二種類の「ワカラナイ」

中村勇太

ヴァイオリンのレッスンの場合、「ワカラナイ」「デキナイ」には2種類あると思っています。

 

ワカラナイ、デキナイなりに間違いを犯しながらでも掴もうとする人。

ワカラナイ、デキナイからどうにかして、と投げ出す人。

 

どちらかは言い方でわかるんですが、後者のニュアンスでこの2つの言葉を口にされるのはあんまり好きではありません。

 

まず「デキナイ」「ワカラナイ」と思ったり、口にしたりすると脳の「どうにか食らいついてみよう」という働きがが止まってしまうと思うからです。

 

そもそも楽器の技術や音楽を楽譜から読むことは、間違いを犯さずに正解をすぐに掴み取れるものでもありません。

 

最近はなんでも検索してほとんどの場合何かしら回答らしきもの(それが根拠があるかは別として)がネット上に溢れています。

 

たとえは良くないかもしれませんが、ゲームをするのに攻略本通りに操作して結果を得るようなことです。

 

それに最近の子供の教育の流れとしては「いかに早く、無駄なく必要な情報を探せるか」が大切になっています。医療現場でも必要とされる能力の一つだそうです。

 

しかしながらそれを音楽の世界に持ち込まれては困ります。

 

なぜなら自分次第、自分のために弾くものだからです。

 

ミスを犯しても、やってみないと始まりません。

やってみてもらわないと、どこからどう伝えていいか、こちらにもとっかかりがありません。

できているか、わかっているかは弾いてみてもらえればすぐ判断がつきます。

そこにどういう提案をするか、がレッスンです。

 

まな板の上の鯛を刺身にするのとはわけが違います苦笑。

 

一番いいレッスンの受け方としては、弾いてみた上で「こうしてみたいけど、うまくいかない。」「こういう方法を考えてみましたけど、どんなもんでしょうか?」というのが「ワカラナイ」「デキナイ」ときの理想だと思います。

 

というのも自分自身ヴァイオリンの練習やレッスンを受けるときに限っては全然手懐けられない曲も「ワカラナイ」「デキナイ」とは思ったことがないからです。もしそう思っていたら何にも弾けなかったでしょう。

 

ワカラナイなりに、デキナイなりにどうしたもんかしら?と考えてレッスンに持って行って初めて教える側にも教わる側にも噛み合う歯車ができると思います。(楽典とかは分かるワカラナイの前に、受け入れるものなので話はまた違いますけれど。)

 

友人のピアニストで生徒が医大生ばっかりの人がいるのですが、話を聞いてみると、生徒さんたちは「あ、こういうことですかね」と要領を得るのが抜群に早いそうです。

 

多分その生徒さんたちも「デキナイ」「ワカラナイ」で頭の中がストップしないで解決法をどんどん試している時間があるからでしょう。

 

もちろん気分が乗らない時には頭の中がもやもやしたりしてうまく考えられないかもしれませんが、心がけるようにしたいものですね。
「ワカラナイ 」「デキナイ」をなくせるようにこの冬も一緒に頑張りましょう^ ^


This column was published by the author in their personal capacity.
The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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