無事に到着したのもつかの間、自分には入国審査までの長い道のりを一歩一歩踏みしめながら歩いている余裕などない特殊な事情があった。これは今回の旅が始まるずっと前から危惧していたことである。到着時間だ。
今回の極寒フライト、羽田の到着時間が22:30と予定されていた。僕は普段日本に帰国するときは羽田でも成田でも空港連絡バスを使って地元の町に近い駅までまずは行くようにしている。スーツケースをいくつも抱えながら電車の乗換を何回もしたくないからだ。こういう時「駅近」ならぬ「空港近」な人は良いな、と思う。そうじゃない人のほうが世の中には多いのだろうが。そんな連絡バス、地元まで出ているのものの最終便は23:09発。ほぼ間に合わないことは確実、と思いながらも機内放送では1時間ほど早く到着する、という糠喜びさせることこの上ない情報が流れていたので一抹の希望を胸に抱きながら歩く歩道を駆使して入管まで急いだ。
外国人向けの列を横目で見ながら日本人専用の列に入る。この時ほど日本人でよかったと思う瞬間もない(つかの間すぎか)。この時点で既に22:50は回っていたと思う。前に並ぶ十何人の方々の審査も滞り無く終わり、自分の番だ。やはり問題ない。ただ時間がかかりすぎた。いそいそと通り抜ける。すぐ向こうにある荷物受け取りの場所では既にベルトコンベアー(英語ではCarousel)が動き始め色とりどりのスーツ-ケースが顔を見せている。しかし自分の荷物が出てこない。数分待つ。腕時計に目をやりたいようで実は見たくない複雑な心境だ。やっと出てきた。まるで誰かに奪われるのを防ぐかのような大げさな動きでそれを持ち上げる。税関の列に入る。既に23時を回っていた。
続く
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