ヴァイオリンは「準備」の楽器

中村勇太

ヴァイオリンは「準備」の楽器。

一つの音を出すために、あるいはメロディを美しく弾くためにどれだけの動作があるでしょうか?

今日は、最低限必要な動作を箇条書きにしてみたいと思います。

 

例えば、いま生徒くんがレッスンで取り組んでいるバッハの「テンポ・ディ・ブーレ」


冒頭の2音にはどんな動作があり、どんな順序で行われるでしょうか?


1.Fの音(1の指)を置く

2.弓の毛を弦に当てる(キャッチ)

3.息を吸いながら弓を動かす(アップ)

4.Fの音程が聴かせられた後でヴィヴラートをかけ始める

5.弓の動きを止める(リリース)ヴィヴラートはまだ止めない

6.移弦(右の腕の角度や肘の高さが変わる)ヴィヴラートがおさまる

 

7.左手が次の音を取る(移弦がある=左肘の角度も変わる)

8.弓の毛を弦に当てる(キャッチ)

9.息を吐きながら弓を動かす(ダウン)

10.音程を聞かせた後でヴィヴラートをかけ始める

11.弓の動きを止める(リリース)ヴィヴラートは止めない

12.移弦(右の腕の角度や肘の高さが変わる)ヴィヴラートがおさまる

 

ここまででまだワンフレーズも終わっていませんが、

一つの音を出すための準備がどれくらい多いかがわかると思います。

 

こんなたくさんのことはできないと思われるかもしれませんが、

これをサボると正確さも、音質も、本番で弾いている時の喜びも、得られません。

 

もちろん、これは練習段階の話ですが、譜読みの時こそ、

どの動作が必要で、どのように順序だてるか考え、

動作を一緒にして問題ないところがあれば連動させて準備時間を短縮します。

 

スムーズに弾くとか、テンポを上げるというのは準備をサボらず、無駄を省き、準備動作に要する時間を短縮することでしか得られません。

 

時間があるとき、改めて頭の中の回路を作り込みましょう。

一つの曲で1回経験すれば、どんどんスムーズに譜読みできるようになりますよ。

 

譜読みはスローモーションになったつもりで!!

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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