オックンは彼女とよく話していた。
幼馴染なのだから、それは当然のことだった。
けれど、不思議なことに、ユミチャとオックンが話しているところを見た記憶はない。
彼女とユミチャはどちらもバスケ部で活発だったけれど、
彼女の方がどこか男勝りな一面があって、負けず嫌いなところが強かった。
その性格が、オックンにとって話しやすさを感じさせていたのかもしれない。
そんな彼女が、ある日、腕を骨折してギプスをつけて学校にやって来た。
バスケの試合中に怪我をしたらしい。
クラスのみんなが心配そうに声をかける中、
彼女はいつものような笑顔を浮かべて、ケロッとしていた。
さらに驚いたのは、その後だった。
教室の片隅で、彼女が片手だけで側転をやってのけたのだ。
片腕がギプスで固定されているのに、もう片方の腕だけで軽々と回転して見せた。
僕はその瞬間、言葉を失った。
目の前で繰り広げられる信じられない光景に、ただポカンと口を開けていた。
「どうしてそんなことができるんだ……?」
そんな疑問が頭をよぎったが、彼女の底知れないパワーには、到底かなわない気がした。
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