実は面白い小説 for English learners4:The Magic Barber

Aya

遡ることウン十年前、ワタクシはまだ純真ながらも大学生となりました。あまりにも純真?なワタクシを心配した両親は、東京というオソロシイ所でいきなり一人暮らしを始めることは危険と判断し、カトリックの修道院が経営する寮にワタクシを放り込んだのでありました。

…………冗談に聞こえるんですが、実話です。

さて、その寮は長期休みの期間に入ると、情け容赦なく閉鎖されておりました。そうした長期休暇の前の、恒例行事が「掃除」です。自分の個室は自分で掃除して寮母さんの点検を受けるのですが、それ以外の共同施設は、みんなで手分けして掃除をします。相談して2人一組でお風呂などをきれいにするのです。

ある夏休みの前、私はとある先輩と一緒に「トイレA」を掃除することと相成りました。「いつやる?」ということになったのですが、お互い休み前の忙しい身とて、どうも日程が合いません。そこで先輩がひょいと言いました。「じゃあ、やるところお互いに決めておいて、できるときに一人でやっておけばいいよ。私、上(うえ)半分やっておくね。」

はいは~いというわけで、私は自分の休みに、せっせと便器4個&床をみがき上げました。その後、母に電話でそのことを何気なく話した瞬間、母が怒りだしました。

「あんた、トイレの上半分ってどこよ?!」

……………………流し、とか?

「なんであんたはバカなの!!!!!」

……………………???

そうです。トイレの上半分がよくわかりません。それってどこなんでしょう。母は、「うちの娘に何さらしとんじゃ」という感じで、今もその先輩のことを怒っています。私は、なんとなくいつも笑ってしまいます。鮮やかに騙されてしまうと、なんだか怒る気になれません。以来私は、「下(した)半分の女」(肝心な時に騙されるマヌケ)という称号を家族から賜った人生を送っておるわけです。

人をだますのは良くないというのが、世間一般の常識ですし、シャレにならない事件もよく報道されています。人を傷つけてまで得をしようという発想はよくわからないのですが、ま、実際にはけっこういて、だまされる方が悪いんだという人だってそこそこ多い。

一方で、悪い奴を出し抜く爽快感や、悪い奴が逃げ切って自由になるという解放感が味わえる映画や小説もたくさんあります。人間、本当は誰かを出し抜いて、うまいことやってみたいのかもしれない。頭脳戦を勝ち抜き、大金をせしめて日常から脱出したいのかもしれない。ダルい奴を抜き去って、すっきりしたいのかもしれない。

なんてことを考えてみたりします。人間の心は複雑ですね。そんなわけで、今回のお話は、

The Magic Barber

マクミラン(Macmillan Readers)のスターター(一番簡単!)、本文15P、コメディ。英文レベルは中1~2程度。全ページ、絵に説明がついているぐらいの分量なので、とっても楽ちん。マンガを読む気分で楽しめます。

http://www.amazon.co.jp/The-Magic-Barber-Starter-Macmillan/dp/0230035841/ref=tmm_pap_title_0?ie=UTF8&qid=1438610860&sr=8-1-spell

Crosswaysというカッタルイ町の住民は、全員髪が長いんです。あっつい中、全員が真っ黒い(ださい)でっかい帽子をかぶって、カッタルイ生活を送っております。と、ある日そこへ、とんでもなくサイケな頭の、魔法の床屋さんがやってきました。お代は1ドルぽっきり。町はお祭り騒ぎ、全員が帽子をぶん投げて、床屋さんの前に行列を作るのですが………。

簡単な話なので、逆にこの先が紹介できまっせん。この床屋さんが胡散臭いんですが、どこがどう胡散臭いのかは読んでいただくということでお願いします。というかものすごく気になるのは、床屋さんが使う魔法よりも、そのファッションセンスなんでございますよ。表紙だけでも、そのトンデモ頭のセンスはうかがえるってもんです。こんな頭にされちまうんなら、正直1ドルも払いたくないん……ごほごほ。

ま、そこはともかく最後のオチが大好きなので、ぜひぜひ読んでいただきたい一冊です。極端なファンタジーで、普通に考えると「なんじゃこりゃ」で終わってしまう本なのですが、どういうわけか心に残ります。それは、住民たちがどこか不思議な純真さをもっているからかもしれないし、床屋と弟子がなんとなく「かわいげ」を残しているからかもしれません。なにせ詐欺のスケールが小さいので(笑)

この話を紹介するか~と読み直しつつ、「暑い……」と毎日へこたれている私は、「いっそスキンヘッドでもいいんじゃね?」という気分で今日もパソコンの前に座っております。昔の寮にはクーラーなどという贅沢なものは存在せず、全手動式冷却装置(うちわ、ともいう)でがんばっておりました。ああ…暑い。スカイプ通話がつながった瞬間、私がツルツル頭だったり、オレンジ色のモヒカンだったら、生徒さんはどんな反応になるんでしょうか??

专栏文章仅代表作者个人观点,不代表咖啡滔客的立场。

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