■ 3x+2xを,どう計算していますか
高校生の皆さん。
いきなりですが,
3x+2x
を,どのように計算しますか。
「3x たす 2x イコール 5x」
と考えたあなた。
もしかすると,計算に
少し時間がかかっているかもしれません。
途中で符号ミスや書き写しミスをすることも,
少なくないかもしれません。
一方で,
「3 たす 2 で,5x」
と考えたあなた。
かなり速く計算できていると思います。
しかも,あまり計算ミスをしないはずです。
違いは,どこにあるのでしょうか。
前者は,
3x と 2x を,文字まで含めて見ています。
後者は,
x は同じ形だと見て,
係数の 3 と 2 だけを計算しています。
つまり,
3x+2x
で本当に動かしているのは,
x ではありません。
動かしているのは,
前についている数字,つまり係数です。
だから,
3x+2x
=(3+2)x
=5x
と見ればよいのです。
文字はそのまま。
係数だけを見る。
これが,計算を速くする大事な見方です。
■ じょん先生は,式の見方から見る
学校や塾の先生も,
計算が速い先生ほど,
実は係数だけを見て計算していることが多いと思います。
ただ,先生自身にとっては,
それがあまりにも当たり前になっているため,
わざわざ言葉にして教えないことがあります。
3x+2x を見たときに,
「3 たす 2 で,5x」
と見る。
長い式を見たときに,
文字を全部追いかけるのではなく,
同じ形を見つけて,係数だけを見る。
先生自身は,そうやって計算している。
でも,生徒も同じように見ているかどうか。
そこまでは,意外と見られていないことがあります。
じょん先生は,そこを見ます。
答えが合っているかどうかだけではなく,
その子が式のどこを見ているのか。
何を頭の中で処理しているのか。
どこで手が止まるのか。
どこでミスが起きやすいのか。
そこから見ます。
そして,
ここは書いた方がいい。
ここは係数だけを見ればいい。
ここは文字を全部追わなくていい。
というところから教えます。
計算が遅い子は,
努力していないのではありません。
見ている場所が多すぎるだけのことがあります。
まじめに全部書いているのに,
なぜか計算が遅い。
しかも,途中でよく間違える。
一方で,計算の速い子は,
途中式が少ないのに,答えが合っている。
これは,雑に計算しているからではありません。
見ている場所が少ないからです。
見る場所を減らす。
でも,書くべきところは書く。
この切り分けができると,
計算はかなり変わります。
■ 全部展開してから整理しなくてもよい
高校数学では,次のような式がよく出てきます。
(2x³−4x²+3x−1)−(3x³−4x−1)
これを,すべて書き出すと,
(2x³−4x²+3x−1)−(3x³−4x−1)
=2x³−4x²+3x−1−3x³+4x+1
=−x³−4x²+7x
となります。
もちろん,答えは合っています。
でも,毎回すべてを書き出してから
整理していると,
式が長くなるほど時間がかかります。
速く見るなら,係数だけを見ます。
まず,
3x³−4x−1
には,x² の項がありません。
だから,
3x³−4x−1
=3x³+0x²−4x−1
と見ます。
すると,
x³ の係数:2−3=−1
x² の係数:−4−0=−4
x の係数:3−(−4)=7
定数項:−1−(−1)=0
です。
だから,
−x³−4x²+7x
と分かります。
ここで見ているのは,
文字そのものではありません。
見ているのは,
x³ の係数
x² の係数
x の係数
定数項
です。
文字を全部動かさず,
同じ形ごとに係数を見る。
これだけで,かなり計算が整理されます。
■ 省くところと,書くところを分ける
ここで大事なのは,
係数だけを見るというのは,
何でもかんでも頭の中で計算するという意味ではない,
ということです。
かと言って,
すべてを長々と書く必要もありません。
大事なのは,
省いてよいところを省き,書くべきところを書くこと
です。
たとえば,
A=x²+4x−3
B=2x²−x+4
のとき,
A+B+2(A−B)
を計算する問題を考えます。
もちろん,いきなり A や B を代入して
全部展開しても,答えは出せます。
でも,そのまま進めると,
式が長くなり,ミスもしやすくなります。
だから,まず A と B の形のまま整理します。
A+B+2(A−B)
=A+B+2A−2B
=3A−B
ここは,1行だけ途中式を書いた方が安全です。
ここを間違えてしまったら,
あとの努力がすべて無駄になるからです。
その後,
3A−B
=3(x²+4x−3)−(2x²−x+4)
ここからは,係数だけを見ます。
x² の係数は,
3−2=1
x の係数は,
12−(−1)=13
定数項は,
−9−4=−13
だから,
3A−B
=x²+13x−13
となります。
この問題で大事なのは,
最初から最後まで頭の中で処理することではありません。
まず,
A+B+2(A−B)
=3A−B
という形に整理する。
ここは書く。
そのあと,
同じ形の係数を見て計算する。
ここは,全部を書き出さなくてもよい。
ミスしやすいところは書く。
同じ形をまとめるところは,係数だけを見る。
この切り分けができると,
計算は速くなります。
しかも,正確になります。
■ 途中式を書かないことが目的ではない
計算の速い子は,
途中式を書かない子ではありません。
書くべきところを書き,
省いてよいところを省いています。
たとえば,
符号が変わるところ。
かっこの前にマイナスがあるところ。
項が抜けているところ。
式全体の形を整理するところ。
こういうところは,
無理に頭の中で済ませる必要はありません。
むしろ,1行書いた方が安全です。
反対に,
同じ形のものをまとめるだけなら,
文字まで全部追いかける必要はありません。
係数だけを見れば十分です。
つまり,目指すのは,
途中式を全部省く計算
ではありません。
必要なところは書き,
省いてよいところは省く計算
です。
この区別ができているから,
速いのに合っているのです。
■ 高1・高2のうちに身につけたい
この見方は,
高校1年生や高校2年生のうちに身につけておくと,
その後の高校数学でかなり楽になります。
高1で展開や式の整理を学ぶときに,
文字を全部追わない。
同じ形を見つける。
係数だけを見る。
この習慣をつけておく。
それだけで,
計算の負担はかなり減ります。
もちろん,高校3年生にも役立ちます。
ただし,受験期に入ってから急に
今までの計算の型を全部変えるのは,
少し慎重に考えた方がよいと思います。
高3の場合は,
今までのやり方を否定するのではなく,
見直しや確認のための視点として使うのがよいでしょう。
■ 私自身も,いつからそうしていたかは分かりません
正直に言うと,
私自身も,学生時代からいつもそうやって計算していたかどうかは,
はっきり覚えていません。
何せ,家庭教師を始めたのが約30年前です。
たとえば,間違えた問題にしるしをつける
「ふす・ふね・ころも」という方法については,
昔使っていた問題集にその記号が残っています。
ですから,その方法がいつ頃,
自分の中で確立したのかは,
ある程度はっきり分かります。
でも,今回の
「係数だけを見る」
という計算の見方については,
いつからそうしていたのか,はっきり覚えていません。
もしかすると,
学生時代から自然にそうしていたのかもしれません。
あるいは,家庭教師として生徒さんの計算を見るようになってから,
「これは係数だけを見た方が速いな」
と意識するようになったのかもしれません(笑)。
ただ,今ははっきり言えます。
同じ形を見つけて,
係数だけを見る。
この見方があるだけで,
高校数学の計算はかなり楽になります。
■ まとめ
計算は,全部を展開してから整理するだけではありません。
同じ形を見つける。
文字はそのままにする。
係数だけを見る。
そして,ミスしやすいところは書く。
この切り分けができると,
計算は速くなります。
しかも,正確になります。
次回は,この見方をもう一歩進めます。
たすき掛けも,
文字ではなく係数だけで見る。
展開の段階から真ん中の係数を見ることで,
因数分解にもつながる考え方を扱います。