「漢文を読むのに時間がかかってしまう」「設問を解く前に時間切れになる」――そんな悩みを抱えている高校生は少なくありません。特に共通テストや模試では、漢文にかけられる時間は10分程度。のんびり訳している時間はないのが現実です。
ではどうすれば短時間で正確に読み解けるようになるのでしょうか?
そのカギを握るのが「文章の型(パターン)」の理解です。
漢文には繰り返し使われる構文や展開のパターンがあります。これらを事前に覚えておけば、文章を一から訳さなくても「大まかな流れ」や「筆者の意図」がすぐに見えてくるようになります。
今回は、試験時間を有効に使うための“漢文パターン読解術”をご紹介します。
文章パターンを知ることで得られるメリットとは?
漢文に慣れていないと、「毎回違う内容の文章が出てくる」と感じるかもしれません。ですが、実際には登場する話のパターンや表現には“お約束”のようなものがあります。
たとえば、「昔の偉人の話」「正しい生き方を語る文章」「教訓を含む小話」など、よくある構成や決まった展開が多数存在しています。こうした型を知っていれば、見慣れない単語や構文が出てきても、全体の意味を予測しやすくなるのです。
英語の定型文や、古文の助動詞の識別と同じように、漢文にも「テンプレート的な読み方」が存在するというわけです。
覚えておきたい!漢文の代表的なパターン5選
ここからは、入試や模試でよく登場する文章パターンを5つ取り上げ、それぞれの特徴と攻略のコツを紹介していきます。
1. 人物エピソード型(説話風)
よくある流れ:
昔の人物が登場 → ある体験をする → そこから何かを学ぶ・教訓を得る
例文:
昔者、曾子耕於野。有人見之曰、「是賢人也。」曾子聞之而不応。
ポイント:
人物の行動とその背景に注目しましょう。多くの場合、「なぜそのように行動したのか?」が設問で問われます。文章の冒頭に「昔者」や「或人」などが見えたらこのパターンを疑ってください。
2. 対比型(賢者と愚者など)
よくある流れ:
知恵ある人とそうでない人の行動や思考を対比 → 正しい行いを導き出す
例文:
君子慎独、小人隠悪。故君子得道、小人失義。
ポイント:
「君子」「小人」という単語が出てきたら要チェック。対照的な考え方や行動を示すことで、作者が伝えたい価値観を浮き彫りにしています。2つの立場を整理して読み進めることが大切です。
3. 引用+論評型
よくある流れ:
昔の偉人の言葉を引用 → 現代への教訓として解釈・評価
例文:
孔子曰、「君子和而不同。」今人反是、惑也。
ポイント:
「曰」「云」などが出てきたら、そこから先は引用部分。そこに対して「今」「夫」「余」などの語で筆者の考えが示されます。引用と筆者の意見の境界を意識して読むと、要点が把握しやすくなります。
4. 理由・原因説明型
よくある流れ:
ある現象が提示される → その原因や理由が語られる
例文:
人皆欲安、而不能得者、蓋不知節欲也。
ポイント:
「なぜそうなるのか?」という問いに答える構成です。「蓋」「所以」「由是」「故」などの語に注意しましょう。設問では「理由として最も適切なのは?」という選択肢が頻出します。
5. 反語・問題提起型
よくある流れ:
一般常識を疑う形で問いを投げかける → その裏に真の主張を込める
例文:
為人子而不孝、豈人哉。
ポイント:
反語は一見疑問形に見えますが、実は強い否定や批判の意図があります。「豈」「安」「何」などを含む文は、「本当にそうだろうか?」という筆者の皮肉や問題意識を表していることが多いです。
型と語彙はセットで覚えると効果倍増
文章パターンを理解するうえで大切なのは、単に「流れを知る」だけでなく、そのパターンで使われやすい語句も一緒に覚えることです。
たとえば「対比型」なら、「君子」「小人」「善」「悪」「是」「非」などが頻出語。「引用型」では、「曰」「云」「今」「余」「夫」などがセットになります。
効果的な覚え方の例:
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パターンごとに例文とキーワードをノートにまとめる
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1つの型に対して「この語が出てきたらこの型かも」と意識する
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過去問を読んだ後、「この文章は何型だったか?」を振り返る習慣をつける
このような学習方法を続けることで、パターンと語彙が自然に結びついていきます。
終わりに:漢文は“型”を知れば得点源になる!
漢文は「暗記科目」ではなく、「構造を理解する科目」です。文章のパターンを押さえておけば、読解のスピードが劇的に上がり、設問に取りかかる余裕も生まれます。
特に共通テストでは、短時間で正確に読み取るスキルが求められるため、型の理解が得点に直結します。
「何を言っているかわからない」から「たぶんこういう展開だな」と読めるようになることで、漢文がグッと身近なものになります。ぜひ日々の学習に、パターン別読解法を取り入れてみてください。
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