大学入試小論文では、「コミュニケーションの重要性」をテーマとした問題が頻出します。特に看護・教育・心理・社会学・福祉系の学部では、ほぼ毎年のように出題されています。しかしこのテーマは“誰でも書けそうで、実は差がつきやすい”という特徴があります。
なぜなら、
「コミュニケーションは大事だと思います」
「相手の気持ちを理解することが重要です」
といった当たり前の主張だけでは、説得力が弱く、評価者の印象に残らないからです。
この記事では、大学入試小論文でコミュニケーションを扱う際に押さえるべき視点、構成、具体例、よくある減点ポイントまで、すべて体系的に解説していきます。
■1.「なぜ大切なのか」を論理的に説明できるかが勝負
まず最初に理解しておきたいのは、
コミュニケーションを「大切だ」と述べるだけでは評価されない
ということです。
小論文で問われているのは、
-
なぜ大切なのか
-
社会のどのような課題と結びつくのか
-
具体的にどんな能力が必要なのか
-
自分の経験や事例とどうリンクするのか
といった「深い説明」です。
大学側は、“コミュニケーションの意義を自分の言葉で論じられる受験生”を求めています。
■2.コミュニケーションを論じるときの基本構造
文章の骨格としては、以下の流れが最も書きやすく、評価も安定します。
【基本構成】
①問題提起
現代社会ではコミュニケーションがどう重要視されているか。
例:価値観の多様化、SNSの普及、医療現場のチーム医療の進展など。
②定義づけ
「コミュニケーション」とは何を指すのか。
例:単なる会話ではなく、“相互理解を目指す双方向の働きかけ”。
③主張
なぜコミュニケーションが重要なのか。
例:誤解を防ぎ、円滑な協力を生む。信頼関係の基盤となる。
④具体例
社会事例・個人の経験・学問分野の事例などを使って説得力を高める。
⑤反対意見の理解
「コミュニケーションが苦手な人もいる」「対面だけが正解ではない」などに触れてバランスを取る。
⑥結論
将来の学びや社会でどう活かすかまで述べる。
この構造を守るだけで、文章の論理性と読みやすさが格段に向上します。
■3.「定義づけ」ができる受験生は評価される
小論文で差がつくポイントの一つが、
「コミュニケーションとは何か」を自分の言葉で定義できるか
です。
よくあるNG例は、
「コミュニケーションとは話し合うことです」
という単純すぎる定義。
評価される定義は、
● 双方向性がある
● 相手の理解・解釈を重視する
● 言語・非言語を含む
● 目的をもって行われる
といった特徴を踏まえたものです。
例文:
コミュニケーションとは、相手の意図を理解し、自分の考えを適切に伝えることで、相互理解を深めるための双方向的な行為である。
このように定義できると、文章全体が格段にレベルアップします。
■4.大学入試で使える「具体例」の種類
コミュニケーションをテーマにした小論文では、例の選び方が非常に重要です。
説得力を生む例には主に次の3種類があります。
◆①社会事例
医療・教育・ビジネスなど、大学側が関連性を感じやすい事例。
例:
-
チーム医療での「多職種連携」
-
学校現場の「いじめ予防における対話」
-
企業の「プロジェクト運営における会議の質」
こうした事例は、抽象的な主張に具体性を与える効果があります。
◆②学術的知識
心理学・社会学・看護学などから引用すると、文章の深みが増します。
例:
-
アサーション(適切な自己表現)
-
傾聴(相手の気持ちを受け止める姿勢)
-
ノンバーバルコミュニケーション(表情・態度)
-
合意形成プロセス
難しい用語を無理に使う必要はありませんが、関連知識を適度に盛り込むと高評価につながります。
◆③自分の経験
高校生活や部活動の経験は、説得力とオリジナリティを生む武器になります。
ただし「ただのエピソード紹介」ではNG。
“どのように学びに結びつけたか”まで書くのが必須です。
■5.「相手理解」と「自己表現」の両立を示すと強い
コミュニケーションを論じる際、
●相手の理解(受容)
●自分の意見の表現
この2つのバランスを提示すると非常に評価が高くなります。
大学側が求めているのは、
「相手の気持ちを理解しつつ、自分の考えも明確に伝えられる学生」
だからです。
例文:
相手の気持ちを受け止めるだけでは問題は解決しない。一方的に主張を押しつける態度も対立を生む。重要なのは、相手理解と自己表現を両立させ、建設的な対話を目指す姿勢である。
この視点を入れるだけで文章が一段深くなります。
■6.避けるべきNGパターン
コミュニケーションのテーマでは、次のような文章が弱いと評価されます。
●①当たり前のことだけを書く
「相手の気持ちを考えることが大事です」
→理由説明がないと説得力がゼロ。
●②個人的なエピソードだけで終わる
→結論が「だからコミュニケーションは大切」では浅い。
●③根拠のない主張
→大学側は“論理”を重視するため、根拠が弱い文章は不利。
●④精神論だけ
「思いやる心が大切」
→具体的な行動に言い換える必要がある。
小論文は“論理の文章”であることを忘れてはいけません。
■7.コミュニケーションをテーマにした模範構成例
以下は、実際の小論文試験に対応できる構成の一例です(600〜800字程度の想定)。
①問題提起
価値観の多様化やオンライン化が進む現代では、誤解による対立が起きやすい。そのためコミュニケーション能力が重要視されている。
②定義
コミュニケーションとは、相互理解を目的とした双方向の働きかけであり、言語・非言語の双方を含む。
③主張
円滑な協力関係の形成、誤解の防止、信頼構築のために不可欠である。
④具体例
・チーム医療での多職種間の連携
・学校における対話型の問題解決
・自身の部活動での役割分担調整
⑤反対意見・困難の理解
コミュニケーションが苦手な人もいるが、相手理解と自己表現の両立を意識することで改善できる。
⑥結論
大学で学ぶ専門知識と組み合わせながら、周囲と協力し課題を解決できる人材を目指す。
この骨格を自分用にアレンジすれば、どんな出題にも対応できます。
■まとめ:論理・具体性・自己理解の3点がそろえば高評価
コミュニケーションの重要性を論じる小論文は、多くの受験生が書けるテーマだからこそ、
「深さ」「具体性」「論理性」で勝負が決まる」
と言えます。
まとめると、評価される文章の条件は次の通りです。
◎良い小論文の3条件
-
コミュニケーションの「定義」が明確
-
社会事例・学問知識・経験を使って具体的に論じている
-
相手理解と自己表現という“両輪”で説明できている
これらを意識して書くことで、どの大学の小論文であっても一段上の答案を書くことができます。
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