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Cafetalk Tutor's Column

kuro 講師のコラム

もうひとつの「語彙力」

2018年8月6日

「語彙力」というと「知らない言葉を覚えること」というイメージが強いです。ただ、もう一つ大事な「語彙力」があります。それは、

すでに無意識的に使っている言葉を「意識化」すること

です。

小学生の国語の読解問題で、「本文の内容に合うように言葉を補う問題」があります。たとえばこんな文の空欄には、何が入るでしょうか。

子どもの歩くのが遅かったのは、自分の足の大きさに(   )靴をはいていたからである。

これなら本文を読まなくても分かると思いますが、答えは「合わない」です。

これが「本文中から抜き出しなさい」であれば、本文を探せばいいわけです。抜き出し問題は、本文の文脈をたどっていく練習になります。
しかし、一段難しいのは「(考えて)書きなさい」という問題です。これは、自分の語彙力が試さます

ある小学生の生徒はこれに悩んでいました。

「う〜ん・・・」

そこでヒントを出します。

「問1は、正解だったよね。『正解だった』を別の言葉に直してみよう」「あ、『合ってた』?」
「そうそう、この言葉を使えないかな?」
「そうか、『合わない』か!」

答えが出ました。「合わない」という言葉はもともとご本人の知っている言葉ですが、この一連の作業によって、「合う」という言葉の意味と使い方を意識化できたことになります。

そこから「合う」と「会う」の違いにつなげたり、「協力し合う」などといった「合う」を使った言葉について、さらに深い理解が得られます。

今回は小学生の例でしたが、中学高校の勉強でも基本は同じ。

英単語を学ぶ上でも、たとえばgiveは「与える」というだけでなく、「ぱっと手を離す」というコアイメージがあるから「give up」につながるのだ、という風に、理解を深めることができます。

古文単語においても同様です。「じ」「まじ」はどちらも打ち消し推量の意味を持つが、「まじ」のほうがより意味が強い。それは、「許さじ」と「許すまじ」を比べてみれば、現代の高校生でも容易に理解できます。「許すまじ」は聞いたことがある人が多いですからね。

こういった無意識的に使っている言葉を「意識化」することが、あらゆる言語学習において重要な要素になってきます。

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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