Cafetalkに講師登録をさせていただいてから1年余り経って、初めて講師ランキングに入れていただくことができました。私は20年以上日本国内・国外のさまざまな教育機関で教えてきましたが、Cafetalkの講師として教えたことはこれまでの経験とは全く違ったチャレンジングな経験でした。この機会に、1年と少しのオンライン日本語教師の経験について振り返り、オンライン日本語教師の役割について、またオンラインでの語学教育サービスについて改めて考えたことを共有したいと思います。
教育機関に属して教える働き方との大きな違いは、私のレッスンが唯一の商品で、それに対して生徒様にお金をお支払いいただいているという点です。留学生が日本語学校に支払う学費には授業料だけでなく日本での生活のサポートや進学のための指導やサポート、学校行事などのさまざまな体験に対する料金が含まれています。また大学の学費は学位を取得するための費用と理解されており、私の授業に対して支払っている認識は薄いと思います。それに対して、Cafetalkでは1回1回の私のレッスンに対して直接お支払いいただくことになります。
これは大変シビアな世界です。レッスンをリクエストしていただいた生徒様と一期一会の出会いとなるかもしれない中で、どうすれば満足していただけるサービスが提供できるか、非常に悩みました。
また、教育機関では教師主導で教育サービスを提供するのに対して、オンラインでは完全に学習者主導のサービス消費であるという点にも戸惑いました。一般に日本語教育では、コースが始まる前に、ニーズ調査、レディネス調査などを行い、学習者のレベルと目的に合わせてカリキュラムをデザインします。教育機関に入学する人は教師に教育を委託する形になり、教師のデザインしたカリキュラムに従って学ぶことが求められます。それに対して、オンラインで学ぶ学習者は自分の目的に合わせてレッスンを選択し、自分自身で学習を管理します。そこで教師に求められることは、学習者が消費しやすいコンテンツを提供することであり、学習過程をデザインすることではありません。
教育機関で教えることに慣れている私はどうしても学習者のニーズを聞き取ることから始めようとしてしまいますが、学習者の立場からすると、オンライン日本語教師にニーズや目的を言語化して伝える必要性を感じないかもしれません。それらは学習を管理する自分自身が知っていればよいからです。学習者が自分自身の責任においてコンテンツを消費しているのであって、教師の側がおせっかいをしなくてもよいということだと今は理解しています。
その分、オンライン日本語教師は学習者に伝わりやすく、利用しやすいコンテンツを用意する必要があります。この点はまだまだ私は勉強不足ですが、学習者が目的に合わせて選びやすいようなサムネや説明文を工夫したり、コンテンツの特徴を際立たせるためのさまざまな手法があると思います。この点は商品開発やマーケティングの仕事に似ていますね。そして、商品ラインナップをそろえたら、市場に露出し、たくさんの方に消費してもらう中で商品に磨きをかける、一部の方には合わないかもしれませんが、ファンになっていただける方も出てくる、こういう世界かなと考えています。
オンライン日本語教師としてのこれまでの試行錯誤の中から、教育機関での教え方がそのまま通用するものではないことに気づきました。近年、生成AIの発達などにより、学習者自身が個別の目的に合わせて語学学習を行える環境が整ってきました。そのため、教育機関での一斉授業が非効率に感じられるのか、大学で外国語を履修する人が減っている現状があります。それでも私は日本語教育の専門性が必要なくなったわけではないと思います。語学学習市場のニーズを捉えて魅力的な教育コンテンツを開発したり、提供したりするためには高い専門性が必要だと思います。私にとってはオンライン日本語教師の経験が、これからの時代が求める語学教育サービスについて考えるきっかけになりました。理想的な一つの答えがあるわけではないと思いますが、自分の慣れたやり方に固執せずに、求められるサービスの形を探し続けることが大切だと思っています。
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