していても、レッスン以外で中国語を使う機会が少なければ、基礎をもう一度確認してから受験したほうがいい場合もあります。
大切なのは、
「何年勉強したか」ではなく、「今、何ができるか」
です。
私は、
- ピンインを読めるか
- 基本的な単語をどのくらい知っているか
- 簡単な質問を聞いて理解できるか
- 中国語で簡単に答えられるか
- 知っている単語を使って文を作れるか
などを見ながら、その生徒さんに合ったレベルを考えています。
「どのくらい勉強してから受験したらいい?」
これも「○年勉強したら○級」というように、一律には決められません。
同じ1年間でも、
週1回のレッスンだけなのか、
家でも中国語を勉強しているのか、
中国語を聞く時間があるのか、
中国語を話す機会があるのか、
によって、実際の学習時間は大きく変わります。
そのため私は、学習期間だけではなく、現在の中国語の力を見て受験時期を決めることをおすすめしています。
そして、もう一つ大切なのが、
「試験に向けて勉強する期間」を作ること。
です。
検定を受けると決めたら、そこから必要な単語や文法を確認し、苦手なところを練習していきます。
「○月にYCT2級を受ける!」
と決めるだけで、毎週の学習にも具体的な目標ができます。
私なら、まず「YCT」から考えます
もし小学生のお子さんが、
「中国語の検定を受けてみたい」
と相談してきたら、私はまずYCTを選択肢に入れます。
特に中国語を始めたばかりであれば、
ピンイン → 基本単語 → 簡単な文 → YCT
という流れで進めると、無理なく目標を作りやすいと思います。
そして、中国語の学習が進んできたら、
「次はHSKに挑戦してみよう」
とステップアップしていくのも一つの方法です。
もちろん、最初からHSKを目標にすることが合っている生徒さんもいます。
だからこそ、YCTとHSKのどちらが「上」なのかではなく、今のその子にどちらが合っているのかを考えることが大切です。
次回は、「HSK3.0になって、何が変わったの?」をテーマに、
- これまでのHSKと何が変わった?
- 小中学生は、これからどのように勉強すればいい?
- 今までHSKの勉強をしてきた場合、何を見直せばいい?
など、小中学生の中国語学習という視点から、HSK改革と今後の対策についてご紹介したいと思います。
「これからHSKを受けさせたいけれど、何から始めればいい?」という保護者の方にも、ぜひ読んでいただければと思います。
コメント (0)