バイオリンを楽しむヒント〜音と音の間に…

中村勇太

たまにポジション移動したくないと言う子がいます。

 

もちろんポジション移動しなくて良い時もあります。ポジション移動しなくても様式が体現できる曲もあります。

 

しかし、同じ音程でも、全く違って聴こえます。

なぜでしょうか?

 

動画を見ながら確認していただきたいと思います。

 

例としてあげるのは、ラフマニノフのチェロソナタ第三楽章です。

 

まず、A。

すべてファーストポジションです。

 

次にB。

個人的に今の時点で選んでいるポジション移動を含むフィンガリングです。

 

そしてC。

運指はBと同じですが、ちょっと違う。

 

違いがわかった方は、音と音の間の関係に気づかれましたか?

 

ヴァイオリンの弦はある意味、喉と同じようなもので、震える弦の長さで緊張感、テンションが変わります。
同じ弦の上で音程が変わると言うのはこの緊張感、テンションです。

 

Aは「BBBB~E♭E♭〜B~」の音同士の関係性を無視しています。

Bは音同士の関係性を再現しています。

Cは、スローモーションでご覧いただいて分かるように、
一瞬弦から指がすべて離れた状態があり、緊張感、テンションの変化を0にリセットしてしまって、
音と音の間の関係性を壊しています。

 

音がどういうエネルギーを持ってどこに向かっているのか(音のベクトル)を再現しないことには、
音程やリズム、拍子、イントネーションが合っていたとしてもこれだけの差が生まれてきます。

 

これをどうやって身につけるか、と言えば楽譜を読む基本ルールの階層的な理解と
ヴァイオリンの仕組みの合理的な理解が必要です。

どちらも経験ですが、課題、教材として取り組む曲で心掛けていかないと身につきません。

 

指番号がそうなっていたから〜というのは理解になっていない状態で、
「なぜ校訂者がそういう指番号を選択したのか」を考えてみないといけません。

 

ポジション移動や指の選択には基本と例外とコツと…それらの優先度の選択、
あるいは演奏する環境などによって取捨選択も生まれてきます。

 

絶対にこうだ、と思い込まずに「よりよい方法を常に探す」ことを忘れずに取り組めば、
時間がかかってもきっと実り方が変わってくると思います。

 

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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