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【大学入試古文】古文記述問題の答案作成トレーニング法

AZUKI

 

大学入試の古文において、多くの受験生が苦手とするのが「記述問題」です。選択問題ならまだしも、「本文を踏まえて説明せよ」や「心情を説明せよ」といった設問になると、何を書けばよいのかわからなくなる——そんな経験をした人も多いでしょう。

しかし、古文の記述問題は決して感覚で解く問題ではありません。本文の読み方と、答案の作り方を明確に分けて訓練することで、確実に得点できるようになります。この記事では、古文記述問題に強くなるための「思考の順序」と「トレーニング法」を具体的に解説していきます。


1. 古文記述の基本構造を理解する

古文の記述問題を解くには、まず「答案の材料」が本文中にどのように存在しているのかを理解することが大切です。

古文の記述問題の多くは、次の3つの情報を組み合わせることで作られています。

  1. 本文の具体的描写(=どんな出来事か)

  2. 登場人物の心情・意図(=なぜそうしたか)

  3. 文脈の結論(=何を言いたい場面か)

この3点を順に整理すれば、どんな問題でも「書ける答案の骨格」を作ることができます。
たとえば「このときの女の心情を説明せよ」という設問であれば、

  • ①どんな状況で(前後の展開)

  • ②なぜそのような気持ちになったのか(原因)

  • ③どのような気持ちになったのか(感情)
    という順序で整理すれば、自然と答案の型ができます。


2. 記述問題に必要な「本文読み取り」の順序

古文の記述問題では、まず本文読解の段階で「答えの材料」を拾い出すことが欠かせません。
読みながら、次の3点を意識して印をつける習慣をつけましょう。

  • 心情語・感情表現:「うれし」「あはれなり」「なつかし」など。直接的な心情が表れている部分。

  • 行動・反応:「泣く」「立ち去る」「言ひもやらず」など。心情の裏づけとなる行動描写。

  • 対比・変化:「〜と思ひしに」「〜にてはべれば」など、気持ちや状況が変わるところ。

これらは、本文を読むときの“感情の流れ”を捉えるためのサインです。古文の登場人物は、現代人と違い、感情をストレートに書かないことが多いので、心情語よりも行動や状況変化に注目するのが効果的です。


3. 記述答案を作る「三段構成」

古文の記述は、実は現代文や小論文と同じように「構成力」が問われます。おすすめは次の三段構成です。

①【状況説明】どんな場面か(前後の流れを一文で)
②【心理説明】なぜそのように感じたのか(原因を本文から)
③【感情まとめ】どんな気持ちになったのか(要約+現代語)

たとえば『伊勢物語』第9段「東下り」の「都を思ふ心情」を問う記述なら、こう書けます。

都を離れて東国へ向かう途中で、懐かしい景色を見て都の人々を思い出したため、別れの悲しみと郷愁の思いにしみじみとした心情を抱いた。

この一文の中には、

  • 「どんな場面か」=都を離れて東国へ向かう途中で

  • 「なぜそう思ったか」=懐かしい景色を見て都の人々を思い出したため

  • 「どんな気持ちか」=別れの悲しみと郷愁の思い
    の3要素がすべて含まれています。
    この型を意識して練習すれば、どんな設問でも構造的に書けるようになります。


4. 採点基準を意識した「要約力」の鍛え方

大学入試の古文記述では、採点官が重視するのは「本文の根拠を踏まえて、要領よくまとめているか」です。
つまり、長く書くことではなく、本文の内容を30~40字程度で的確に言い換える力が問われます。

この力を鍛えるには、次のようなトレーニングをおすすめします。

  1. 古文の設問部分をコピーしてノートに貼る

  2. 回答欄の字数を守って、自分の言葉で要約して書く

  3. 模範解答と比較して、「どの本文の部分を根拠にしているか」をマーカーで確認する

この「根拠マーク学習」を繰り返すことで、本文中のどの表現が採点対象になるのかが感覚的にわかってきます。
また、同じ段落を複数回要約すると、言葉を削る感覚(=圧縮力)も身につきます。


5. 記述力を上げる「音読+再構成」練習

古文の文章は、語順が現代語と異なるため、文法を理解していてもスムーズに要約できないことがあります。
そのため、本文を声に出して読み、構文の順に並べ替える練習が効果的です。

たとえば次のような手順です。

  1. 本文を1文ずつ音読する

  2. 助詞・助動詞・係り結びを確認しながら、現代語の語順に直す

  3. それを一文にまとめて説明してみる

この訓練を1日15分続けるだけで、記述問題に必要な「文構造の理解力」が飛躍的に高まります。
単語帳や文法問題集を進めるだけでは得られない、“文章を自分の言葉で言い換える力”が身につきます。


6. 実戦的トレーニングの進め方

古文記述の練習は、やみくもに問題を解くだけでは効果が出にくいです。以下の3ステップで段階的に鍛えましょう。

Step 1:模範解答の模写+音読

まずは模範解答を見ながら、本文のどの箇所を根拠にしているかを確認します。
その後、模範解答を音読しながら「なぜこの表現になっているのか」を考えます。

Step 2:本文を読んで自力でまとめる

本文を読んだあと、設問文を見て「30~50字以内で答える練習」をします。
最初は不自然でも構いません。大事なのは、本文から抜き出す→言い換えるの順序を守ること。

Step 3:模範解答と比較して添削

最後に模範解答と比較し、違いを分析します。
「どの部分を入れ忘れたか」「どの言葉を現代語にしすぎたか」をチェックしましょう。
この自己添削こそ、記述力アップの最大のトレーニングです。


7. 記述問題に強くなる「3つの習慣」

記述に強い受験生に共通しているのは、「答案を書く前の準備」が上手いことです。以下の3つを習慣化すると、安定して高得点が取れるようになります。

  1. 設問の指示語をチェックする(例:「理由」「心情」「内容」「意図」)

  2. 根拠となる文を本文から線で囲む(どの表現を使うか明確にする)

  3. 答案の語尾をそろえる(「〜ため」「〜心情」など文体を統一)

とくに「語尾をそろえる」習慣は、採点官に「構成が整っている」と印象づける効果があります。


8. まとめ:古文記述は「型」と「根拠」で安定する

古文記述問題は、文才や感覚ではなく「型」と「根拠」で勝負が決まります。

  • 型=「状況→理由→心情・結論」の三段構成

  • 根拠=本文中の表現・行動・状況変化

この二つを意識して日々の読解に取り入れれば、記述問題は“怖い問題”ではなくなります。
むしろ、他の受験生が感覚で書いて減点される中、確実に得点を積み上げるチャンスとなるのです。

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The opinions expressed in this column are the author's own and do not reflect the view of Cafetalk.

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