ここ数年、いわゆる「成功哲学」なるテーマで書かれた本を好んで読んできました。但し、目標達成の方法とか、それにまつわる仕事術、時間管理術、恋愛術等々の類の様々な手法や行動の起こし方などが書かれた実践的なものよりも、そもそも「成功とは何を意味するか?」を問うことからはじまる哲学、心理学、行動学の要素が入ってくる、すこし抽象的なぶん、難解で奥深いものです。そしてもちろん、スピリッチャル的な要素も排除できないので、一歩間違うと胡散臭くも思えてしまうような内容とも言えます。なので、限られた人が書いたものだけではなく、同様のことを提唱している様々なバックグランドをもつ異なる著者の作品を読むのがいいと思っています。
現在特に気に入っている本田健さんの新刊「決めた未来しか実現しない」や彼のその他数々の著作、またここ数年で次々にシリーズで出版されているロンダ・バーンさんの「The Secret」とそれに続くものや、同じくアメリカで「エイブラハムとの対話」として「引き寄せの法則」の考え方を提唱し、実践指導も行っているエスター&ジェリー・ヒックス夫妻の本など。いずれもこれらは「人生哲学」、もっと具体的には「成功哲学」として分類され、本田健さんもおっしゃっていますが、共通の流れを汲む考え方が互いに影響しあって発展してきた歴史があります。実際読んでいて思うのは、著者によって表現の方法、言葉の用い方は異なっても、みな言わんとしている根本的なことは共通のことのように思えます。
ただ、それを頭で、つまり理屈では理解できても、日常生活や人生という自身の実体験の中で体感していくまでが難しい、というのがほとんどの読者のもつ感想ではないでしょうか。そして私が思うに、これら成功哲学で言われていることを本当に体感として理解するには、成功者の体験や理論を頭で理解したあとは、いったん考えることをやめ、日々の生活の中で自身に起こることを「感じていく」こと、そしてそこからものごとを直感で洞察・解釈し、決定していくという、生き方の変革がどうしても必要になってくるものだと思います。その際必要となるのが、心身が健康でよく機能し、外の世界に向けて開いていることになるのです。
なぜなら、これらの考え方のなかでしきりに言われている「思うとおりの人生」とか「幸せ」や「豊かさ」というものは、頭の中でごちゃごちゃ考えている理屈やそこにつねに存在している制限のある考え方からは絶対に生まれないものだからです。他人との比較だとか、世間体だとか、親や友人、会社の先輩から言われたこと、世の中で「良し」とされていることがらを軸にしていてはいつまでたってもたどり着くことができない場所に、あなたにとっての「幸せな最高の人生」は存在していて、自分自身の内側でのみ見つけられる心の平穏と、決して揺らぐことのない「本当の目指すべきところ」のビジョンがなくては実現は不可能だからです。
私が成功哲学本を読み始めるきっかけになったのが、あるとき当時住んでいた都内の明大前界隈の古本屋さんで見つけた一冊の本でした。タイトルは「原因と結果の法則」。20世紀初頭の作品で、イギリス人である著者ジェームス・アレンによって書かれたものです。世界中で注目を浴び、関連著作も多数発行されている「引き寄せの法則」の源流となる内容だということで、原題「As a man of Thinketh」として現在も多くの人に愛され、読まれています。
”心の中に蒔かれた(あるいは、そこに落下して根づくことを許された)思いという種のすべてが、それ自身と同種のものを生み出します。それは遅かれ早かれ、行いとして花開き、やがては環境という実を結ぶことになります。良い思いは良い実を結び、悪い思いは悪い実を結びます。”
”人間を目標に向かわせるパワーは、「自分はそれを達成できる」という信念から生まれます。疑いや恐れは、その信念にとっての最大の敵です。”
日本語訳版の「原因と結果の法則」からの抜粋です。目の前に起きていることや自分自身を取り囲む環境はすべて、自身の中にあり長年に渡り育ってきた「思い」が形になって表れた「結果」である。今いる環境を変えたければ、自分自身の中に巣食う様々な良くない「思い」を排除し、しっかりと心の状態を管理することで、あなたの不幸の「原因」をまず改善することが必要となる。そして、正しい思いと結びついた目標を達成するためには、疑いや恐れというネガティブな感情を克服しなくてはならない。― 思考と感情がそこに引き寄せるものを決める、とする現代の引き寄せの法則に通じる内容です。
私はこの本を初めて読んだときに、深い部分で感銘を受けながらも、あるひとつの疑問を抱きました。それは、『いま病気や事故、あるいは貧困で苦しんでいる人たち、また夢や目標を抱きながらも無念にも亡くなってしまった人たちに対してもこの法則を当てはめることは残酷で、また危険ではないか?』ということでした。そして、ジェームス・アレン自身がこの本を書いて10年後に若くして亡くなってしまっていることにも。
彼が伝えたかった「人生の創造主として、自身の内側に抱く思いが自分という人間とその生き方をつくる」という考えに私は賛同しますし、現在も世界中で多くの人たちに影響を与えているのは事実です。また現在では、約100年前に書かれた彼の内容をもとに、このひとつの仮定に対してたくさんの研究がなされ、同じ考え方を継ぎながらもより具体的で明快な内容になってたくさんの本が出版されています。
ジェームス・アレンが言わなかったこと。それは私たちにはそれぞれ持って生まれた宿命があり、また生き物としては抗うことのできない大きな力のもとで生きているということ。その意味では私たちは全くもって平等とはほど遠い世界の現実を受け入れなくてはいけないし、頑張っても努力してもどうにもならないこともあるということを理解しなくてはいけない。つまり、今ここにあるものを受け入れること、そこがすべてのスタートであり、そうすることではじめて未来に向かう可能性がその瞬間から開けてくるということです。
また、彼の言葉にもあるように、心に抱くビジョンや夢、理想がそのまま未来を作っていくものではあるけれども、大切なことは、そのビジョンや夢、理想はその人のもって生まれた資質や使命と調和している必要があるということ。そうなって初めていろいろな出来事や偶然に導かれ、後押しされるようにして次々に叶っていく、ということが起こり始めます。また、その人にとって方向性を示すビジョンや夢は考えて見つけられるものではなく、あるときふっと、とってもリラックスしている瞬間にひらめいて来たり、または静かな感覚として湧き上がってきたりします。
あなたにとっての幸せ、成功とは何を意味しますか?
私にとってそれは、心と身体、与えられた資質を使ってより良く生きることで、自分が本当に望むことをしながら大切な人たちと幸せでいることです。つまり、できるだけいつもベストな自分で最高の人生を送ること。それに気づいたとき、それまでとっても時間がかかってしまった気がしましたが、はっきりと、今自分がいる場所で望まないこと(=自分らしくないこと)を変えていきたい、と思いました。そして、その望まないことを自分の人生に受け入れたという事実に責任をもつこと、そのあり方を変えていくためには自分自身の内側からの変革が必要だと理解しました。
それから私は変わったと思います。でもまだすべての望みが実現できてはいませんし、その意味ではこれからどんな風に人生が展開されていくのか、楽しみです。ただ言えるのは、そのように自分と生き方を変えていく決意をした日からずいぶんといろいろなこと(出会う人、身に着けるもの、発する言葉などなど・・・)が変わり、日々の小さな「こうだったらいいな」が思ったとおりになることが多くなりました。そこにはもちろん、必要なこと、出来ることはできるだけ確実に行っていくという行動が伴いますが、「がむしゃらに頑張る」ということはまったく必要なくなりました。それよりも、突き動かされるようにやるべきこと、やりたいことが自然に心に湧きあがってくるようになり、それを実践した結果が実を結んでいくという感じです。何より、生きることが軽やかで楽しくなったと感じています✰
本は私たちの考え方に影響を与える最も手軽で身近なものだと思います。活字離れが進んでいると言われる昨今ですが、言葉の力は世界を動かすことが可能なほど偉大です。良い言葉に触れることも私たちのエネルギーを高め、潜在意識に影響を与えるひとつの方法なので、良い言葉(=ポジティブで元気の出る言葉)を発する人と身近に接していくことも大切だと日々実感しています。これからも影響を受けた本のお話し、少しずつしていけたら、と思っています。
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