「頑張って」だけじゃない。気持ちに寄り添う日本語3選 #1
― まず、相手の気持ちを受け止める ―
誰かが落ち込んでいるとき、悩んでいるとき、何と声をかけますか?
「頑張って!」
「大丈夫だよ!」
もちろん、こういう言葉に救われることもあります。
でも、相手がまだつらい気持ちの中にいるときは、励ます前に、まず「そうだったんだね」と受け止めてもらうだけで、少し楽になることもあります。
今回から、共感したり、励ましたり、そっと応援したりするときに使える日本語を3つずつ紹介します。
今回の3つは、まず相手の話を「受け止める」ときの言葉です。
1. 「それはつらかったですね。」
That must have been hard. / 那一定很難受吧。 / Itu pasti terasa berat.
【使用場面】
嫌なことがあった人、失敗して落ち込んでいる人、つらかった出来事を話してくれた人に。
【ニュアンス】
「大変でしたね」よりも、その人の気持ちのつらさに少し近づく言葉です。
【この言葉について】
つらいときって、自分でも何がつらいのか、うまく言葉にできないことがあります。
そんなときに、誰かから
「それはつらかったですね」
と言ってもらうと、
「ああ、私、つらかったんだな」
と、自分の気持ちが少し見えてくることがあります。
相手がまだ言葉にできていない気持ちを、こちらが少しだけ代わりに言葉にしてあげる感じです。
何かを解決するというより、まず、その気持ちをそのまま受け止める。そんなときに使います。
(Sometimes people cannot clearly put their feelings into words when they are going through something difficult. Hearing someone say, “That must have been hard,” can help them recognize what they have been feeling. The point is not to solve the problem, but simply to acknowledge the feeling first.)
▷ こんなふうに理由を添えても自然です
「それはつらかったですね。話を聞いているだけでも、ずっと気を張っていたのが伝わってきます。」
「それはつらかったと思います。だって、その話をするとき、ずっと言葉を選んでいましたよね。」
【似た表現】
・それはしんどかったですね。
・それは苦しかったですね。
・大変だったんですね。
2. 「そうだったんですね。」
I see, so that’s what happened. / 原來是這樣啊。 / Oh, begitu ya.
【使用場面】
相手が自分のことを話してくれたときに。
まずは「聞いていますよ」と反応するときの言葉です。
【ニュアンス】
すごくシンプルな言葉ですが、意外と大事です。
相手の話に対して、すぐに自分の意見を言ったり、「私も!」と自分の話に変えたりせず、いったん受け取ります。
【この言葉について】
ただ、「そうだったんですね」で終わると、会話もそこで止まってしまいます。
なので、そのあとに、もう一つ質問をしてみます。
「それから、どうしたんですか?」
「そのとき、どんな気持ちでしたか?」
「今はどうですか?」
質問をするのは、詳しい事情を聞き出すためだけではありません。
「もう少し話を聞きたいよ」
「ちゃんとあなたの話に関心を向けているよ」
ということも伝えられます。
悩んでいるときって、自分だけで考えていると、どんどん孤独になってしまうことがあります。
そんなとき、自分の話を聞こうとしてくれる人が一人いるだけでも、少し違うと思います。
(This short phrase shows that you are listening. Instead of immediately giving your opinion, you first receive what the person has told you. If you follow it with a gentle question, you can also show, “I’m interested in what you have to say” and “I’m still here listening.” That can make a person feel a little less alone.)
▷ こんなふうに続けます
「そうだったんですね。それから、どうしたんですか?」
「そうだったんですね。そのときは、どんな気持ちでしたか?」
「そうだったんですね。今はどうですか?」
【似た表現】
・そういうことがあったんですね。
・そんなことがあったんですね。
・なるほど、そうだったんですね。
3. 「わかる気がします。」
I feel like I can understand. / 我想我能理解那種感覺。 / Rasanya saya bisa memahami perasaan itu.
【使用場面】
相手の気持ちに共感するときに。
自分にも似た経験があるときにも使えます。
【ニュアンス】
「わかります」ではなく、「わかる気がします」と言うところがポイントです。
相手が経験したことを、自分も100%わかるとは限りません。
なので、少し余白を残して、
「全部はわからないけど、なんとなくその気持ちはわかるよ」
という感じで使います。
【この言葉について】
つらいときって、
「こんなことで悩んでいるのは自分だけかな」
「こんなふうに思うのはおかしいのかな」
と感じることがあります。
そんなときに、誰かが
「わかる気がします」
と言ってくれると、少しほっとすることがあります。
「あ、自分だけじゃないんだ」
と思えるからです。
もちろん、その一言で問題が解決するわけではありません。
でも、少し肩の力が抜けたり、もう少し話してみようかなと思えたりする。
私は、そういうための言葉だと思っています。
(When people are struggling, they sometimes wonder whether they are the only person who feels that way. Saying “I feel like I can understand” does not mean that you fully understand everything they are going through. It simply tells them that they are not completely alone in that feeling. Sometimes that is enough to help them relax a little and keep talking.)
▷ 自分の経験を添えて
「わかる気がします。私も前に、いろいろなことが重なったとき、何から考えればいいのかわからなくなったことがあります。」
▷ 相手の話を聞いて
「わかる気がします。ずっと気を張っていたら、急に疲れが出ることもありますよね。」
▷ 共通する経験から
「わかる気がします。私も新しい環境に入ったばかりのころは、ちょっとしたことでも不安になっていました。」
【似た表現】
・なんとなく、その気持ちはわかります。
・少しわかるような気がします。
・そう感じるのもわかる気がします。
今回の3つ
「それはつらかったですね。」
→ 相手がまだ言葉にできていない気持ちを、少し言葉にしてあげる。
「そうだったんですね。」
→ まず話を受け取る。そして、もう少し相手に関心を向ける。
「わかる気がします。」
→ 「自分だけじゃない」と感じてもらう。
落ち込んでいる人を見ると、つい元気づけたくなります。
でも、すぐに励まさなくてもいいこともあります。
まずは話を聞く。
気持ちを受け止める。
そのあとで、必要なら一緒に考える。
そんな会話ができる日本語を、これから少しずつ紹介していきます。
次回は、「相手の気持ちを否定しない日本語3選」です。
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