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Cafetalk Tutor's Column

Teiko 講師のコラム

お菓子の国

今週のテーマ: 子どものころ好きだったお菓子

2021年2月15日

こんにちは。Teikoです。
子どもの頃、好きだったお菓子は、母の焼くクッキーでした。

鳥やハートや星の形をしたステンレスの型抜きがたくさんあって、
こどもたちにも、ときどきクッキーの生地の型抜きを手伝わせてくれました。
小麦粉だらけになりながら。。。(*^-^*)

学校から帰って玄関を入ったとき、お菓子の焼ける匂いが漂ってくると
ワクワクしながらキッチンへ直行したものです。

バレエで「お菓子」と言えば、『くるみ割り人形』の「お菓子の国」!
クリスマスのパーティで主人公の少女がもらった胡桃割り人形は、彼女の夢の中で王子様になり、
お菓子の国へ彼女を連れて行って、金平糖の精と幻想的なパ・ドゥ・ドゥ(2人の踊り)を踊ります。

ディベルティスマンと呼ばれる、さまざまな踊りが披露されるこの「お菓子の国」の場面では、
スペインの踊り、アラビアの踊り、ロシアの踊り、中国の踊り、フランスの踊りが次々に登場して楽しませてくれますが、

それぞれ、
チョコレートの踊り(スペイン)」「コーヒーの踊り(アラビア)」
トレパック(ロシア)」「お茶の踊り(中国)」「葦笛の踊り(フランス)」
とも呼ばれます。

チョコレートは、ヨーロッパではスペインにはじめてカカオ豆が南米から航海士によってもたらされ、その後フランスへ伝わったので、スペイン=チョコレート
甘いお菓子には、コーヒーやお茶がつきものなので、中国=お茶アラビア=カフワ・アラビーヤ
どちらも当時は大変高価な輸入品だったとのこと。

葦笛は「ミルリトン(mirliton)」ですが、ミルリトンはノルマンディー地方の伝統的なお菓子の名前でもあるそうです。

ロシアの民族舞踊トレパックは、「大麦糖の精の踊り」とも呼ばれ、ねじり飴のお菓子のことを指すとか、人形のかたちのパン菓子のことを指すとか言われています。

そして、クライマックスに踊られる、王子と金平糖の精のパ・ドゥ・ドゥ。

ちなみに、日本で「金平糖」と呼ばれるこの王女の名前は、原作ではフランス菓子のドラジェ(Dragée)というそうす。ドラジェは、豊穣の象徴であるアーモンドを砂糖衣で包んだ、結婚や出産のお祝いに贈られる幸せなお菓子です。
英語圏では「シュガープラムフェアリー(Sugarplum Fairy)」と呼ばれます。

「お菓子の国」には、こんなふうに、ティーパーティの主役脇役が勢揃いなのです。
そして、パーティに欠かせないものがもうひとつ・・

そう、この場面では、晩年のチャイコフスキーの集大成とも言える、重厚で華やかな「花のワルツ」が、大勢のダンサーによって、
圧倒的で幻想的なムードたっぷりに踊られます。。一度、雪の降りしきる冬の宵、劇場のシートに身を埋めて、舞台を埋め尽くす群舞の踊りを見つめながら、このチャイコフスキーのワルツを聴いてみてください。ただただ、すばらしいです。。

物語台本の大筋は似たようなものであるにもかかわらず、このバレエにはいくつかのバージョンが存在します。

まず、「お菓子の国」は、他に「おとぎの国」「人形の国」などと呼ばれることも。
主役の名前も、マーシャといったり、クララといったり。
主役のマーシャ(クララ)が「お菓子の国」の王女的な存在である金平糖の精に、一人二役で臨むバージョンと、お客さまとしてマーシャのままでいるバージョン(別のダンサーが金平糖の精を踊る)。
最後は、マーシャ(クララ)が目を覚ましてすべて夢だった・・・
と締めくくられるバージョンと、そこは描かれないバージョン。
(初演のマリウス・プティパの原作台本には、夢だった!というシーンは描かれていないそうです)

どんな演目も、世界を渡り歩くうちに、登場人物の名前がその国で呼びやすい発音に変わったり、また別の名前をつけられたり、物語の筋がちょっとずつ変わってきたり、さまざまな演出方法で上演されたりと、変容していくものです。それもまた、バレエの面白いところでもあります。舞台は生ものなのですね。

しかし、うちの母のクッキーは、もう何十年も同じレシピ、同じ味、同じかたちです(*^-^*)

お家で過ごすことも多く、まだまだ寒い日もある2月のこと、みなさんも美味しいお菓子を食べながら、ぜひオンラインで、DVDで、『くるみ割り人形』を鑑賞してみてくださいませ。

本コラムは、講師個人の立場で掲載されたものです。
コラムに記載されている意見は、講師個人のものであり、カフェトークを代表する見解ではありません。

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