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【仏語講師の裏話】人間は母語を話す機会が少なくなると母語を忘れたり、レベルが落ちたりするのか?

Aug 23, 2018

よく海外に住んでいたり、留学で一定期間海外に行き日本語を話さなくなると「日本語のレベルが落ちた」とか「日本語忘れちゃった」などの冗談をいう人がいる。

 

しかし、あれは本当に冗談で済む話なのだろうか?

 

僕は2回海外に長期滞在し、日本語をほとんど話さない経験をした。

 

1回目は大学3年生(21歳)から大学4年生(22歳)のときの1年間、フランスに留学した。僕の留学先の大学には日本人が1人もいなかったので日本人と日本語を話す機会はほとんどなかった。ただ、寮の同じ階にいた韓国人の女の子が日本語を話せたので彼女とたまに会ったときに日本語を話した。

 

また、いつも一緒にいた友人の1人だったイタリア人の女の子も日本語が話せたので会ったときは日本語で話した。

 

なので、それほど日本語を話す機会が減ったわけではないが、日本にいる時よりは少なくなった。

 

2回目は大学卒業(23歳)から現在(26歳)までの3年で、ハンガリーのIT企業に就職し、暮らしている。僕はここに日本人の知り合いがほとんどおらず、職場にも日本人は僕しかいない。

 

2か月に1回日本人の美容師さんに髪を切ってもらうときに日本語を話す以外はほとんど日本語を話す機会がない。

 

では、僕の日本語のレベルはどうなったのだろうか?

 

フランス留学時は目立った変化はなかったが、ハンガリー移住した現在は若干レベルが落ちたと感じている。例えば、言いたい日本語の単語が出てこなかったり、発音やイントネーションがおかしかったり。

 

実際、2017年の夏に日本に一時帰国し、家族や友達と話した際に彼らから「イントネーションがおかしい」や「日本語のレベルが落ちたね」といわれた。

 

言いたい言葉が出てこないというのは海外で住んでいれば誰しもが経験するのではないだろうか。例えば、イタリアに長く住んでいるサッカー選手の長友選手は契約延長したときの日本語の記者会見で「合意していた」という日本語が出てこなくてイタリア語で言っていた。

しかしながら、人間は母語を話す機会が減ると本当にそのレベルが落ちたり、忘れたりするのだろうか?それはただの思い込みではないだろうか?少し考えてみたい。

 

外国語を話すようになると母国語を忘れる? 

www.babbel.com

 

「あなたの母語を忘れることは可能か?」という記事を読んだ。

 

L1 attrition, or first language attrition, is governed by two main factors: the increasing use and dominance of the L2, or learned language, and the reduction of exposure to the L1. This attrition tends to make itself evident in the constriction of the speaker’s vocabulary, while knowledge of grammar (structure) and phonology (sound) remains more stable. A speaker’s attitude and motivation toward his or her new and native languages can also have an effect on language attrition. 

 

L1(母語)または第1言語の喪失は、L2(第2言語)の使用の増加や支配、学習、そしてL1の使用の減少という2つの主な要因によって生じます。この使用の減少は、文法(構造)と音韻(音)の知識は安定したままで、話者の語彙の収縮で明らかになる傾向にある。話し手の態度や、新しい母国語に対する話者の態度やモチベーションも言語の喪失に影響を及ぼします。

 

母語はそれを使う機会が減り、反対に第2言語、つまり外国語を使う機会が多くなると喪失する。とりわけ語彙の面でその傾向があらわれるようである。

 

これは長友選手が「合意する」という日本語がでてこなかった現象そのものである。

 

しかしながら、

 

there is scant research into how exactly the frequency of language usage correlates to attrition

 

言語の使用頻度がその衰退とどのように相関しているかについての研究はほとんどない

 

 とあるように母語を話さなくなると本当にそのレベルが落ちるのかどうかについての科学的な研究はまだされていないようである。

 

幼少期に外国語を学ぶと母語を忘れる?

 

BBCの「あなたは母語を失うのか?」という記事も読んだ。

 

www.bbc.com

 

In children, the phenomenon is somewhat easier to explain since their brains are generally more flexible and adaptable. Until the age of about 12, a person’s language skills are relatively vulnerable to change. Studies on international adoptees have found that even nine-year-olds can almost completely forget their first language when they are removed from their country of birth.

 

But in adults, the first language is unlikely to disappear entirely except in extreme circumstances.

 

小児では、脳の一般的な柔軟性と適応性が高いため、この現象(母語の喪失)は説明がやや容易です。約12歳まで、人の言語スキルは比較的脆弱です。研究によると、9歳の子供が出生地から離れたとき、ほとんど母語を忘れるでしょう。

 

しかし、成人では、第1言語は極端な状況を除いて完全に消滅する可能性は低い。

 

よく子供は脳が柔軟だから幼少期に複数の言語を勉強させれば将来バイリンガルになれるといった記事もよくあるが、脳が柔軟な故に母語を忘れてしまう可能性もあることは間違いない。

 

また、以下のような研究結果もある。

 

native fluency is also strongly linked to how we manage the different languages in our brain. “The fundamental difference between a monolingual and bilingual brain is that when you become bilingual, you have to add some kind of control module that allows you to switch”

 

母国語の流暢さは、私たちが脳内のさまざまな言語をどのように管理するかに強く結びついています。「単一言語話者とバイリンガルの脳の基本的な違いは、バイリンガルになると、スイッチするためのコントロールモジュールを追加する必要があるということです」

 

つまり、外国語を習得してそれを使う際に我々は頭の中で言語を切り替えるスイッチのようなものをつくるが、それがうまくいかないと外国語も母国語も流暢に話せなくなるということだ。

 

“流暢さ”というのが母語の喪失や衰退とリンクしているのは間違いなさそうだ。

 

それから、母語は自身のアイデンティティーと深く結びついている。

 

Knowledge of your native language feels different to other sorts of knowledge. It’s a vital, foundational, a priori knowledge that’s intricately wound up with your notion of identity.

 

あなたの母国語の知識は、他の種類の知識とは違います。それはあなたのアイデンティティという概念に複雑に絡んでいる不可欠で基礎的で先験的な知識です。

 

母語は我々のアイデンティティと絡んでいるので、仮に母語を使わなくなってもそれをそう簡単に失うことはない。それは同時に、アイデンティティがまだしっかり確立されていない子供が幼児期に母語を話さなくなると母語を忘れてしまうという説を強く裏付けることになる。

 

まとめ

母語と外国語の使用頻度における母語の喪失」について科学的な研究が多くされているわけではないようなのでグラフやデータなど具体的な資料を見つけることはできなかった。(僕の探し方が悪いのかもしれないが・・・)

 

したがって、母語を話す機会が減り、外国語を話す機会が増えると母語のレベルが落ちたり、母語を話せなくなると一概にいうことはできないが、上で取り上げた2つの記事や長友選手の例、そして自分自身の経験から分析するとその可能性は十分あるようである。

 

とりわけ、子供は母語を忘れてしまう可能性が極めて高いので自分の子供をマルチリンガルに育てたいと考えているお父さんお母さんはよく考えてから実行すべきである。母語を忘れてしまっては取り返しがつかない。

 

 

※記事の翻訳ミスがあればコメント欄で教えてください

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