僕の通っていた中学校では、毎年秋になると文化祭が開かれていた。
展示用の絵画は提出が義務だったんだけど、
絵の仕上がりが遅れていた僕は締切に間に合わず、
半分しか描けていないスカスカのキャンバスを展示せずに済んだ。
代わりに、美術の評価は5段階中の3に下がったけれど、
正直なところ、目立たずにやり過ごせたことが少し嬉しかった。
目立つのはとにかく苦手だったから、
吹奏楽部や科学部のように必死で準備するような大役に巻き込まれるのも、
できれば避けたかった。
そんな僕が「どうやってサボろうか」と考えながら
ホームルームの時間をぼんやり過ごしていたとき、
前の席のオックンが突然振り向いて、
「演劇の大道具係やろうぜ!」と小声で提案してきた。
驚きつつも断ろうとしたけど、
オックンはすでに挙手していて、
あっという間に僕もつられて手を挙げることに。
これで大道具係が確定した。
あまりやる気はなかったものの、他にやりたい役割もなかったので、
その場は流れに身を任せることにした。
一緒に担当してくれる人数を増やしたほうが楽になると思って、
ショウゴやアンチャンにも声をかけ、
僕たちのいつものグループで大道具係をすることに。
正直、最初のうちは作業に気が進まなかった。
なんでみんながこんなに夢中になれるのか全然理解できなかった。
でも、いざ大きな舞台セットづくりが始まると、思った以上に本格的だった。
特に「大きな岩」を作るときは、
木材や針金で骨組みを組んで、それを釘で固定し、
さらに模造紙で覆って色を塗るという、いかにも手間のかかる工程が続いた。
放課後だけでは作業が終わらず、土曜の午前も集まってみんなで力を合わせた。
気がつけば、作業が進むにつれて僕も少しずつ熱中するようになっていた。
みんなと一緒に「やった!できた!」と歓声を上げたときは、
達成感が体中に広がった。
最近、何かを一生懸命に仕上げるなんてしていなかったから、
岩が完成した瞬間は心から嬉しかった。
岩が完成した日の午後、
技術担当の先生が「がんばったご褒美」として、
僕たちをラーメン屋に連れて行ってくれた。
部活帰りとはまた違う、労働の後の味噌ラーメンは格別で、
先生の財布に遠慮してみんなで控えめな注文をしながらも、達成感をかみしめていた。
文化祭当日も、特に大きな問題もなく、無事に終えることができた。
文化祭で本気になって何かを作り上げたのは、僕にとって貴重な体験だった。
最初は「楽をすること」だけを考えていたけれど、
何かに本気で向き合うって悪くない。
舞台裏から大きな岩を眺めて、
なんだかんだでこれも青春なんだなと、少しだけそう思った。
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