これは、日本のふるいお話である、
宇治拾遺物語(うじしゅいものがたり)『児のそら寝(ちごのそらね)』の1文です。
児(ちご)とは、こどものことで、そら寝(そらね)=寝たふりをすることです。
つまり、こどもが寝たふりをしているということ。
どんなお話なの?
昔、えんりゃくじというお寺に、おさないこどもがいました。
あるとき、おぼうさんたちが、ぼたもちを作る、というのを聞いて、
そのおさないこどもは、こころのなかで、たのしみにしていました。
しかし、たのしみにしすぎて、寝ずに待っているのは、はずかしいと思いました。
だから、寝たふりをして、みんなが起こしてくれるのをまっていよう!と思いました。
ぼたもちができあがったら、みんなが、おこしてくれるだろう!
そして、ぼたもちができあがり、おぼうさんが、こどもを起こしに来ました。
「できましたよ!」
しかし、こどもはこうおもいました。
すぐに起きて、ぼたもちをたべるのは、はずかしい。
だから、こどもは、寝たふりをして、もう一度よばれるのを、待ちました。
そこで、ほかのおぼうさんが言いました。
「な起こしたてまつりそ」=(寝ているのに)起こしたらだめだよ
【”な・・・そ”=・・・してはいけない!という禁止(きんし)の意味。】
みんなが、ぼたもちをおいしそうに食べる音がきこえます。
こどもは思いました。
たいへん!このままでは、おいしいぼたもちがたべられない!
こどもは、しばらくたってから、「はい…」と返事をして
おぼうさんたちは「起きていたのか!」と大笑いしました。
とてもかわいらしいお話ですよね。
これは昔のお話ですから、今の時代を生きている日本人は、
「な起こしたてまつりそ!」とは、いいません。
しかし、むかしむかしの日本では、このような言葉で表現されていたのです。
おもしろいですね。

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