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Cafetalk Tutor's Column

Yoshi Sensei 講師のコラム

ネイティブの英語を目指すべきではない理由④

2021年12月26日

 


お疲れ様です、Yoshiです。


今回はネイティブの英語を目指すべきではない理由、4本目のコラムです。


▼▼今までの分はこちら▼▼

ネイティブの英語を目指すべきではない理由①


ネイティブの英語を目指すべきではない理由②


ネイティブの英語を目指すべきではない理由③


第2回と第3回では、英語が世界中に広がりすぎていることがかえってネイティブ英語の必要性を下げている、というお話でしたね。まだ読んでいない方は、ぜひそちらを読んでください。


今回のコラムは今までよりも理論的な解説を多く含みます。しっかりついてきてくださいね。


●●●ネイティブ英語を目指すと起こる精神的な影響●●●


ネイティブ英語を目指すべきではない理由の3つ目は、自信を失いやすいからです。


言語学の研究では、「ネイティブの英語を目指した英語学習では、英語学習者は自分の現在の英語力とネイティブの英語力を比較しがちで、その結果、自分の英語力に対して劣等感を抱きやすい」とされ、この現象は「comparative fallacy」(比較的虚偽)と呼ばれています。


英語学習者はネイティブの英語と比較した上で自分の英語のレベルが充分かどうかを判断しがちで、こうした傾向は英語学習において避けるよう配慮すべきだ、というのが定説です。



そしてもう1つ、言語学の世界から知っておくべき理論を紹介しましょう。それが、「interlangauge theory」(中間言語理論と呼ばれるものです。


この中間言語理論によると、言語学習者が第二言語を習得しようとするとき、その学習者の第二言語のレベルは常に第一言語から目標とする言語のレベルまでのどこかに位置する、とされています。この、現時点での母国語と目標レベルの間に位置する自分の第二言語のことを「中間言語」と呼びます。


英語を勉強する日本人で考えてみましょう。



この場合、第一言語である日本語から徐々に英語のレベルが上がっていき、第二言語としての英語のレベルは少しずつ目標とするレベルに上がっていきます。


英語を学びたての頃は発音もほとんど日本語よりで、単語も簡単なものしか使えません。それが少しずつ発音を矯正したり、高度な文法を身につけることで、目標とするレベルに少しずつ近づいていく、ということですね。


ここで重要なのが、この成長途中で「今の自分の英語力をどう認識するか」ということ。


成長途中の英語力なんですから、目標レベルに届いていない部分があるのは当たり前です。さらに、目標とするレベルに到達するまでにはかなりの時間がかかりますし、英語の学習過程のほとんどにおいて、「目標にまだ届いていない自分」である状態であることもわかります。


しかし、ここで先ほど紹介した「comparative fallacy」(比較的虚偽)が強い場合、「目標レベルに届かない自分=ダメダメな自分」という感覚に陥ってしまうケースが多くなります。


効率よく英語のレベルを高めていきたいなら、こんなふうに後ろ向きな考え方では大損。そうではなく、「自分の英語はまだまだ成長途中なんだ!目標に向かって伸びているんだ!」と、前向きに捉えることが望ましいとされています。


●●●そもそも達成可能なのか、という問題も●●●


多くの研究により、英語学習者がネイティブレベルの英語力を身につけることは大変難しく、ほとんど不可能であるという結論が出ています。よって、「ネイティブ英語 ≒ ほぼ達成不可能」であるならば、「ネイティブ英語を目指す英語学習 ≒ ほぼ達成不可能なことを目指す英語学習」となります。


達成不可能な目標に向かって英語の勉強を続けても、いつまで経ってもその目標は達成されることがありません。それどころか、「ネイティブの英語が話せない自分はまだ努力が足りない」といううしろむきな思考を持ちやすく、自分の話す英語に対して自信を持つこともできません。そしていつか、「もう私はだめだ、英語ができないんだ」と英語学習を諦めてしまう・・・


この理論、ほとんどの日本人が英語に自信がない現象を説明していると思いませんか?現役教員時代、「英語に自信がない人?」と聞くと、ほとんど生徒全員の手が上がったんですよね・・・衝撃的でした。


日本で日常的に英語を使う機会がないと、英語に自信を持つのは難しいかもしれません。しかし、それでも「私の英語はダメダメで・・・」と謙遜する必要は全くありません。それどころか、「私は英語が必要ない日本にいるのに毎日英語を頑張って勉強しているんだ!えらい!」と、むしろ誇りに思っていいでしょう。


●●●終わりに●●●


英検が何級だとか、TOEICが何点だとか、日本でしか通用しない数字は気にする必要ありません(そもそもTOEICが日本発祥の試験だと知ってましたか?)。海外に出て外国の方といざ英語で話すとなったとき、日本でせっせとこしらえた「英検の鎧」「TOEICの鎧」は全く役に立ちません。話し相手はあなたの英検のスコアなんて1ミリも気にしません。英語がその場で使えるかどうか、その一点が勝負です。


もちろん、「それでも私はネイティブみたいな英語を話したいんだ!」と思って勉強するのも悪いことではありません。ただし、言語学の世界ではその考え方は否定されつつあることも知っておいてくださいね。


次回、もう少し続きます。


それでは。


本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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