古文において敬語表現は、単なる言葉の使い方だけでなく、文章の意味や人間関係を理解する上で非常に重要な要素です。大学入試の古文問題でも敬語の識別や用法を問う問題は必ずといってよいほど出題され、ここで失点すると得点全体に響くこともあります。
本記事では、古文の敬語表現の基本的な種類や特徴を整理し、受験でよく問われる敬語表現の出題パターンについて具体例を交えて解説します。敬語を正しく理解し、古文読解や文法問題での得点力を上げるための参考にしてください。
1. 古文の敬語表現の基本
古文における敬語は現代日本語と共通する部分も多いですが、独特の用法や語彙も存在します。基本的には以下の三種類に分類されます。
1-1. 尊敬語(そんけいご)
話し手が敬う相手の動作・状態を高めて表現します。相手を立てる言葉です。
代表的な尊敬語動詞
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おはす・おはします(「いる」「行く」「来る」の尊敬語)
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たまふ(「〜なさる」の尊敬語)
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召す(「呼ぶ」「飲む」「乗る」など多義的に使われる尊敬語)
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います・いますかり(「いる」の尊敬語)
尊敬語は主に動詞に付いて使われます。たとえば、「帝がおはす」(帝がいらっしゃる)、「姫君が召す」(姫君が召し上がる)など。
1-2. 謙譲語(けんじょうご)
話し手自身や自分側の人間の動作・状態をへりくだって表現し、相手を立てる言葉です。
代表的な謙譲語動詞
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まうづ(参る、行く・来るの謙譲語)
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まゐる(差し上げる、行く・来るの謙譲語)
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たてまつる(差し上げる・お召しになるの尊敬語にもなる)
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さぶらふ・さうらふ(「あります」「おります」の謙譲語)
謙譲語は自分側の行為を低くし、相手への敬意を示します。
1-3. 丁寧語(ていねいご)
話し手が聞き手に敬意を表すために用いる表現で、現代の「です・ます」に相当します。
代表例
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侍り(さぶらり)・候ふ(さうらう)=「あります」「います」など丁寧に言う語
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なり・たり(助動詞の丁寧語)
丁寧語は文末の形でよく使われ、文章全体を丁寧に響かせます。
2. 敬語の見分け方のポイント
受験で敬語問題に取り組む際、次の点を意識して敬語の種類を判別すると良いでしょう。
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誰の動作か?(話し手側か、相手側か)
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敬意の方向は?(相手や第三者に対してか、自分側をへりくだっているか)
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語の種類は動詞か補助動詞か?
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文脈や主語に合っているか?
この判断を間違えると意味を取り違え、答えを誤る原因になります。
3. 受験での敬語表現の出題パターン
大学入試古文では、敬語は次のような形で頻繁に出題されます。
3-1. 敬語の識別問題
複数の敬語表現が登場し、それぞれの意味・種類(尊敬・謙譲・丁寧)を正確に選択させる問題です。
例)「帝が御覧じたまふ」…「たまふ」は尊敬か謙譲か?
こうした問題は単語の意味だけでなく、文脈から敬意の方向を判断する力が必要です。
3-2. 敬語の訳し方問題
文中の敬語を現代語訳で正しく表現できるか問う問題。例えば、
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「参らせ給ふ」→「差し上げなさる」または「参上する」
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「侍り」→「ございます」
といった具合に、敬語の種類を踏まえて訳す力が問われます。
3-3. 敬語を含む文法問題
敬語を含む動詞の活用や助動詞との組み合わせを問う問題です。特に、「〜たまふ」や「まうす」「たてまつる」など複合的な表現が対象になります。
4. 具体的な敬語表現のポイント整理
4-1. 「たまふ」の使い分け
「たまふ」は尊敬語と謙譲語の両方の意味で使われるため、文脈によって判断が必要です。
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尊敬:「お〜になる」
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謙譲:「〜して差し上げる」
例)「帝が聞こえたまふ」=尊敬語(帝がお聞きになる)
「私が奏したまふ」=謙譲語(私が差し上げる)
4-2. 「まうす」「まうでる」
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「まうす」は「申し上げる」の謙譲語。
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「まうでる」は「参上する」「伺う」の謙譲語。
試験では動詞の活用も確認されやすいので、活用形を正確に覚えておきましょう。
4-3. 「召す」の多義性
「召す」は尊敬語で「お呼びになる」「召し上がる」「お乗りになる」など、多様な意味を持ちます。文脈に応じて訳す練習が必要です。
5. 敬語問題攻略の勉強法
5-1. 基本語彙の暗記
敬語の代表的な動詞や表現は必ず暗記しておきましょう。単語帳や参考書の敬語一覧を活用すると効率的です。
5-2. 文章の主語と敬語の方向を意識
文章の中で誰が動作の主体かを把握し、敬語の方向(尊敬か謙譲か)を判断する練習を繰り返します。問題集の演習が効果的です。
5-3. 過去問や模試での実践演習
実際の入試問題や模試を解き、敬語問題の出題パターンを体感し、正解率を上げましょう。間違えた問題は繰り返し復習が必要です。
6. 敬語が理解できると古文全体の読解力がアップする理由
敬語表現は古文における人物間の上下関係や敬意の有無を示す重要な手がかりです。敬語を正しく読み取ることで、
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登場人物の立場や心情がつかめる
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文の主語や動作の方向が明確になる
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複雑な文章構造を理解しやすくなる
こうした効果があり、敬語がわかるほど古文全体の読解力が格段に上がります。
7. まとめ
古文の敬語表現は、受験で必ず出題される重要分野です。尊敬語・謙譲語・丁寧語の基本を押さえ、代表的な敬語動詞の意味と活用を確実に覚えましょう。また、敬語の方向性や文脈を正しく読み取る力を養うことが得点アップのポイントです。
定期的な問題演習と復習を重ね、敬語問題を得意分野に変えていってください。敬語をマスターすれば、古文の理解が深まり、読解力も大きく伸びます。合格への確かな一歩となるでしょう。
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