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幽霊小説を読もう! 新しいレッスンのご紹介

Aya


 思い起こせば高校時代。私は図書局員でして、ほぼ毎日、校舎4階の図書室に入り込んでは片っ端から本を読み、3年生になればカウンターに陣取って、貸し出し業務をやりながら受験勉強をやっとったもんです。
 その時期、多分顧問の英語の先生のチョイスだと思うんですが、唐突にカウンター横の新刊のとこにラヴクラフト全集が出没しまして、私は狂喜して勉強ほっぽって読みまくってました。なんなんでしょうね、あの、今思うと実体のよくわからん恐怖小説。出てくるのがタコっぽかったりカエルっぽかったりして、「なんやろな……」と思った記憶が蘇ってきます。宇宙のかなたにいる、あるいは原初から地球の奥で眠る、人間の存在を越えたスケールのでかい恐怖は、なんかどうもヌメっとしているというか、ぶっちゃけそこまで怖くないというか。 でも、家そのものが変質して手に負えないものになっていく恐怖とか、何に取り込まれているのかわからないままに自分の魂そのものが腐っていく感触とか、そういうのはやっぱりゾワゾワしていました。
 てなわけで、小学校の頃から図書室にこもってホームズ全集とクリスティー全集とSF全集と江戸川乱歩全集と……と読んでいた身としては、それは「怖いものを演出する技術」の一分野として確固たる地位を私のシュミの一角に築いたのでした。
 実は恐怖というのは人生の中で重要な感情であると思います。それは新しい物事に挑戦するとき、よくわからないものに対峙するとき、嫌な出来事に対処しなければならないとき、常に私たちのそばにいます。油断すれば襲われる。だからこそ、私たちは恐怖小説などで「恐怖に触れる練習」をしているのかもしれません。
 昨今はホラーがブームになってますし、貞子もだいぶ人間ができてしまっておりますが、私は以前から、「恐怖を描く」ことの原点ってなんだろうということに興味がありました。とりわけイギリス・アメリカ文学における恐怖小説・幽霊小説の系譜が大好きです。新しいものを追うよりも古いものを遡りたいという変な興味は、もはや人生の一部として諦めるほかはないのでは?と思っています。
 てなわけで、どうせなら誰かとこのシュミを分かち合いたいという動機もあって、新しいレッスンを作りました。英語を読むのは大変という方でも、翻訳されたものを片手に英語に挑戦するのもいいかもしれません。英語が難しい……という「恐怖」なんか大したことないと思わせてくれる、本物の恐怖を一緒に探してみませんか? シュミに走った小説を読むのは、その言語を母語とする人を恋人にすることの次くらいには、上達に役だつのでは? 恐怖小説を嬉々として読む同志が多いかどうかは別として……。
 
 次回から、気が向いた順番に私の好きな恐怖小説・幽霊小説を紹介していこうと思います。でもロマンス小説も大大大好きなので、そっちについてもいずれ。

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本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
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