小論文を書く上でとても大切なのが、「ひとつの見方にとらわれず、物事をいろいろな角度から見られること」です。高校受験や大学受験では、小論文で一方的な主張に終始せず、複数の立場から論じられるかどうかが評価されるポイントのひとつになっています。
この記事では、小論文のテーマを多面的にとらえるための思考法と、実際に文章に活かす際の工夫を紹介していきます。
1. 「多角的な視点」ってどういうこと?
「多角的に考える」とは、ひとつの話題をいろいろな立場や方向から見て、深く掘り下げる姿勢のことです。
たとえば、「環境問題」について考えるとき、「自然を守ることの大切さ」だけでなく、「経済活動とのバランス」「政策の実行可能性」「地域ごとの事情」といった別の切り口でも考えることができます。
つまり、単に自分の意見を述べるのではなく、周囲との関係や背景まで見据えて考えることが「多角的視点」につながります。これができると、内容に深みが生まれ、説得力も格段に上がります。
2. 視点を増やすためにできる3つのステップ
2-1. テーマを細かく分けて整理する
まずは、与えられたテーマを「大きなかたまり」でとらえず、要素ごとに分解してみましょう。
たとえば「少子化」なら、
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社会全体への影響(働き手の減少、福祉制度への影響)
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経済に与える変化(消費の減退、税収の減少)
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個人の価値観(結婚や子育てへの意識)
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政策的アプローチ(支援策や法律の変化)
このように細かく見ることで、「どんな方向から論じられるか」が見えやすくなります。
2-2. 両方の立場から考えるクセをつける
自分が「こっちの意見が正しい」と思ったときこそ、反対の立場にも目を向けてみましょう。
たとえば「SNSは若者にとって良いか?」というテーマなら、
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肯定的:情報収集がしやすく、他人とのつながりも広がる
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否定的:依存しやすく、誤情報に惑わされるリスクもある
両側の考えを比べてみることで、主張が偏らず、読み手にも伝わりやすい文章になります。
2-3. いろいろな人の立場に立って考える
「自分だったらこう思う」だけでは視野が狭くなりがちです。自分とは違う立場の人(高齢者、子育て世代、企業側、行政など)だったらどう考えるか?と想像してみましょう。
「この人たちにとってはどんな利点・不安があるのか?」を意識することで、より深みのある論述が可能になります。
3. 多角的な視点を文章に生かすには?
複数の視点を持っていても、うまく伝えられなければ意味がありません。ここでは、多角的な考え方を読み手にわかりやすく届けるための表現の工夫を紹介します。
3-1. 構成をシンプルかつ論理的に
どんな視点から書くにしても、文章の流れが整理されていることが大前提です。
例えば、
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最初にテーマに対する自分の立場を簡潔に表明する
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賛成意見を述べる
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反対意見も紹介する
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両者を比較・検討し、改めて自分の考えを結論として書く
このように段階を踏んで書くと、読みやすく、内容の深さも伝わります。
3-2. 接続語をうまく使って話の流れをつくる
「たしかに」「一方で」「その反面」「また」「だからこそ」などの接続語は、話のつながりをスムーズにするうえでとても重要です。
視点が切り替わるタイミングで適切なつなぎ言葉を使うことで、読者は自然に話の展開を追うことができます。
3-3. 具体的な事例や数値を取り入れる
抽象的な主張ばかりでは説得力に欠けます。できる限り実例や統計を使って裏付けを行いましょう。
たとえば、
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「○○市では子育て支援の結果、出生率が△%上昇した」
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「内閣府の調査によると、SNS利用時間の平均は…」
こうした情報を添えることで、論理性と信頼性がグッと高まります。
3-4. 最後に自分の立場を明確にする
いろいろな視点を紹介した後は、「自分はどう考えるか」をしっかり伝えることが欠かせません。「したがって私は~と考える」とまとめることで、読み手の印象にも残ります。
4. 視点を広げるための日々のトレーニング
4-1. 過去問や模擬問題を活用する
実際の小論文の問題を使って、「このテーマならどんな視点があるか?」と洗い出す練習をしましょう。賛成・反対・第三の立場などを書き出すだけでも、良いトレーニングになります。
4-2. 他の人の意見に触れる
新聞の社説、討論番組、コラムなどに目を通すことで、自分にはなかった視点を得られます。「なるほど、こんな考え方もあるのか」と感じたときはメモしておくと、作文にも活かせます。
4-3. 視点の数は絞って深める
あれもこれもと詰め込みすぎると、話がぼやけてしまいます。限られた文字数の中で伝えるには、「3つ程度の視点に絞って丁寧に掘り下げる」ことを意識しましょう。
5. まとめ
小論文において、「多角的な視点」はとても大きな武器になります。ひとつのテーマをさまざまな側面から見て、異なる立場の意見を理解し、自分なりの意見にまとめる力は、受験だけでなくその先の社会でも求められる力です。
今回ご紹介した考え方や書き方を取り入れていけば、きっと読みごたえのある、説得力のある小論文を書けるようになるはずです。焦らず、じっくり練習を重ねていきましょう。
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