
先日、フランスの新聞を読んでいて、Gibert に関する記事に出会いました。
URLはこちらです:
Les librairies Gibert misent sur l'occasion, face à la baisse des ventes de livres – franceinfo
パリの老舗書店グループ Gibert が、新書の売上減少に耐えられず、これからは古本に軸足を移していくという 内容でした。
記事には、コロナ後にサン=ミッシェル地区の4店舗を閉店したことも書かれていて、その一文を読んだ瞬 間、胸の奥にしまっていた風景がふっと立ち上がりました。
サン=ミッシェル広場の黄色い看板、Gibert Jeune。 セーヌ川のすぐ横にあって、ふらりと立ち寄るにはちょうどいい距離感の本屋さん。
あの店が閉店したと知ったとき、「嘘でしょ!」と声に出してしまったほど驚いたのを覚えています。
私にとって Quartier Latin は、パリの中でも特別な場所でした。
大通りを上がれば左手に Paris IV、さらに進めばパンテオン。少し歩けばリュクサンブール公園の緑が広がり、 サン・ミッシェルからセーヌを渡れば、シテ島――パリの中心です。
Tシャツにジーンズ姿の私は、シャンゼリゼよりもこの界隈を“出発点”にして歩き回っていました。
あの場所に行けば、いつでも馴染みの何かに出会えるような気がしていた時代です。
創業者 Joseph が1886年に始めたのは、もともと小さな古本屋だったそうです。
時代が巡り、今また Gibert が“古本”に未来を託すことになるなんて、誰が予想したでしょう。
紙の手触りから、指先でボタンをなぞるデジタルへ ― 本の世界も静かに形を変えています。
Galeries Lafayette 近くの Gibert も閉店し、残るのは rue de Rennes の店舗だけになりました。
どうか、あの店はこれからも続いてほしいと願っています。
店は閉じ、黄色い看板は消えてしまいました。けれど、私の記憶の中のサン=ミッシェルは、いつも同じ光の 色をしています。
変わっていく街を前にしても、記憶の中の風景は、静かに、確かに、そこに残り続けるのだと思います。