感覚と言葉

中村勇太

ヴァイオリンを「持つ」、弓を「持つ」。

よく耳にする表現です。

 

確かに、見た姿は「持っている」と言えます。

しかし、持っている本人が「持っている」感覚かと言えば、正確な言葉とは思えないです。

 

例えば、どんな表現があるか、感覚をもとに書き出してみます。

 

・載る

・載せる

・支える

・バランスを取る

・はめる

・はまる

・添える

・添う

・置く

・つまむ

・ひっかかる

・ひっかける

・押し上げる

・入る

・入れる

・当たる

・当てる

・(重さを)感じる

・(手の上に)落とす

 

 など。

 

左手の指を弦の上に置く時も似たことが言えます。

多くの人は「押さえる」と言います。

この表現は本当に良くないと思います。

スイッチではないのです・・・

 

・載せる

・締める

・締め上げる

・緊張させる

・沈める

・沈む

・当たる

・当てる

・(振動を)感じる

・(弦が)食い込む

・(弦を)食い込ませる

 など。

 

自分の感覚をそのまま他人に移植することはできません。

それに、結果的に見本と同じ動作、同じ音、が出るようになったとしても、
内側の感覚、感じ方が全く同じかと言えば、それを証明することはとても困難です。

 

しかし、どんな感覚であれ、本人のボキャブラリーを尽くすとある程度言葉にできると思います。

1つの言葉で同じ感覚が伝わると考えるのは間違いです。

 

感覚は、誤解を招かない、解釈が限られる正確な伝え方というのが本当に難しいものです。
数学の式や法律用語のようにいきません。

 

毎回のお稽古の中で、大事な言葉は都度、印象に残ります。

その1回の言葉だけを信じていくと、全然違う道を進んでしまうことが結構多いのです。

なので、毎週お稽古があり、
1週間でその言葉の結果どうなっているか、を診て修正したり、
より深める言葉を選んでいきます。

 

くれぐれも「持つ」、「押さえる」という大枠の表現には気をつけたいと思います。

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

コメント (0)

ログインして、コメント投稿 ログイン »
Premium ribbon

出身国:

居住国:

教えるカテゴリ

講師の言語

日本語   ネイティブ

中村勇太講師の人気コラム

  • バイオリン

    しわシワ皺

    ヴァイオリンは歳をとると皺ができます。(量産品でもいいニスを利用しているとできるようです) ニスは何度も塗り重ねられているので、それぞれのニスが湿度や温度で伸び縮みして皺になります。 これをニス...

    中村勇太

    中村勇太

    0
    8659
    2015年2月26日
  • バイオリン

    早朝夜中の練習方法

    ヴァイオリンは音域が高いため、どうしても近隣の耳に障ってしまいがち。 チェロは音域が低いので意外や意外、近所、隣室に聞こえにくいです。 サイレントヴァイオリンや、胴がないミュートヴァイオリンもあ...

    中村勇太

    中村勇太

    0
    8443
    2015年9月3日
  • バイオリン

    才能ってなんだろう?

    児童館の0歳時サークルや子ども園の子育て支援のコンサートでよく尋ねられます。 楽器に向き不向きはありますか?楽器の習い事(稽古事)はどう選ぶんですか?、何歳から始めますか?才能は関係ありますか? ...

    中村勇太

    中村勇太

    1
    8380
    2015年3月9日
  • バイオリン

    もしも魂柱が倒れたら

    弦交換の時に全弦を緩めるのはもってのほかですが、駒が歪んでいたり、駒の脚が曲がっていたりすると案外倒れてしまうもの。 日頃の調弦後の角度チェック、夏の除湿剤は欠かせません。 駒が倒れた時、そのシ...

    中村勇太

    中村勇太

    0
    8139
    2015年10月20日
« 全講師コラム一覧へ戻る

お気軽にご質問ください!