香水などで、トップノートとかミドルノートとかベースノートっていう言葉を聞いたことがあると思います。
音や音色、音符のことを英語でノートと言いますが、G. W. Septimus Piesse(ピエス)が、19世紀半ばに“香り”を音階(ド・レ・ミ…)になぞらえた「香階(ガモット・オヴ・オーダーズ/The Gamut of Odours)」を発表したことから、香りを階層に分けて分類する際にノートと呼ぶようになったようです。
音楽を嗜んできた私としては、とても興味深いです。
音楽だと、トップノートが高音で、軽やかで明るいイメージ、ミドルノートは中音で調和とあたたかみのイメージ、ベースノートは低音で、深みと安定感のあるイメージ。
精油だと、柑橘系やユーカリやミントがトップノートで、ローズやラベンダーやネロリやカモミールなどお花系がミドルノート、サンダルウッドやフランキンセンスなどの樹木や樹脂、ベチバーなどがベースノートに分類されます。
トップノートが、最初に鮮やかに香ってすぐに消え、入れ代わるようにミドルノートが香りたち、ベースノートが最後まで長く残って香るので、ブレンド精油や香水などは時々刻々と香りの特徴が移り変わっていくのです。
この香りの「高音・中音・低音(トップ・ミドル・ベース)」を調和的に組み合わせることで、心地よい香りが生まれるわけですね。
下記にピエスの香階を書き出して、日本語訳をつけたものを作ってみました。
今は手に入らない精油や香料なども多いのですが、音楽の和音と同じようにたとえば高音のドと中音や低音のド、和音にした時に不協和音にならないドミソとか、ドファラとかシレソとかの音名の隣にある香りの名前を見てみると、同じように香りも調和するようになっているんです。
《音名・階名》
C ド・D レ・E ミ・F ファ・Gソ・A ラ・B シ
★真ん中のド ☆ド
↑《高音》
F Civet(シベット)
E Verbena(ベルベーヌ/レモンバーベナ)
D Citronella(シトロネラ)
☆ C Pineapple(パイナップル)
B Peppermint(ペパーミント)
A Lavender(ラベンダー)
G Magnolia(マグノリア/モクレン)
F Ambergris(アンバーグリス/竜涎香)
E Cedrat(セドラ/セドラシトロン)
D Bergamot(ベルガモット)
☆ C Jasmine(ジャスミン)
B Mint(ミント)
A Tonquin bean(トンキン豆)
G Syringa(シリンガ/ライラック)
F Jonquil(ジョンキル/水仙)
E Portugal(ポルトガル/オレンジ)
D Almond(アーモンド)
☆ C Camphor(カンフル/樟脳)
B Southernwood(サザンウッド/アニスソウ)
A New-mown Hay(新刈り干し草)
G Orange Flower(オレンジフラワー/ネロリ)
F Tuberose(チューベローズ/月下香)
E Acacia(アカシア)
D Violet(スミレ)
★ C Rose(ローズ/バラ)
B Cinnamon(シナモン)
A Tolu(トルー/トルバルサム)
G Sweet Pea(スイートピー)
F Musk(ムスク)
E Orris(オリス/イリス)
D Heliotrope(ヘリオトロープ/ニオイタチアオイ)
☆ C Geranium(ゼラニウム)
B Stocks and Pinks(ストック/ナデシコ)
A Peru Balsam(ペルーバルサム)
G Pergaloria(パーガロリア/香料名)
F Castor(キャスター/ヒマシ油)
E Calamus(カラマス/アクアラス)
D Clematis(クレマチス)
☆ C Santal(サンタル/白檀)
B Clove(クローブ)
A Storax(ストラックス/安息香)
G Frangipani(フランジパニ/プルメリア)
F Benzoin(ベンゾイン/安息香樹脂)
E Wallflower(ワールフラワー/カタバミ)
D Vanilla(バニラ)
☆ C Patchouli(パチョリ/香料名)
↓《低音》
ここから、現在、手に入る可能性がある天然の精油、アブソリュート、レジノイドだけに絞ってみると…こんな感じ ↓
音/原名(Piesse)/入手可能な現代精油・天然香料([ ]内)
E Verbena[レモンバーベナ]
D Citronella[シトロネラ]
B Peppermint[ペパーミント]
A Lavender[ラベンダー(真正ラベンダー)]
G Magnolia[マグノリア(フラワーまたはリーフ精油)]
E Cedrat[シトロン(Citrus medica)]
D Bergamot[ベルガモット]
C Jasmine[ジャスミン・アブソリュート]
B Mint[スペアミントまたはペパーミント]
A Tonquin bean[トンカビーンズ・アブソリュート]
F Jonquil[ナルシス(ジョンクィル)アブソリュート]
E Portugal[オレンジ・スウィート]
D Almond[ビターアーモンド精油]
C Camphor[カンファー(ホワイトカンファー)]
B Southernwood[サザンウッド(アルテミシア・アブロタヌム)]
G Orange Flower[ネロリ(オレンジフラワー精油)]
F Tuberose[チュベローズ・アブソリュート]
E Acacia[ミモザ・アブソリュート]
D Violet(※リーフ)[スミレリーフ・アブソリュート]
C Rose[ローズ・オットーまたはローズ・アブソリュート]
B Cinnamon[シナモンバークまたはシナモンリーフ]
A Tolu[トルーバルサム]
F Musk substitute[アンブレットシード(植物性ムスク)]
E Orris[オリスルート(アイリス)]
C Geranium[ゼラニウム(ブルボンまたはローズ)]
A Peru Balsam[ペルーバルサム]
E Calamus[カラムス(ショウブ根)]
C Santal[サンダルウッド(インド/オーストラリア)]
B Clove[クローブバッド]
A Storax[スチラックス・レジノイド]
G Frangipani[プルメリア(フランジパニ・アブソリュート)]
F Benzoin[ベンゾイン・レジノイド]
D Vanilla[バニラ・アブソリュート]
C Patchouli[パチュリ]
たとえば、オクターブでドを重ねてみると…
パチュリ、サンダルウッド、ゼラニウム、カンファー、ローズ、ジャスミン
めちゃめちゃフローラルでゴージャスない香りがイメージできますよね。
これで香水を作ったら素敵!
香水の名前は「C(ツェー)」かな。
「ド・ミ・ソ」で、ローズ、スウィートオレンジ、ネロリとか、「シ・レ・ソ」で、ネロリ、ベルガモット、ミントとか。
私はメディカルアロマなので、精油の薬理作用からブレンドを決めるのですが、もちろん使う方が「いい香り!」と感じないことには効果は得られないので、もちろん香りの調和も大切にしています。
入れたい薬理作用を持つ精油を選んだ時に、うまくトップ、ミドル、ベースとノートがバランスよく入ると嬉しくなります☆
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